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 今回はエアガン(正確にはエアソフトガン)の弾道学の話です。これについては今までアームズマガジンやその別冊、MOOKなどで何度も書いてきました。今回書くのはヤフオクに出品した製品でそのわかりやすい実例があったからです。

 弾道学は大きく分けて「腔内弾道」と「腔外弾道」から成り立っています。そしてこの内と外とでは逆の現象も起きます。弾丸の速度やパワーに関しては腔内では軽くて断面積の大きな弾が有利です。でも弾が銃口を飛び出した瞬間にこれは逆転します。

 火薬(発射薬)の燃焼ガスや圧縮空気、CO2ガスなどで銃腔内を加速される場合は圧力を受ける断面積のより大きい方がより大きな力を受けますし、軽ければそれだけ加速度も増します。エネルギーは速度の二乗に比例しますから、重くて遅い弾より軽くて速い弾の方がエネルギーも大きくなります。しかし銃口を飛び出した大気の中では大きければそれだけ空気抵抗が増しますし、軽いとエネルギーを早く失います。弾速の逓減率は弾丸重量に逆比例するからです。ですから腔外では小さくて重い弾の方が有利となります。

 以上は実銃での話し。エアガンでは事情が違ってきます。エアガンは実銃に比べたら三桁も四桁も小さなエネルギーを目いっぱい使って樹脂性の軽いBB弾を飛ばしています。圧倒的なパワーで重い弾を撃ち出す実銃とは別の世界です。でもそれは発射に関してのみで、腔外弾道では実銃と全く同じです。同じ物理原則に従います。

 では具体的にエアガンは実銃とどう違うのか。それを一言で言うと「パワー効率」ということです。実銃の場合、腔内では軽くて大きな弾が有利だった。でもエアガンではある程度重い方が有利なんです。具体例を示しましょう。



↑これはヤフオクに出品したクラウンモデルのTYPE96ジュニアを18歳以上用にカスタムした物の出品時の設定の初速です。0.2g弾の平均パワーは0.86J。それに対して0.25g弾では0.93J出ています。重い0.25g弾の方が約8%パワーが増している。つまりエアガンでは重い弾の方がよりパワーが出る。これがパワー効率です。

 もっとも全てのエアガンでそうなるとはいきません。条件があります。それはシリンダー容積がバレル長に対して十分にあることと、バレル長も十分にあることです。シリンダー容積の少ない銃では実銃と同じように重い弾は不利になりますし、バレルが短いと加速の時間も短くなるので十分にエネルギーを受け取ることができません。シリンダー容積が十分にあるときは、少し重めの0.25gくらいの弾で最もパワー効率が上がります。0.3g弾になると逆に低くなる。理屈では重い方がいい訳ですが、現実にはそんな大容量のシリンダーやバレル長を持った製品はありませんからね。

 なぜこうなるのか説明しましょう。BB弾を発射するエネルギーはスプリングに蓄えられたポテンシャルエネルギーです。それが圧縮空気を媒介としてBB弾に伝わり、BB弾の運動エネルギーに換わる。このエネルギーの受け渡しを「物理的インピーダンス」とも呼びます。弾が重ければそれだけ加速に時間が掛かります。銃口から飛び出すまでが長くなるのですが、圧縮空気に押されている時間も長くなります。それでこの物理的インピーダンスの効率が上がるんです。つまりエネルギーを受け取っている時間が延びるから、それだけ多くのエネルギーを受け取れるということです。

 しかしこれは上に書いたようにシリンダー容積が十分な場合だけです。容積が不足すれば、加速が遅い分だけその間にBB弾とバレルの隙間からエアが逃げていってしまいますから、腔圧が上がらず初速も上がりません。多少エアロスをしても問題ないくらいの十分なシリンダー容積が必要だと言う訳です。
 
 仕組みは違いますが「加速シリンダー」が有利なのも同じ理由です。加速シリンダーとはピストンの前進速度を加速するという意味です。発射されるBB弾を直接加速するという意味ではありません(結果的にはそうなりますが)。ピストン速度が上がると腔圧のピークが早まります。最高圧で最もBB弾は加速される。ピークが早くなればその最大の力で加速されている時間も長くなる。それで物理的インピーダンスの効率がよくなるんです。この場合もバレル長に対するシリンダー容積が十分にあることが条件です。

