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ISBN:9784063106176
僕は基本的に,漫画をめったに買わない.
別に漫画が嫌いなわけではない.ただ,僕にとって読まねばならない本は日本語英語ともに膨大にあり,僕自身の限られた読書時間の都合で,なかなか手に取る機会が回ってこないだけだ.

しかし,「年刊日本SF傑作選 量子回廊」(創元SF文庫)に所収された市川春子の「日下兄妹」には,本当に衝撃を受けた.SF傑作選の選者が「2009年に発表されたすべてのSF短編の中でも,個人的にもっとも偏愛する作品」というのもうなずける.
この「日下兄妹」が収録された市川春子の短編集である本書は,僕にとって,久しぶりに「注文してでも絶対に購入せざるを得ない漫画単行本」だったのだ.

目次:
星の恋人
ヴァイオライト
日下兄妹
虫と歌
ひみつ

描線は極限までシンプルで,キャラも可愛いけどいわゆる萌えキャラではない.
ただ,描線のその無機質性が,かえってこの世界観にクリスタルガラスのような儚い美しさを与えている.過剰な情感を削ぎ落とした末に,胸に迫る切なさ,愛おしさ.
作り込まれている世界はSFで,家族愛が描かれていてもそこに尋常な意味での家族関係は無い.それでも,何かがそこにあって,読後の余韻に僕は深くとらわれてしまうのだ.

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ISBN:9784103030232
かつて梅原さんは,著書「神々の流竄」の中で,古事記や日本書紀にある出雲神話の数々は,古代大和に存在した神話を出雲に仮託したフィクションであることを主張した.
本書は,著者自身のそうした見解を全面否定し,出雲に滅亡した古代王朝が存在していたことをつまびらかにする.大和による出雲の征服の歴史を塗り替え,事実を改竄した存在は誰か.

目次:
はじめに 出雲へ
第1章 出雲王朝はスサノオから始まった
第2章 オオクニヌシー王朝を繁栄させた大王
第3章 考古学が語る出雲王朝
第4章 記紀の謎
おわりに 出雲大社の建造

かつての「神々の流竄」の執筆時には,まだ荒神谷や加茂岩倉といった重要な遺跡は発見されていなかった.これらの重要な遺跡の発見により,弥生時代の出雲地方には畿内に匹敵する強大な勢力をもつ文化圏が存在していたことはもはや定説になっている.
そういった背景ももちろんあるが,研究者にとって,かつての自説を自己批判し全面否定することは,勇気のいる決断だったろう.僕は梅原さんの,こうした研究者としての姿勢を全面的に尊敬する.
梅原さんは風土記や古事記,日本書紀にあらわれる伝説の舞台を自らたどり,古事記・日本書紀の謎に迫っていく.梅原さんが訪問した多くの神社や遺跡は,僕もすでに訪問している.ただ,本書を読んで,改めてこの本を片手に巡ってみたいと思う.

この本は「芸術新潮」に書かれた梅原さんの特集がもととなっている.僕はその芸術新潮の号を読んでいて,梅原さんが新著を書かれるのを心待ちにしていた.出版されたのは去年の4月,僕が読んだのは8月だった.

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ISBN:9784774144269
「知りたい!サイエンス」シリーズの一冊.
微化石研究の魅力と最新トピックスを,ジュニア向けに分かりやすく紹介している.僕が乗船した2009年の赤道太平洋年代トランセクト計画の成果まで紹介されている!
深海掘削から日本海形成,人類紀の高分解能解析など,日本の微古生物学者が取り組んでいる最近の主なトピックスはほぼカバーしている.微古生物学や海洋地質学の副読本としてピッタリだ.この本を読むことを,うちの研究室の必修にしたいと思う.

目次
第1章 深海への挑戦
第2章 深海に降り積もったもの
第3章 地球史は深海底に記録される
第4章 微化石が語る古日本海
第5章 微化石が語る日本列島の海
第6章 過去から未来へ,海の森の変遷

筆者は珪藻化石の専門家のため,扱われている話題は珪藻化石の成果が多い.
でも,口絵の「有孔虫とそれを拾う面相筆の電子顕微鏡写真」はかなり萌えて身悶えた.たぶんこの写真は僕も授業で使うと思う.

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ISBN:9784621082522
去年の5月に出版され,すぐに購入して読んでいる.
もう1年近く前か...ううむ.

