Jimy Iwarehikoのブログ

古代(弥生時代)小説「神武」連載開始

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                対馬暖流と呼ばれる黒潮の分流が主役?



      「神 武」

      第一章 故郷

      1・黒潮の恵



        長兄のイツセと末弟のワカミケがいつものように何やらぼそぼそと話しをしている。

       三男のミケンの甲高い声が静寂を劈(つんざ)いた。

ミケン  「おーい、おーーい、あんちゃん居るかー。」

イツセ  「おー。」

ミケン  「まただ、また掛かって来よった。今度は仰山群で飛び込んで来よったそうじゃあ。」

        中に入ると同時に入り口に置かれている土瓶から柄杓で水を口いっぱいに含み、充分に口

       内の渇きを潤わしながら、ゴクリと飲み乾し、そしてし忘れていた息を大きく吸い込んで、

ミケン  「スー、くじらだ。スー、くじらがまた飛び込んで来よった。そいもごつい数じゃ、スーハー。」

ワカミケ 「またっちゅうと、あの鴫縄にか。宇田の入り江の・・・。」

ミケン  「そうじゃ、宇田の鴫縄がまためちゃくちゃじゃ。直すのにまたえらい手間かかるぞ。」

イツセ  「ミケン、縄よりもそのー、ごつい数のくじらはどうした。」

ミケン  「くじらはもう三雲の伯父貴の手の者達が仕留めて、殆ど浜に引き上げ終えたそうな。」

イツセ  「なんじゃー、もう終わっとるのか。」

        慌てて立ちかけていたイツセががっかりしたように“ドスン”と音をたてて元の姿勢にもどった。

イツセ  「そう言う知らせはもっと速ようせな 何もならん。」

ミケン  「あんちゃん、それを言ってものー・・・。」

イツセ  「解っとる。しかしまた、三雲の伯父貴に差配されて恰好良くやられてしまうわなあ。」

ミケン  「そりゃあ面白ないけど、向こうは、今や何十国も切り従えて、大勢の手下を意のままに使う

      『委奴国王』大王様ですよ。近頃は竺紫だけじゃなく四方に勢力を広げているらしいし。

      相手が悪すぎる。」

        それを聞いてイツセは、これ以上は無理と言うほどの不機嫌な顔になり、先日亡くなったば

       かりの守役の爺のことを思い浮かべていた。その爺から事あるごとに、

       『イツセ様よ、おまんさ等は今の大王と同じ王族の血を引いておる。特におまんさは天の下

       を統べるべく器の持ち主のはずじゃ。』と、

        幼いころより子守唄がわりに聞かされてきた。イツセの幼少の頃の記憶に爺の無念の涙か、

       快晴の空の下の雨粒が、夢心地のイツセの頬を何回もたたいたことがある。

       今のイツセには充分この爺や父の無念を理解できるようになっている.。勿論それが故の不

       機嫌なのだが。

       もう一つの不機嫌の理由は力の足りない自分に対する遣り切れなさによる、以って行き場の

       ない憤懣か。むやみやたらに叫びたくなるのだ。

        この遣り切れなさ、憤懣が、父や爺が過去背負わされてきたのと同じ、大王家への「無念」

       と言うものなのだろう。この気持ちを抱きながら話せる話し相手はワカミケだけであった。次男、

       三男ではなく末弟のワカミケであった。次男のイナイ、三男のミケンでは何故かだめなのだ。

       勿論、最初から“こう言う件”で話さなかった訳ではない。ダメだったのだ。しかし、ワカミケは

       違った。明らかに反応が違うのだ。そう、同じことを話しているのに聞いた時の反応が全く違

       うのだ。今では、いつの間にかワカミケを相談役として側に置き一族の御館様(頭領)として

       采配するようになってきている。

         *この頃(弥生中期)の統治(政治》形態は殆どが兄弟統治であったようだ。

イナイ  「皆、ここに揃っとったか。ほんで聞いたか、宇田のこと。」

        苦虫を噛み潰したようなイツセの不機嫌が場をこれでもかと言うほど重く暗くさせているとこ

       ろへ次男のイナイがやってきて、

イナイ  「聞いたか、宇田のこと。宇田の高木の鴫縄にごっつい数のくじらが飛び込んで来よったと。」

ミケン  「おっ、わしがさっきもう知らせたが、“分け合い”のことは何か?」

イナイ  「明日朝から宇田川原でやるそうな。そうとうな数らしく、『それぞれが運べるよう用意せい』

      ちゅうとったぞ。」

ミケン  「運べる用意って、分け前をだろ。」

イナイ  「あったり前だ。なんせ、百人がかりで浜から宇田川原まで引っ張りあげたとのことじゃ。」

ワカミケ 「そいつぁーすごい。この前のくじらは30人ほどで引けたそうじゃから、今度の群は3倍以上

      か。分け前も相当多かろうのう。」

イツセ  「よーし!ワカミケ、明日の運び込みと、干し肉造りの用意とを準備万端整えろ。」

        と、ワカミケの返事よりも早くミケンが、

ミケン  「エエーッ、兄ちゃん行くんか。気悪なって行かんかと思ったが・・・」

イツセ  「ばかもんー、そいはそい、こいはこいじゃ。こいで、しばらくは食い物に心配すっこたなかあ・・・

      ハッハッハーッ、のーワカミケー・・・ん???」

        すでにワカミケの姿はそこには無く、とっくに明日の準備に向かって席を立っていた。

       一族の保存食の確保は二人の重要な課題の一つでもあったから、朗報だったのだ。古の昔

       から、たまに今回のような鯨や海豚等が、“人間の食料になる為”とも思えるような恰好で、群

       で浜の浅瀬に向って踊り込んできてくれるのである。これぞ黒潮の恵である。但し、計算のでき

       る物ではない。年に何回もあることもあれば、何年もやって来ない事もあるのだ。それだけに

       恵の有った時は、誰彼なく身分を越えて村中が喜びで沸き立つのである。

        何時の間にかイツセの不機嫌もどこへやらと消え失せていた。どう言う訳かイナイが現れる

       とこのようになる事が多い。イナイの持ち込んだニュースによるものだが、其れだけではなく

       次男のイナイには、人間的性格なのか、偶然の役回りなのか、それはよく解らないがとにかく

       彼の出現により場の雰囲気が一変することは今までにも、ちょくちょくあった事で特別の能力

       のように周辺では思われているのであった。


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