紹介文
人と“ヒトデナシ”と呼ばれる怪異が共存していた世界-。名探偵・秋津は、怪盗・無貌によって「顔」を奪われ、失意の日々を送っていた。しかし彼のもとに、親に捨てられた孤高の少年・望が突然あらわれ、隠し持った銃を突きつける!そんな二人の前に、無貌から次の犯行予告が!!狙われたのは鉄道王一族の一人娘、榎木芹-。次々とまき起こる怪異と連続殺人事件!“ヒトデナシ”に翻弄される望たちが目にした真実とは。第40回メフィスト賞受賞作。
感想
メフィスト賞も第40回!まずはそこに驚いてしまいました。自分は第19回受賞の舞城さんまでは追いかけていたもののその後は未読作品が多くなっています。ただあらゆる意味で物議を醸し出すという点では「このミステリーがすごい!」大賞を凌ぐものがあるが、受賞作家さんの中には有名になった方も多くいるので侮れないところです。
妖、化生、天魔、様々な呼ばれ方を魔性の力を振るい人々を恐れさせたヒトデナシ。その中でも人と同じく四肢を持ち独自の考えで行動できる知能を持つヒトデナシ『無貌』、人の顔奪う力を持つ無貌は奪った顔を用いその時々で容姿が違うため真の姿は謎でありまた美しい体の部位を持つ人々から生きたままその部分を奪うという恐ろしい蒐集癖を持つ。
探偵:秋津承一郎は無貌に関連する事件を取り扱い続けたがその結果、顔を奪われ怪奇な仮面をかぶることとなりその後探偵としての仕事からは遠ざかっていた。
古村望はそんな秋津こそが無貌ではないかと疑い事務所に訪れるとともに拳銃片手に真意を問いただすが当てははずれ秋津の提案により臨時の助手として無貌から脅迫状の届いた娘の護衛することとなる。
しかしその娘の家、榎木家では家長の座を巡る問題がありそんな中遂に殺人事件が起こる。
亡き当主の兄による呪いによるものか、無貌による策略か、事件に巻き込まれた少年:望は探偵として高い能力を持ちながら事件に関わろうとはしない秋津に怒りを覚えながらも自身の力で犯人を見つけようとする。
久々にど真ん中にきたメフィスト賞でした!べるさんこれはかなりよかったです(いきなりすいません 笑)。
読み始めでは「ヒトデナシ」や「無貌」なる異形のものやそれに関わる「諱乗り(いみなのり)」とかあまりに突拍子もない内容に引いてしまい、更には「藤京(とうきょう)」、「翠玉(すいたま)」、「凪野(なぎの)」など実在の地名をちょっといじったような使い方や顔を奪われ怪異な仮面をかぶった探偵の登場など戸惑いながら読んでいましたがそれも最初だけで徐々に慣れてくると非現実的な部分はさほど気にならなくなり、かなりアクロバティックなミステリかと思っていたのですが実際殺人に関する動機や一族内で見られるそれぞれの思惑、そして不可解な殺人事件でのトリックなど結構まともな内容になっていました。
表紙の絵や紹介文を読むと無貌という名の怪人と名探偵そしてその助手である少年が対決をするような印象なのだが実際は資産家一族内で起きた連続殺人事件の謎であり、無貌は事件における重要なキーマンであるが中盤ではほとんど姿を現さずその存在が際立つのは最初と最後だけといったところ。
この作品でなによりシビレたのは秋津が作中で語る「探偵否定論」。自分も探偵ながら無貌に敗れ顔を奪われるだけでなく妻は傷を負い、かつて自分を知っていた人々の目には自分が見えなくなるという孤独を背負う羽目になってしまったための弱音ともとれる発言なのだがその内容はけして愚痴などではなくひどくまっとうな論理でハードボイルド作品の探偵であるならば「探偵なんぞは立派な仕事じゃない」などの言葉はよく見るが今作のような犯人探しのミステリでここまで探偵が探偵を否定するのは珍しいのではないだろうか。この秋津の話だけで終わってしまうとミステリとして成り立たなくなりそうだが、その秋津論を聞いた上で尚且つ犯人を探し、罪を償わせようとする古村少年の行動を際立たせるために重要な話となっているのだろう。
兄弟とその子息による後継者争い、亡き兄の呪いの言葉、謎の軍服姿の人物、影しか持たない人間、未来視をするという異形の力などなどレトロで怪しげな雰囲気がする要素が盛りだくさんの内容です。
終盤には秋津の仮面がらみでちょいと呆然としてしまったそれはご愛嬌、ラストでもいくつかの盛り上がりを見せるのですが個人的には芹という少女が父に言った最後の言葉にはやられました。
一つだけ気になるのはいくつかの内容を引っ張りすぎているところ、秋津も含まれる三探偵について1人は名前が出てくるものの姿は現さず、もう1人については名前はおろか一切触れられていない。また無貌が秋津を生かしておく理由、秋津の妻が負った怪我の具合、無貌に付き従う犬の存在、秋津の元助手が死亡した原因などおそらく続編があるので徐々に解き明かされるのであろうが忘れないうちに明らかにして欲しいところです。
※ 巻末に続編の告知がされています(ちなみに今年の秋に刊行予定)、このあたりを見ても結構押してくる作家さんなのではないでしょうか。とにかく続編が早く読みたい。
マンゾク度:★★★★☆
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やった、やった。好評価〜(小躍り中)♪私も最近のメフィスト賞には全く食指が動かずにいたのですが、これは久々に読んだメフィスト賞で当たりだったので嬉しかったです。秋津や望が事件を通してちゃんと成長して行くところがいいですよね。おどろおどろしい設定もきちんとミステリに食い込んでいるし。気になる点がない訳ではないですが、デビュー作でこれだけ書ければ今後も期待できそうですよね^^続編が楽しみです^^TBさせて下さい。
2009/3/13(金) 午前 1:22
おお、これは予約中です^^楽しみだあ。出た時はあまり好みじゃなさそうな雰囲気を感じてしまったのですが、期待出来そうですね。ちなみにおいらはメフィスト賞2冊の挫折本(「死都日本」「黙過の代償」)を除き全部読んでいます^^;一時期に比べて、レベルがまた上がって来ているようで嬉しい限りですよ^^
2009/3/13(金) 午前 3:23
>べるさん
初期の頃のメフィスト賞受賞作品を彷彿とさせてくれましたよね^^
内容紹介を読んで気になっていた作品でおそるおそる図書館で予約をいれたもののべるさんの評価が高かったので安心して読みました^^
心配なのはやっぱり続編が出るまで記憶が残っているかですよね^^;
TBありがとうございます。
2009/3/13(金) 午後 10:56
>ゆきあやさん
さすがですね、そこまでメフィスト賞を押さえているとは脱帽です^^
自分は間で読書から遠ざかっていた時期があったので随分未読の作品が多いのですが少しずつでも未読作品は読んでおきたいと思います。
今作はかなり面白かったです、デビュー作としては完成度が高いと感じる作品でした、ゆきあやさんの感想期待してますね^^
2009/3/13(金) 午後 11:12