日本技術者教育認定機構(JABEE)が認定する大学の技術者教育では,技術者倫理が重要な科目となっている.うちの学科では,担当教員が地質学分野に特化した独自教材を作って教えているけど,一般的な教科書も多数出回っている.
本書が類書と異なる点は,著者が倫理学の専門家である事だと思う.技術者の視点で書かれたものではなく,倫理学の立場から技術者倫理の諸問題に切り込んでいるだけに,個々の議論はとても深い.各章で扱っている事例はどれも具体的であり(チャレンジャー号爆発事件,カネミ油症事件,青色発光ダイオードetc...),読んでいて引き込まれる.

目次:
はじめに
第1章 組織の中の技術者
第2章 技術者のアイデンティティ
第3章 説明責任
第4章 製造物責任
第5章 リスクとヒューマンエラー
第6章 費用−便益分析
第7章 内部告発
第8章 知的財産権
第9章 技術者資格の国際的相互承認
第10章 グローバル化と価値観の多様性
第11章 予防原則
第12章 技術者と環境
おわりに
索引

この本の性格は,冒頭と巻末の著者からのメッセージに現れている.
技術者倫理は技術者にしか語れないという主張もなくはないが,「技術者倫理」も倫理と名がつく以上,単なる技術経験者の養生訓で終わらせてはならない.JABEEが標榜する技術者倫理教育も,本来は,人格形成のための倫理教育を目指しているはずである.実際,技術力の浸透した現代社会が必要としているのは,自分で倫理的に正しい判断のできる,真に人格を備えた技術者であろう.科学技術の進歩のおかげで,時代の様相は様変わりしたが,人間の本性は古よりほとんど変わらない.温故知新という言葉にあるように,常に困難を伴う現実の職業生活の中で,歴史を通じて熟成してきた倫理的知恵をいかすことができれば,それに越したことはない.
(おわりに)

技術者が社会に居場所を与えられる時,常に公衆の目線に立ち,公衆の幸福のために仕事をしているのだという使命感のもとに,倦まず弛まず研究に精進することこそ,技術者に一番求められていることではないだろうか.技術者倫理が伝えるべき最も重要なメッセージは,何よりも先ず,こうした社会に向き合う謙虚な姿勢である.
(はじめに)

東日本大震災や原発事故を経て,今の僕らは,まさに技術者と公衆とが非常に不幸な断絶関係にあることを認めざるを得ない.地震学,歴史地震,津波防災,原子力工学,保健衛生,さまざまな分野の正確な知識が,なによりも一般の人々にとっても命を守るために切実に必要とされている状況で,風評と呼ばざるを得ないような非科学的な根拠に基づく憶測がメディアやネットで流れ,それを打ち消して回る「善意の」専門家も疲弊し,またその声が届かなくなってきている.
専門家に対する不信が,今ほど強く渦巻いている時代は無かったかも知れない.
全国民が科学技術に対する高度なリテラシーを持っていさえすれば問題の解決策は自ずと一本化できる,というのは幻想であり,思い上がりですらある.僕らはもう一度,社会の中のひとりとしての基本に立ち返って,人々の不安に共感し寄り添うことから始めなければならないのかも知れない.

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ISBN:9784416211021
なんと発売日前に先行購入し,高知の古生物学会で著者からサインまでもらっている.
・・・それからもう3ヶ月以上経過している.まったくどんだけ読書記録を(以下略)

サブタイトルで「示準化石ビジュアルガイドブック」をうたっている.
内外の優れた化石標本のカラー図版を,古生代から新生代への「時間軸」に沿って配列した図鑑である.動物とか植物とか,そういった分類群ごとの区分ではなく,時間軸にそって並べているのが特色である.しかも各化石について充分な分量(1ページ)をさいて解説している.古生物学の入門書として適していると思う.

著者にはとっくにお伝えしたけれど...
欲を言えば,化石の産地が「茨城県」とか「中国」とかしか紹介されていないのは何とかして欲しい.
たぶん,化石産地を荒らされたくないとの配慮があるのだと思うけど,大学の授業の教材として使うには,せめて地層名ぐらいは分からないと困ってしまう.
まぁ,実物は地質標本館にあり,図鑑中にその標本番号がすべてきちんと示されているので,データベースで検索すれば詳細な産地も分かるんだけど...

地質標本登録データベース
http://riodb02.ibase.aist.go.jp/dform/DGEMS/

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