 あとHOPでも同じ現象は起きます。HOPの抵抗でBB弾は一瞬止められる。その僅かの時間にシリンダー内圧は上昇しますから腔圧のピークが早まり、加速シリンダーと同じ現象が起きます。ただこれもシリンダー容積が十分であることが条件ですし、HOPを強くしすぎればエアロスも大きくなって逆に初速は下がります。一番効果的なのは弱めのHOPですが東京マルイのMP5Kのように極端にバレルの短い物では強めのHOPのほうが効果が出ます。バレル長に対するシリンダー容積は十分すぎるほどありますからね。半分くらいエアロスしても問題ないです。

 さて上に掲げた写真のデータですが、これはちょっと危ないですね。0.25g弾での最高初速は86.73m/s(0.96J)も出ています。銃刀法の規定によれば0.25g弾で許されるのは88.97m/sまでです。ギリギリ違法ではありませんがその差は僅か2.34m/sしかない。弾速器の計測誤差もありますし、上に書いたようにHOPの状態でも初速は変わってくる。それで落札者さんにお送りした製品は少しパワーダウンさせました。
↓これがその結果です。



 銃刀法で規制外となるのは6㎜BB弾の場合0.9896J以下です。でもギリギリでは危ない。ですから1割程度の安全率は必要です。つまり最高でも0.9J程度に抑えておかなければなりません。コッキング式エアガンは初速が安定しているとはいえ多少のバラツキはありますからね。それで少しパワーダウンさせました。パワー効率のよい0.25g弾でも0.89Jです。もっともそれで0.2g弾の場合は平均で0.82Jになっちゃいましたけどね。まあ、より安全なほうが良いでしょう。

 ここでちょっと蛇足です。

 ヤフオクには同じクラウンモデルのU10ジュニアの大人版も出品しました。性能的にはTYPE96とほぼ同じに設定してあります。ですがU10では重い弾を使ってもパワー効率は上がりません。


0.2g弾でも0.25g弾でもパワーはほぼ同じです。むしろ若干ですが0.25g弾の方が下がっている。理由はわかっています。U10のシリンダーヘッドには僅かですがエア漏れがあるんです。TYPE96も同じように漏れていたんですが、そっちのほうはシリンダーヘッドを分解して気密を完全にしました。それでパワー効率が上がった。しかしU10では漏れがあるために0.25g弾で物理的インピーダンスが上がっても、その間にエアが漏れてしまうから腔圧が上がらない。それで±ゼロで0.2g弾でも0.25弾でも変わらなかったということです。

 で、このエア漏れなんですが、実はクラウンモデルは故意にやってるんじゃないかって思えたんです。重い弾を使えばパワーが上がることをクラウンモデルも知っている。だから重い弾で10歳以上用を超えるパワーにならないように、わざとエア漏れさせてるんじゃないかってね。取り説には「専用0.12g弾以外は使うな」ってな注意書きがあった気もします。これは推測で実験したわけじゃないですけど、今度機会があったら試してみたいと思っています。
 
【東京マルイVSR-10お子様カスタム】

 さて、クラウンモデルの10歳以上用のボルトアクションを18歳以上用の大人バージョン(「大人帝国の逆襲」バージョンと呼んでます)にカスタムしたので、今度はマルイの18歳以上用のボルトアクションを10歳以上用にカスタム(名付けて「子ども帝国の復讐」カスタムです)してヤフオクに出しました。

 これには前のところで書いた「10歳以上用でも重い弾を使えばパワーが上がるのかどうか」を調べる目的がありました。結果は下の写真のとおり。





 カスタムの10歳以上用ではほとんど差は出てませんね。0.12g弾で0.115J。もっともパワーの出た0.2g弾でも0.118Jです。これでは有意差があるとは思えませんね。計測誤差の範囲内でしょう。10歳以上用で許されるパワーは0.135J以下です。この規制値は銃刀法ではなく各都道府県条例の「有害玩具指定」によるものです。以前は0.18Jくらいまでは良かったんですが今は厳しいです。
 
 それで重い弾でパワーが上がることを予想して、少し低めに設定したんですが、重い弾でもパワーは変わっていませんね。逆に0.25g弾では下がっています。これはどういうことでしょうか。あまりにエネルギーレベルが低いので、物理的インピーダンスに関係なく、軽いBB弾でも全てのエネルギーを使い切ってるって事でしょうか。どうもそのようですし、それも0.2g弾が限界で0.25g弾になるとパワーダウンする。

