全体表示

[ リスト ]

イメージ 1

紹介文

結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校"D機関"。「スパイとは"見えない存在"であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」。これが、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。軍隊組織の信条を真っ向から否定する"D機関"の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」―結城中佐は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を挙げ、陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。東京、横浜、上海、ロンドンで繰り広げられる最高にスタイリッシュなスパイ・ミステリー。

感想

著者初読本。スパイものの小説といえば現代を舞台とした公安警察が外国のスパイに対して活躍するといったものが多いのだが今作は第二次世界大戦前昭和初期の時代設定で日本人のスパイが活躍するというあまり今まで見聞きしたことがない作品です。

昭和12年秋、陸軍に籍を置く結城中佐の発案により「情報勤務要員養成所設立準備室」なるものが新たに開設された。しかしそのそれは名ばかりで実際は「スパイ要請学校」であることが判明、陸軍内における当時の風潮や既得権益の問題、教育される人間が軍人ではなく一般の大学を出た学生たちの間から選抜されるなどの理由から陸軍内部から猛烈な反発が起きた。結果として陸軍上層部からのある条件を下に「スパイ養成学校」、書類上では『D機関』と記される組織が発足した。
発案者の結城中佐は陸軍内で「魔王」と呼ばれかつては有能なスパイであり、長年にわたって敵国に潜伏、貴重な内部情報を日本にもたらしていたが味方の裏切りに会い捕らえられ拷問にかけられたが何とか脱出し現在に至る。噂ではその時に受けた拷問により右手の五本の指が奇妙な形に捻じ曲がってしまったため白い手袋を装着し、更には同じく拷問によって左足が不自由になり杖なしでは歩くことができなくなってしまった。
スパイに関するノウハウに長けた結城中佐により選抜され入学後は多岐にわたる訓練を施された12人第一期生が国内外を舞台に活躍するリアルなスパイ小説。

まず初めに驚かされたのが結城中佐のスパイ活動における根本理念「殺人、及び自決は、スパイにとって最悪の選択肢だ」というもの、自分が今までみたスパイが登場する映画などではスパイは捕らえられ自分の素性や自国の情報を洩らす前に自決するというのが当たり前だと思っていましたがこの言葉を読んだ時点でこの作品で活躍するスパイというものが自分の今まで考えていたものとは違うまた本当のスパイ活動とはこういうものなのかと考えを改めさせられました。

5つの短編で構成されていて表題作であり一話目の「ジョーカー・ゲーム」だけがその後に続く他の作品とは違った形で、D機関の設立から訓練内容、第一期生となる学生たちの考え方、発案者である結城中佐の人物像などが陸軍参謀本部からの出向者であり彼らを監視する為に送込まれた佐久間の視点によって書かれています。
第二話以降は舞台を国内外に移しD機関一期生たちが活躍する姿が描かれています。ただスパイとしての活動は派手さが全く感じられず敵国での生活に溶け込むことや標的<マト>の身辺を探るために近くに存在する人物のコピーとなり(実際は細部まで真似るので大変そうですが)入れ替わったりとわりとコツコツと活動に励むといった地味な部分が多い。
通常スパイ活動とは徐々に標的に近づき何年、何十年もかけて有益情報を搾取、自国へ報告するという活動内容のため地味にならざるおえない点はわかるがそういった部分を逆手に取りその活動内容を短編の中で凝縮して表現してるので地味な点はそれほど苦痛には感じません。

中でも一番面白かったのが三話目の「ロビンソン」、ロンドンに拠点を置き町の写真屋としての表の顔を持ちながらスパイ活動をしていた伊沢が英国の諜報部隊に捕らえられそこからの脱出までを描いた作品。
スパイ対スパイの駆け引きは面白く、更にそこに加わる結城中佐の思わく、伊沢が英国に渡る際に結城中佐から餞別として渡された一冊の本の意味。
あらゆる要素が詰まった短編で結城中佐の意図が汲まれた餞別に関しては捻りすぎといった感じでちょっとわかりにくかったりもしますが、自白剤を打たれたとしてもその無意識の言葉にまでが計算されているという点や最終的に伊沢が行き着いた「自分が捕らえられた本当の意味」には思わず唸ってしまいました。

