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No.485(2018.10.25
野坂昭如 氏の戦争童話


《紹介・書評》 再掲載
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 野坂昭如氏 (1930〜2015)は、思いのほか多くの童話を残しています。
 そのいくつかを、数ある中から紹介してみます。
 凡そ野坂氏の作品は、直接的に声高に反戦を掲げているものでもなく、市井の人々がどんな目にあったのかを淡々と書き、そこから読者は共感し、思いを寄せることができるようになっているものがほとんどです。
 童話という非現実的なストーリーがどこか自分の生活とは乖離したものを感じさせるはずなのに、背景にある戦争のむごたらしさ、やるせなさが伝わってきて、それが現実のものとしてよりいっそうかなしく受け止められる。 それが一貫した特徴だと思います。際立った表現力。
 それだけに、心にしみて、子どもにも大人にも読まれるべき作品集が多いです。
 登場人物たちは フィクションだけれど 置かれている状況はまさしくノンフィクションの現実にあった世界。
 野坂昭如氏は子供時代に国内で戦災にまみれ、その実体験がベースになっており、海外で戦闘を体験したこともないので、日本軍の侵略性や非人道性については直接書かれてはいません。
 子ども、象、クジラ、鸚鵡、馬たちやあらゆる生き物に例えて、生きとし生けるものが”戦争”で体験した恐怖や辛苦を浮かべた その瞳を思い浮かべると、悲しく、胸が苦しく、読むのが辛く、やるせない気持ちが胸いっぱいに広がります。
 過去は変えられないけれど、その過去を知ることによって、未来は変えられるはず。

 子どもに読ませるには辛すぎるお話もあるけれど、また、「童話集」だけれど、決して子ども向けとして限定している本でもありません。

 

 (1)『戦争童話集』
     野坂昭如 著 中公文庫 初版1980.8 514
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 12の短編が収められています。
 すべて、8月15日の終戦(敗戦)直後の日本を舞台に創作されています。
 全編が、「昭和二十年、八月十五日」 の一行から始まる言葉で始まり、その当時の物語になっています。
  焼け跡にはじまる野坂氏自身の青春の喪失と解放の記憶をベースに、戦後を放浪し続けた著者が、戦争の悲惨な極限に生まれた非現実の夢と終わりを、鎮魂の短編童話集として、集約して描いているのがよく理解できました。

 あとがきによると、弱いものが、大きな力にもてあそばれ、過酷な日々の果てに死に至るという筋書きが童話にもってこいの感じだそうで、これは、想像の産物ではないとも強調されています。

 「潜水艦、戦闘機とともに、前の戦争の主役、ただ、ぼくは、「戦争」の片鱗を心得るつもりだが、「戦場」は知らない。B29に対し、打ち返す銃の一挺でも持ってりゃ、空襲を戦場とみなし得たが、ただ逃げるだけ。お互い様だが敵が見えない。戦場体験はないから、兵士について、乏しい想像力では筆にできず、やがて、忘れるというより、さらに無いことにしてしまった感じの戦争。これを後世に伝えなければという、気負いはないが、「戦争を知らないぼくたち」が大人になり発言し始めた。」

 「戦争でひどい目に遭うのは、生物として生きる上で弱い立場のもの、人間、動物、植物すべて、戦争において、殺される側。童話の主人公に、ふさわしいといってはおかしいが、イメージがまとまり易い。読者の年齢は考えなかった。」 

 「戦争の中に、弱いものをおけば、かわいそうなお話に当然なる。子供も鯨も象も虫も、ぼくの用意した、というより現実をなぞった中で、過酷な日々を過ごしつつ、夢に逃避じゃなく、生きる姿を描いた。・・・」単行本、文庫本、大型本のうち、絵を読むにはこの大型本がお勧め。
 アニメで映画、テレビで公開されて大反響を呼んだものをダイジェストで本にしたもので、やはりアニメ動画の方がより詳細でリアルであるものの、少年・少女にはこの本も想像力を働かせるのに素晴らしい出来だと思います。


(2)『ウミガメと少年』 野坂昭如 戦争童話集 沖縄編
        野坂昭如 作(男鹿和雄 絵)徳間書店 初版 2008.4 1700
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 1945年、623日の沖縄爆撃から終戦の815日までのできごと。ウミガメは、地上での激しい爆撃を気にすることもなく、いつも通りいつもの場所に産卵にやって来ました。祖父母と一緒に戦火を逃れていた少年哲夫は、ある時祖父母が死んだことを知ります。家族を失って一人逃げまどい一人になった哲夫は、ウミガメの卵を見つけます。産卵のためにウミガメが訪れた沖縄は、アメリカ軍の攻撃のためにいつもと違っていました。哲夫は卵を安全な場所に移して、大事に育てていきますが…。
 ウミガメにとって、戦争など無関係なだけに、織り込まれた戦争の悲惨さが奥深く感じられます。
 戦時中、哲夫のような少年はたくさんいたのではないでしょうか。戦争という辛い出来事に向き合うことで、平和を求める一冊です。


 アニメーション美術監督の男鹿和雄さんの挿絵が、風景画の様にゆったりとしていて、感情的でないのが、かえって悲惨さをじわじわと伝えています。

 また、この大型本には、巻末に絵付きの英語訳がついています
 

(3)『火垂るの墓』
    原作:野坂昭如 監督:高畑勲 徳間書店 初版1988.7 1600
 
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 単行本、文庫本、大型本の三種類のうち、絵を読むにはこの大型本がお勧め。
 アニメで映画、テレビで公開されて大反響を呼んだものをダイジェストで本にしたもので、やはりアニメ動画の方がより詳細でリアルであるものの、少年・少女にはこの本も想像力を働かせるのに素晴らしい出来だと思います。

 野坂氏自身の戦争原体験を題材した作品。兵庫県神戸・西宮近郊を舞台に、戦火の下、親を亡くした14歳の兄と4歳の妹が、終戦前後の混乱の中を必死で生き抜こうとするが、その思いも叶わずに悲劇的な死を迎えていく姿を描いた物語。
 愛情と無情が交錯する中、蛍のようにあわく消えた2つの命の悲しみとを、”サクマの缶ドロップ”もモチーフにして、人の愛と死を突き付けられるような感動の作品だと思います。

 とはいえやはり、この本については、アニメ動画の方がリアルで感動的だと思います。
 YoutubeのURLだけ下記に追記しておきます。

 ただし、DVD版を購入してご覧になることをお勧めします。


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