 ではノーマルのままではどうなんでしょうか。それも上の写真に示したようにあまり差はありません。もっとも効率の良いはずの0.25g弾でも2%程度しかパワーアップしていません。この2%差の数値は有意だとは思いますが、前のTYPE96に比べたらずっと小さな差です。これもどうしてでしょうか。

 考えられることはこの製品のピストン速度が非常に高く、腔圧のピークが早いということです。加速シリンダーと同じように、早い段階で最大圧に達し、そのもっとも強い力でBB弾を加速している時間が長くなった。計測はしていませんがTYPE96よりはずっとピストン速度は早いはずです。それはパワーの数値を見てもわかります。写真のグラフは平均値の物ですが、最大値では0.2g弾で97.65m/s(0.954J)、0.25g弾で 87.58m/s(0.959J)も出ていました。

 その要因はピストンヘッドのOリングのサイズがジャストで、もっとも抵抗が少ないことと、シリンダー内径が小さいことです。電動ガンのシリンダーに比べて約17%圧縮断面積が減っています。それだけ圧縮効率は高まり、同じスプリングを使ったとしても約17%最大圧が高まります。その高い圧力で長時間加速できたので、物理的インピーダンスが低いはずの0.2g弾でも十分なエネルギーを受け取ることができて、それで0.25g弾との差が小さくなったと推測できます。

 このシリンダーの圧縮断面を小さくした方が有利だということを、私は30年以上前から言い続けてきました。雑誌等で何度も書いてきましたし、カスタムでも圧縮面積を小さくする「減径シリンダー」を作ってきました。エアを圧縮するエアコッキングではシリンダー内径が小さい方が有利です。逆にガスの圧力で作動するガスブローバックではシリンダー内径が大きい方がより強い力を受けてブローバックのリコイルショックが強くなります。
 
 この事は東京マルイにも何度も言ってきました。ガスに関しては話を聞いてくれてデザートイーグルのハードキックを作りましたし、SIG以降はそれまでの12.5㎜から13.6㎜にシリンダー内径が拡大されています。でもエアコッキングガン(電動も含む)では実行してくれなかったんですよね。今回のVSR-10では別に私のアドバイスを聞いたわけではなく、デザイン上の理由から細いシリンダーになったんだと思いますが、結果的にそれが良かったですね。

 でもこのVSR-10は少しハイパワーすぎると思いますよ。パワーアップの改造など全くしていないノーマルのままでも0.95J以上出ています。マルイは昔からパワーにこだわるんですよ。「こだわり」ってのは今でこそ「こだわりの一品」なんて良い意味で使われますが、本来は「そんな××にこだわるな」って言われるように悪いことなんですよ。

 マルイがパワーにこだわるのは、ライバル他社の製品より常にハイパワーな製品を作ってトップメーカーになったからです。昔LSが0.4Jの製品を出していたときに、後発だったマルイは0.5Jの製品でLSに勝った。だからマルイはパワーを捨てられない。常によりハイパワーな物を作ります。私が電動のM16を開発したときも、最初は0.2g弾で70m/s程度でした。パワーは0.5J以下でした。私としてはそれで十分だと思ったんですが、でも「それじゃあ駄目だ。売れない」といわれて0.6J程度にパワーアップさせました。当時のASGK(日本遊戯銃協同組合)の自主規約では0.4J以下(一割程度のアップは誤差として黙認)となってたんですけどね。今の電動ガンは次世代でも0.9Jくらい出てますね。SPAS12のときも私の最初の設定では1発当り0.4J程度だったのにマルイは0.65Jくらいにパワーアップさせた。そのせいでコッキングがめっちゃ重くなって、ラピッドファイアなんかできなくなっちゃいましたよ。

 マルイがパワーにこだわるのは、ハイパワーなエアガンを求めるファンが多いということでもあるんですが、トップとして業界をリードする責任のある東京マルイにはもう少し安全性に配慮して欲しいとも思います。銃刀法には触れないにしろギリギリでは危ないです。それこそトップメーカーとしての矜持を見せてもらいたいものです。法律ギリギリのいわば「ゲリラ的」な商売が許されるのは業界の弱者だけだと思うんですよね。マルイは圧倒的な強者なんだから。
「おいおい。マルイさんよ、そんなにパワー出すなよ。お宅はトップなんだからもっと余裕を持って横綱相撲をとってくれよ」
ってのが私の気持ちです。
 
 
 
 

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