紹介文
父は虎になった-。そんなこと、簡単に信じられるものではない。ぼくだってそうだった。しかし、父に会った、という人物からもらった手紙には、父がその場で詠ったという一篇の漢詩が書かれていた。その詩には、虎になった人間にしかわかりえない、悲痛な心の叫びがこめられていた。父の血をひくぼくも、いつかそうなってしまうのだろうか。それはちょっと勘弁してほしい。父がどうして虎になったのかを知りたい。それが波瀾万丈にして、不思議な旅の始まりだった…。言葉の魔術師・柳広司が放つ中島敦『山月記』に想を得た、奇想天外な変身譚。
感想
『山月記』は読んだことがなく虎になった男の話という漠然とした内容なら知っているが果たしてそんな自分が今作を読んで楽しめるのかちょっと心配でした。
父は二十歳にして超難関の官吏登用試験「科挙」に合格し、以前から好意を寄せていた女性と結婚。順風満帆の人生を歩むはずであったがぼくが生まれてすぐに官職を辞し生まれ故郷の村に帰ってきてしまった。
働かずに過ごす父であったが着るもの食うものに困り地方官吏の職に就いたものの1年後に仕事で旅に出たまま行方不明となってしまった。
その後、父ともっとも親しかった友人が南嶺の地で虎となった父と出会い妻と息子の生活を助けて欲しいと頼まれたと告げ生活を援助してもらうこととなった。
14歳になったぼくは大きな体を持ち、村で起きた喧嘩で無意識のうちに相手をなぎ倒してしまう。村人からは「虎の子は虎」と指摘されたぼくはいつか自分も虎になってしまうのかもしれないと心配になり、父がなぜ虎になったのかを調べるために1人旅に出ることとなる。
個人的にあまり相性のよろしくない「ミステリーYA!」レーベルなのだが(過去に読んだ作品でこいつは面白いと思ったのは「オチケン!」のみ)前回読んだ「ジョーカー・ゲーム」が非常に面白かった柳さんだけに期待をしていました。
ちなみに「山月記」を読んだことのない自分ですがそこは特に問題なく普通に読める作品でした。
今作では虎になった父を持つ少年が父が虎になった理由を知るために父の旧友を訪ね、そして面会することができないと知るとその人物が虎となった父とあったとされる南方の村に向かう旅をするというもの。少年といっても14歳で大人といってもいいような体格を持つため周りの人々から「少年」とは思われずにいるのだが作中で主人公が自分のことを「ぼく」という言い方が14歳という年齢よりも幼い印象を受けてしまう。
時代設定は昔・・・すいません、中国史というものは学生時代に世界史の授業で触れたぐらいでその後は関連する本なども苦手で読んでいないためどんな時代なのかはいまいち理解できていません。
李白という詩人の名前などは授業で習った記憶があるものの時の皇帝の名前は全く記憶に残っていませんでした。
どんな状況なのか把握しておかなければいけないの1点のみで、それはよく聞く話で長きに渡る戦によってお上によって村の若い男たちが戦場にかり出されるということ。
村には若い働き手がいなくなり女性と老人と子供ばかりが残され貧困に喘ぐこととなっている。
その点だけを踏まえて読めば主人公の父が虎になった理由という話の流れも違和感なく読めるのではないだろうか。
父=虎という点については病に関する内容が出てきた時は「まさか、これがオチなのか?」と心配になってしまったがそれは前振りに過ぎず、その後納得のいく説明があり「なるほど」と思わせる話であった。ただ最後の漢詩の部分は普通に読んで「そうなんだ」と普通に納得してしまい、「やられた」であったり「驚いた」といった感情の盛り上がりはなかった。この点についても話がつまらないのではなく漢詩自体詳しくないためにただ文章を追いかけ流れ作業のような読み方をしてしまったため感想も「そうなんだ」で終わってしまいました。
主人公の最後の浮かれっぷりを読んでいると「おまえさんはそれでいいんかい?」と言いたくなりますが最後の最後には若干ファンタジー的な要素も含まれていて面白い終わり方になっています。実際主人公の父はどこに行ってしまったのか、明け方発見された少女と一緒にいた虎はなんだったのかが気になってしまう。
あとがきを読むと今作はおそらく「山月記」を愛読してきた柳さんが作ったスピンオフ作品という位置づけになるのだろうか、短い作品らしいので後日「山月記」を読んでみたいと思います。
※今作に限ってはなんとなく講談社の「ミステリーランド」レーベルのような作風でした。やはりいまひとつ乗り切れない「ミステリーYA!」なのだが理論社のHPで今後刊行予定の作家陣を見ると好きな作家さんがずらりと並んでいます。その中でもやっぱり「オチケン!」の続編は気になるなぁ。
マンゾク度:★★☆☆☆
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これ、発売してすぐにリクエスト希望出してるんですが、一向に買ってくれる気配がないのです(T_T)。ちょっとイマイチですか。他の書評みると結構高評価だったので期待してたんですけど。早く買ってくれ、図書館・・・。
2009/3/18(水) 午前 1:30
これ、明日回ってくるんです。とても楽しみなんです。でもイマイチなんですか?(パクリ?笑)
「山月記」って国語の教科書に出てきませんでした?記憶はとっても曖昧ですが、確かあったような・・・え?時代が違う?^^;;;
2009/3/18(水) 午後 11:45
あ、今日予約した本です(笑)YAなら買わなくてもいいかな、と思いまして^^;「山月記」知らなくても大丈夫かな、と不安もありましたが。。
2009/3/19(木) 午前 1:29
私はこれ、好きでしたよ〜^^“漢文の女王”と言われた(誰が言った?)私は朗読までしました(笑)。作品との(若しくは柳さんとの)相性が良かったのかしら。
でも私は最後で悩みましたよ^^;私なら余計に「なんでー?」と思ってしまいそうです。TBさせて下さいね。
2009/3/31(火) 午後 10:50
>べるさん
自分としては苦手な時代設定だった為イマイチだったのかもしれません、もしくは「山月記」を読んでいるいればもっと楽しめたのかも・・・^^;
2009/4/4(土) 午前 9:29
>紅子さん
漢文の女王とはおみそれいたしやした^^
柳さんはまだ2冊目、1冊目のインパクトが強かったので過剰に期待してしまいました、最後はちょっと座りが悪かったですよね^^;
2009/4/4(土) 午前 9:31
>ゆきあやさん
YAはやはりそういう位置づけですか^^;
「山月記」知らなくても無事に(?)読了はできましたよ、でも読んでいる方が楽しめるとは思います^^
2009/4/4(土) 午前 9:36