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私は、裁判官という人は、判決文を書くにあたっては、
患者への同情といったものに左右されないものと思っていた。
というのも、訴訟進行中、やさしい言葉を原告に投げかける裁判官。
それに対して、「あの裁判官は心がやさしい。きっと、原告の気持ちを理解してくれている。」
と感激する原告やその傍聴者。
ところが、結果は「原告敗訴」。
という例を、何度も見てきたからである。
しかし、その思いをくつがえす裁判もあった。
その裁判は、
ある女子中学生が、医師の手術によって、右腕が麻痺してしまいその過失について争っている裁判である。
その少女の当日の服装は、真っ白な半袖のブラウス。そこには麻痺した腕が見えていた。
少女はその尋問において、淡々と当時の状況を語り、
さらには、希望に満ちた声で、この障害を乗り越え、将来、医師になりたいと夢を語った。
その少女の言葉には、不思議な力があった。
完全に法廷の空気が変わった。
それまで被告側大学病院有利だった風向きが変わった。
結果は、「原告勝訴」。
その少女は、今、夢の実現に向かって邁進している。
私には、「少女の言葉の力」が裁判官の感情を動かしたとしか思えなかった。
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