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歌
漢・李延年
北方有佳人,
絶世而獨立。
一顧傾人城,
再顧傾人國。
寧不知傾城與傾國,
佳人難再得。
北方に 佳人 有り,
絶世にして 獨立す。
一顧(いつこ)すれば 人の城を 傾け,
再顧(さいこ)すれば 人の國を 傾く。
寧(いづく)んぞ 傾城(けいせい)と傾國(けいこく)とを 知らざらんや,
佳人は 再び 得難(えがた)し。
◆李延年:武帝に仕えた歌手。歌で自分の妹の美女ぶりを唱い、武帝に薦めた。その妹は後に李夫人となる。『漢書・外戚傳上』「孝武李夫人,本以倡進。初,夫人兄延年性知音,善歌舞,武帝愛之。毎爲新聲變曲,聞者莫不感動。延年侍上起舞,歌曰:『北方有佳人,絶世而獨立,一顧傾人城,再顧傾人國。寧不知傾城與傾國,佳人難再得。』上嘆息曰:『善。世豈有此人乎。』平陽主因言延年有女弟,上乃召見之,實妙麗善舞。由是得幸。」
◆歌:声に節を附けて大きな声でうたう。
◆北方有佳人:北方に美人がいる。
佳人:美人。顔が美しく姿のよい女。
◆絶世而独立:世に並ぶものなく優(すぐ)れて、ひとり抜きん出ている。
◆一顧傾人城:一度ふりかえれば、その佳人の住む城郭都市の城主の魂を引き抜いて、城をかたむけあやうくさせ。
一顧:一度ふりかえる。
傾:かたむける。くつがえす。あやうくする。
人:(その佳)人(の)。
城:城郭都市。城塞。
◆再顧傾人國:再びふりかえれば、その佳人の住む国の君主の気を奪い、国家の存立を危うくさせる。 再顧:再びふりかえる。
國:くに。
◆寧不知傾城与傾国:(わたし=李延年は、傾城と傾国を)どうして知らないことがあろうか。
寧不知:どうして知らないことがあろうか。
寧:まさか。よもや。むしろ。ここでは、前者の意。 不知:分からない。
傾城:諸侯の気を奪い、城市の存立を危うくするような絶世の美女。
傾國:君主の気を奪い、国家の存立を危うくするような絶世の美女。
◆佳人難再得:美人は、なかなか二度とは手に入りにくい。
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