シャクシャインのおひざもとのアイヌの美学

新ひだか町、静内に今も伝わるアイヌの貴重な口伝、素晴らしい文化、自然をうやまう御心

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存在するすべてのもの

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新ひだか町(旧静内町)東別に住んでおられたアイヌの葛野辰次郎エカシは「この世にあるものは動物も植物も茶碗も全部魂があるのです。魂があるのだから生きていられるし役にも立つのです。人間だけではなく熊、狐、樹木に至るまであの世に行く、そしてまたこの世に生まれかわってくる」と述べ、人間も熊も普段使っていた食器もみんな幣場で送ったそうです。
 
アイヌは’存在論’という大きな命題に魂を宿らせて考えておりますが、まるで辰次郎エカシは哲学者のようでもあり、同時にアイヌの輪廻、再生の思想を説いておりますがこれは仏教の基本思想のひとつになっております。
また辰次郎エカシは「あの世には天国も地獄もない、従って亡くなった方をあの世に行けるように残された人たちがしなければならないのです。ですからこの世で泥棒しても人殺しをしても死んだ時には皆がお悔やみに来た時には悪事をすべて晒して悪い奴だけれども、神様に受け取ってください、もしも神様が受け取らないと何をしでかすか分からないので、どうかお願いしますと言って引導を渡します」とも述べております。
 
アイヌのあの世には天国、地獄の区別はなく皆同じところに行けるという思想はなぜか鎌倉動乱期のヒーローの一人である親鸞聖人の説いた悪人正機説に似ているようにも思えます。
当時から現在に至るまで人々に支持され続ける親鸞聖人の思考の根っ子に仏教渡来以前、つまり辰次郎エカシの生死観のような日本的こころの原風景に多くの日本人がシンパシーを感じとった故なのかもしれません。
あの世でまた裁きが待っているキリスト教、仏教でいう此岸と彼岸の間の三途の川でエンマさんがご登場し天国、地獄行きの切符を切る等々、戒めと解釈してもアイヌの宗教観に比べてこれらキリスト教、仏教は天上界に於いてさえ人間の醜くもあり、また階層的なあさましい考え方が入り過ぎているのではないかと罪深き私は考えます。
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今、グローバリゼーションの極地に達しアングロサクソン発の閉塞感が世界中に拡散する中、アンチグローバリズムとも言えるこんな素晴らしい世界観を持ったアイヌの教えがこの地にはまだ残っております。
 
しかし新ひだか町/旧静内町でもアイヌのお話を聞かせてくれる素敵なエカシはほとんどいなくなりましたがとっても残念な事です。

わずかでもアイヌの貴重な血を受け継ぐ若者は魂の宿る全てのものに感謝し、採り過ぎ、壊し過ぎを戒め、全てのものは輪廻するsustainabilityの思想に誇りを持ち、日本に限らずとも世界に向けどんどん発信しては如何でしょうか。

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