紹介文
このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時のことである。大阪が全停止した。長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった-。前代未聞、驚天動地のエンターテインメント、始動。
感想
待ちに待った万城目さんの最新作。どうやらホルモーシリーズではなく単体の作品のようなんのだが新しい万城目ワールドが見れるという点で楽しみにしていました。
三権分立の枠外に位置し独立した機関である会計検査院、その第六局に所属する凸凹トリオ。副長である松平は部下である二人の調査官、鳥居と旭・ゲーンズブールと共に府庁の会計検査をすべく大阪へと向かう。
関連施設や学校などの検査を行い日程をこなした3人であったが唯一当日不在のため検査のできなかった社団法人OJOだけが残ってしまった。
父の墓参りのため週末一人大阪の地に残った松平はようやく連絡の取れた社団法人OJO代表の真田幸一と会うべく出張延長の申請をしたがその面会は驚くべき内容を伴うものであった。
大阪に生まれ育った男性、その数200万人は滅亡した豊臣家の子孫を守るために秘密の組織を発足させる。組織は徳川家の滅亡と共にその名を「大阪国」と改め時の政府と条約を結んだ。大阪の地下に国会議事堂の内部と全く同じつくりの大阪国議事堂を設け、国からの補助金を元に豊臣家の血脈「王女」を守るためのシステムを作り続けていた。
あまりに非現実的でありまた事が大きいために松平は再度鳥居とゲーンズブールを呼び寄せ大阪国と対峙しようと試みるが鳥居のおかしな行動により大阪国の守る「王女」が拘束されてしまう。大阪国総理大臣である真田幸一は事態を重く捉え松平に対し「宣言」をし国民に対し王女の危機を知らせる合図を発動する。
すべての機能を停止した大阪、府庁前に集結した200万人の前に立つ松平は大阪国と対決することとなる。
自分であらすじを書いていてもわけがわからなくなってしまいます。とにかく長い、そのわりにあまり内容に起伏がなく淡々と進む物語でした。
面白くないということはないのだが自分が万城目作品に期待する「んなアホな!」という点であり、今作の設定はさすが万城目さんというべき内容なのだがしゃべる鹿や不思議な小鬼のような人外のものが登場はせず、かなりの壮大な歴史を感じさせる「大阪国」ではあるのだがそこは人がなせる業であり少し物足りない気がします。
特に自分の場合今作での重要なキーとなる徳川による豊臣家殲滅の為の戦や江戸末期、後の明治天皇が取った行動などの歴史的な部分に疎く、また大阪には仕事などで何度か足を運んだことはあるものの舞台として登場する大阪城は未だ生で見たことがなく、国会議事堂と同じ作りとされる大阪国議事堂の内部に関しても小学校の社会科見学で1度だけ見た記憶があるといった程度なので今ひとつイメージが沸いてこなかった。
終盤に起こる大阪の機能全停止、その状態を引き起こす原因となる2つのストーリーを交互に展開していく形で会計検査院の3人の調査官、検査に際しては一切の妥協を許さず厳然と対処をする「鬼の松平」こと松平元はいつも眉間に皺を寄せ毅然とした雰囲気を感じさせるが1日5個は食べるという大のアイスクリーム好き、ちょっと小太りで背の低い鳥居は優秀な調査官ではないが(どちらかというと頼りない)ふとした拍子に隠された事実を見つけるという「ミラクル鳥居」の異名を持つ、フランス人と日本人のハーフであるゲーンズブール・旭はヒールを履くと180cm以上の長身で容姿は外国人なのだが話すと流暢な日本語で能力は高く仕事をした各省庁では「プリンセス」と呼ばれている。見た目凸凹な3人、それぞれがいい味を出しているのだがその中でも仕事に対して厳しい態度で臨む松平がアイスを頬張る姿と先輩でありながら何一つ勝っていない鳥居が旭に対してライバル心を見せる態度が面白い。
対してもう1つのストーリーである空堀中学校の面々は少々物足りない。性同一障害に悩み遂に一念発起してセーラー服を着て学校に登校する真田大輔、大輔の幼馴染で活発な女の子橋場茶子、大輔を苛める蜂須賀組組長の息子蜂須賀勝といったところが主要なキャラなのだがまず大きな点としては性同一障害に悩み大輔なのだがなぜその要素が必要なのかがわからない。重要な場面で似合わないセーラー服を着て登場する大輔の姿は面白いというよりも違和感を覚えるだけであった。更にセーラー服を着る大輔を目の敵にする蜂須賀勝なのだがある意味、大阪機能停止の立役者であるに関わらずあまりにも扱いが小さく、もう少し存在感を示してほしいところであった。
なにより物語の中心とも言える豊臣家の末裔にして大阪国200万人の男がその身を案じる王女の存在が弱い。王女自身が自分が豊臣の末裔であることを知らず大阪国の人々ですらその王女が誰であるかを知るのはほんの一握りとなっている。個人的には王女が自分自身の立場を知りそれを承知で活躍するという展開が欲しかった。
初めに書いた感想に戻るが面白くないわけではないのだがあまりにきれいにまとめすぎているといった感じのする作品でそこはそこ、ある意味万城目さんだからこそ生まれた発想と思えるのだがもう少し荒唐無稽というシチュエーションがあってもいいのではと思ってしまうのと同時にこれだけのボリュームなのでどの要素ももう少し突っ込んだ展開を見せて欲しかったと思える作品でした。
※松平が大阪に住んでいた幼い頃に見た光景は幻や夢ではなく現実だったという点はいいのだがそうなると鳥居が車窓から見た富士山の麓に多数立っている大きな十字架の話が気になってしまいます。
マンゾク度:★★★☆☆
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うん。同感ですね。私もあまりの冗長さに乗り切れなかった部分が多かったです。タイトルの割に当のプリンセスは活躍してないですしね・・・。もともと歴史小説が苦手なので、ちょっと苦手意識が先に来ちゃった感じでした。キャラ造詣なんかは相変わらず面白かったですけどね。TBさせて下さい。
2009/4/5(日) 午前 1:14
>べるさん
過去作に見られるような万城目さん独特の痛快さがなかったのが物足りなかった気がします。もう少しギュッと凝縮してくれると満足感が増したかもしれませんね^^TBありがとうございます。
2009/6/7(日) 午後 3:33