今回は、賈平凹(チア・ピンアオ)「廃都」(日本語訳・吉田富夫、中央公論社刊)。 20世紀末のリアルな中国を描いた作品。 1993年6月、雑誌『十月』(第4期)に発表され、翌月に北京出版社から出版されました。 すぐに”現代の「紅楼夢」”、”後世に伝わる書”などと評判になり、いろんな町で海賊版が出されるようになります。 で、3か月後には正版・海賊版あわせて1200余万部も売れちゃうわけです。 でも、出る杭は打たれるで、年末になると過激な(?)性描写などを理由に発禁処分になってしまいました。 その後も海賊版は飛ぶように売れ続けるんですけどね。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「そんなに凄い小説なのか?」 少し勘繰りながら読むのですが、冒頭から引きつけてくれます。 楊貴妃の墓の土を持って帰って植木鉢に入れると種をまいていないのに不思議な花を咲かせるという話、太陽が4つも現れるという話―ユニークな出だし。 落語で言えば、”まくら”のような感じですね。 その後も、牛が哲学者のように語るあたりは秀逸。 ≪この世界の動物で、牛以外はすべて獰猛(どうもう)である。物言わないのは天帝と牛だけだ。牛は人にこき使われていればこそ、ほかの野獣と違って文明社会には入れたのだ。すばらしい。社会の文明は結局は行き詰まり、利口が逆にあだとなって破壊へと向かうだろう。そこで人間に取って代わってこの社会を取り仕切るのは誰か? 牛だ。牛しかいない!(中略)人間の群れのなかにあんなにも大勢、牛の皮で作ったオーバーやジャンパー、靴などを身につけたがる者がいるのはなぜか? あれはみな牛のスパイなのだ。連中は人類のなかにまぎれこんだのちも、当然みずからの種族を恋しがったり責任感をかきたてられたりして、躰のどこかに牛の物を使うことで、ひそかにそのことを暗示したり誇示したりしているのだ!≫ 本当は牛の”ことば”を全文載せたいぐらい素晴らしい内容です。 発売から半年で1200余万部と売れに売れまくったのもうなずけますね。 なお、2009年8月、16年ぶりに中国で再版されました。 |
中国文学発禁本





