紹介文
本間が大学で出会ったイケメン男、成宮の副業はなんと車泥棒。彼の口車にのせられた本間は見張り役を手伝うことになってしまった。獲物はランボルギーニ。しかし、助手席を覗き込んだ二人が見たものは手足を縛られた美少女だった。二人は女の子を助け出し、誘拐犯をつかまえようという大胆な行動に出たのだが…。誰もがかつて憧れた爽快青春小説の傑作。
感想
「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した著者のデビュー作になります。てっきり受賞作の「屋上ミサイル」がデビュー作だと思っていたのですが先日偶然今作を発見、「屋上ミサイル」が個人的にツボだったので早速借りてみました。
大学に入学して1人暮らしを始めた本間、新生活3ヶ月目に実家の母からかかってきた電話は両親の離婚を告げるものだった。
両親の離婚について悩む本間は気分を変えるために大学に行き甘いマスクでありながら不思議な雰囲気を纏った男と出会う。
本間は初対面の男:成宮に両親の離婚についての相談を持ちかけようとするが逆に仕事の手伝いを持ちかけられしかもその仕事は『車泥棒』であった。
簡単な見張りという話であった仕事がなぜか誘拐事件につながり、更にはその誘拐犯を捕まえることとなった本間、成宮の口車に乗せられあらぬ方向へと進んでいく事態はどうなってしまうのか。
偶然知り合った男に言われるがまま車泥棒の手伝いをすることになるという設定は伊坂作品の「アヒルと鴨のコインロッカー」の本屋を襲うという出だしが嫌でも頭に浮かんでくる、と言うよりも作品全体が似すぎている気がします。
しかも何もわからぬまま屁理屈をこねる成宮の口車に違和感を覚えながらも最終的には指示通り手伝いをしてしまう主人公の本間なのだがその従順ぶりには読んでいるこちらが違和感を覚えてしまいます。
車泥棒→誘拐された少女の救出→誘拐犯を捕まえる→真っ黒い人物をやっつける、という展開なのだがその進行は途中誘拐された少女:希美が登場してくるものの彼女は殆ど会話に参加することなく本間と成宮の会話で進んでいく。その会話文のスタイルも伊坂作品の影響を強く受けているという印象なのだが伊坂さんほどの『味』が感じられないのが残念で逆にいつまでたっても核心に迫ることなく意味のない会話続ける二人にだんだんとイライラしながら辛抱強く読んだのだがラストで語られる内容は予想通りのものであり物足りなさを感じてしまう。
読み終わってみると大きな疑問が一つ。なぜ成宮は本間を翻弄するような言い回しで手伝いをさせたのか、普通に考えれば成宮と希美の関係にすぐ気がつきそうなものだがそこは本間が世間知らずの男の子だったとして無理矢理納得したとしても別に成宮の企てを本間に隠す必要はないんじゃないか、と言うよりもきちんと説明した方が全て上手くいくような気がします。
成宮が作中で「偶然というものはない」といった話をするのだが本間と成宮の出会い自体が偶然以外の何物でもないといった印象で腑に落ちない。
今作には不思議なニュアンスを加えようという試み、本間に職質をする警察官や成宮がミケランジェロと呼ぶ不良たちなどが登場してくるがその効果というとあまり意味を成していたいと思われる。
前述したが今作は明らかに伊坂さんの「アヒルと鴨のコインロッカー」を真似た作品であるのだがもちろん伊坂さんには遠く及ばない軽い作品になってしまっている。もしも著者が伊坂さんよりも先にこの作品を書いたとしたら「新しい」といえるのかもしれないが出版年数から見てもそれはなさそうですしたとえ伊坂さんの作品を読んでいない人がこの作品を読んだとして「面白い」と感じるかどうかは微妙かもしれません。
※ 今作に比べて「屋上ミサイル」では会話文の部分が今作よりも磨かれているのと同時に登場人物を増やすことによって多種多様な楽しみ方ができるようになっている、伊坂作品に似ている部分はあるものの充分に楽しめる作品です。
マンゾク度:★☆☆☆☆
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