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紹介文

春の近づくある日、鳥井真一のもとを二人の老人が訪ねてきた。僕らの年上の友人でもある木村栄三郎さんと、その幼馴染みの高田安次朗さんだ。高田さんが働く動物園で、野良猫の虐待事件が頻発しているという。動物園で鳥井が掴んだ真実は、自身がひきこもりとなった出来事とどうつながるのか―。鳥井は外の世界に飛び立てるのか。感動のシリーズ完結編、文庫版特別付録付き。

感想

「ひきこもり探偵シリーズ」3部作の完結編にして初の長編です。過去の2作に関しては短編という位置づけのようなのだが時系列がきちんと順番どおりになっていて連作といった形が強く登場人物の悩みが作品を越えて解決されたりもするのであまり短編という印象はなかったので「初」といわれてもそれほど意識はしないで読みました。

外資系保険会社に勤める坂木司と在宅でプログラマーの仕事をする鳥井真一、鳥井は坂木が一緒のときに必要最低限の外出しかしないひきこもりであるが数少ない出会いの中でその人物の抱える悩みや問題点を鋭い観察眼と洞察力で解決する推理力を持ち、坂木はその助手<ワトソン>としての活躍見せる。
そんな二人の下に年上の友人である木村栄三郎が幼馴染みの高田安次郎と共に訪れる。安次郎は自身がボランティアとして働く動物園で最近元気のない同じボランティアの女性の悩みを解決してほしいと鳥井に依頼。鳥井は渋々ながら動物園の近辺で起こっている野良猫の虐待事件の調査を始めるが容疑者に浮かび上がったのは鳥井と坂木の同級生で鳥井がひきこもりとなる原因を作った人物であった。坂木は鳥井を気遣い二人の対面を避けるよう画策するが失敗、自分を変えてしまった相手に対して鳥井はどのような態度をとるのか、そして鳥井が指摘する意外な真相は。

今作も過去2作同様に鳥井が探偵役、そしてその助手として馬鹿がつくほど人の好い坂木がメインとなる。
この作品を読み始めたときは学生時代にイジメにあい唯一手を差し伸べてきた坂木にだけ心を開きその坂木の頼みや苦しみだけを理解し反応する鳥井が気になってしょうがなかった。イジメに受けひきこもったという点から「弱者」というイメージをもってしまうが鳥井は坂木がそばにいれば第三者と話す時も矍鑠としていてその言葉遣いはぶっきらぼうというよりもある意味全てにおいて上に立つ強い立場の人物を連想させる姿にあまり馴染めず、その推理力には感心するものの人間としてはあまり好きになれないキャラであった。
1作目を読み終わったときはそんな鳥井が坂木の力を借りずとも他人との係わり合いをもてるようになり相手に対して片意地を張ったような態度ではなく自然に付き合っていけるよう成長していく物語だと思っていたのだが2作目を読んでみると今度は親友であり恩人の坂木が腑に落ちなくなる。人が好く他人に対して疑うという気持ちを持たない、鳥井が第三者に放つ辛辣な言葉に対してもあくまでその人が傷つき落ち込まないように一所懸命にフォローをする。鳥井に対しては彼の独り立ちをいつも考えながらどこかで逆に彼を自分だけのものにしておきたいという願望を覗かせる。
自分としては相手に対して言葉遣いは乱暴だが直線的で妙な期待を持たせず確信だけ告げる鳥井には徐々に共感が持ててきたのだが逆に始めは友人思いのいい人という印象だった坂木が自分勝手で理想だけを追い求めている子供っぽい人物という印象に変わっていった。

過去の2つの作品でおぼろげながらわかってきた2人の性格、最終作でどのような成長が見られ2人の関係はどのように変わっていくのかが一番気になるところであった。
鳥井は相変わらず坂木に依存はしているものの忌まわしい過去と向き合うことになった時にも動揺することなくその人物に対して明確な分析で論理を展開している点から考えると「強く」なったといえるのだろう。
坂木は相変わらず「鳥井を独立させたいが失いたくはない」という考えにウダウダとはまっているが最終的には友人である滝本や鳥井自身の言葉から決断を下し、ある行動をとる。
成長といっても劇的に何かが変わるわけではなく今作のラストで起こることによって「始まる」といった雰囲気を感じます。
逆に急激に変わることになれば2人の関係は崩れてしまうが徐々にゆっくりと変えていくことによって2人は友人のままお互いに成長していくことができるのだろうと思いました。

自分はこの手のシリーズものだとどうしても最後に物足りなさを感じてしまう性質で今作でもエピローグの時点では「その先が知りたい」とモヤッとしてしまいました。ただ巻末にはあとがきの後にシークレットトラックという形で2人の直近のその後「白い日」が収束されているのにはうれしかった。ただこの部分を必要とするかしないか読み手によっては賛否両論わかれるような気もします。

※ あとがきには今作で完結と坂木さん自身が書いているがこれはぜひ続けて欲しいシリーズである。ある意味分岐点を迎えた2人なのだが今後はまだまだ紆余曲折ありそうで鳥井にしてももう少し行動範囲が広くなればその推理力を活用できる場がさらに広がると感じます。ぜひぜひ続編を・・・。

マンゾク度:★★★★☆

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閉じる コメント(2)

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鳥井のズバッと言いにくい事を本人に言うあたりが好きでした。そういうところが引きこもりっぽいというか^^;
続編、出るんですかねえ。おいらも「これで終わり?」って思っちゃったんで出ると嬉しいような、今更もういいかな、って気がしなくもないような(笑)

2009/3/6(金) 午後 9:16 ゆきあや

>ゆきあやさん
ズバッというところは自分も好きでしたね、シリーズ2作目辺りからは逆に周りの人々に気を使いまくる坂木の方がなんだがイライラさせられました^^;
確かに今、シリーズ最新刊が出たら小躍りするほどよろこびそうですがしばらくしたらその気持ちも冷めてしまうかもしれません^^;

2009/3/7(土) 午前 1:23 hayaton


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