殆どの作品に直接・間接的に登場する今作の中心人物:結城中佐、影のような存在・魔王・化け物といろんな言葉で称される人物であり、都度発せられる言葉は的を得ているものの冷たく感じるが最後の短編では優しい一面がみえたりもする。スパイ小説の中心人物だけあってその性格・考え方などは捉えどころがないといった印象だがスパイ活動に賭ける情熱は伝わってきます。
今作は短編集という形でしたがぜひ結城中佐及びD機関卒業生たちによる長編を書いてほしいと願う1冊でした。

※ 何かと謎に包まれている結城中佐、年齢やかって捕らえられたとされる任務の内容、そして陸軍内部で暗躍といったところは全部わかってしまうと怪しい面白さがなくなってしまうので次回作ではほんの少しだけでいいので明らかにしてほしいところです。

オススメ度:★★★★☆

「本棚」書庫の記事一覧

閉じる コメント(10)

顔アイコン

待っていました!
はやり、面白そうですね。
絶対、今日探しだして買ってきます。

2008/9/24(水) 午後 0:02 [ フェイフォン ]

>フェイフォンさん
自分的にはスパイものの小説として初の内容だったので面白かったです^^
スパイ=公安や派手なアクションものを想像していたので地味ながらもリアリティを感じる作品です、ぜひぜひ読んでみてください^^

2008/9/26(金) 午後 9:43 hayaton

顔アイコン

読みました!面白かったです〜〜。私も、D機関の『人を殺さない』『自決をしない』という意向が好きでした。今までのスパイのイメージを覆してくれるスタイリッシュなスパイ小説でした。結城のキャラがいい味出してましたね。続編希望!TBさせて頂きます。

2008/11/3(月) 午後 11:53 べる

>べるさん
自分もこの作品を読む前は「スパイは捕まったらお終い」というイメージがあったのですが、この作品ではそこからがスパイの腕の見せ所といった感じで今までの考えを改めさせてくれました^^
結城の怪しげで謎の多い部分がなんとも言えずいい味を出してくれていましたね^^TBありがとうございます。

2008/11/4(火) 午後 11:31 hayaton

柳さんは他の作品をパラ見してカタカナだらけだったので遠くへ押しやっていたのですが(おい^^;)、これは読んで良かったですね〜^^かっこよかった!内容も表紙も抜群に。
私も「ロビンソン」が一番好きでした。これを読んで私はスパイには向いとらんと自覚しましたし(笑)TBさせてくださいね。

2008/12/2(火) 午後 11:17 紅子

>紅子さん
自分も柳さんの作品は初だったのですがこれは大当たりですね^^
自分はどの作品を読んでも「ぜってぇースパイにはなれないな」と感じてしまいました^^;TBありがとうございます。

2008/12/3(水) 午後 11:42 hayaton

面白かったです〜みんな、格好よかったですし!!!
私も柳さんは初めて読んだのですが、かなりよい印象をもちました。
スパイゲームもよかったですけど、ゴーストも好きでしたね。
トラバさせてください。

2009/3/28(土) 午後 9:57 mrt

>mrtさん
かっこいいですよね!自分としてはこの作品で「スパイ」のイメージががらっと変わりました^^
続編、特に長編に期待したいです^^

2009/4/4(土) 午前 9:54 hayaton

はやとんさん、こんにちは。
まずまず面白かったです。
D機関の人たちはすごいですね。怪人二十面相みたいだななんて思いました。

2009/7/20(月) 午後 0:41 [ たかsan ]

アバター

はじめての柳さん作品でしたが、はまってしまいそうですww
今までのスパイの常識を覆す面白さでしたね!
TBさせてくださいね♪

2009/12/27(日) 午後 11:21 チュウ

開く トラックバック(4)


.
hayaton
hayaton
男性 / B型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

過去の記事一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
お肉、魚介、お米、おせちまで
おすすめ特産品がランキングで選べる
ふるさと納税サイト『さとふる』
いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事