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【Bloomberg.更新日時: 2010/09/10 17:21 JST (ウィリアム・ペセック) 】
9月10日(ブルームバーグ):ボブリース里奈さんは
日本のグロリア・スタイネム(米国のフェミニズム運動の活動家)ではないが、
同氏こそはエコノミストが待望していたヒロインかもしれない。
ボブリース氏(36)は性差別でプラダを訴えたことで、フェミニズムの旗手とみなされ有名になった。
プラダジャパンの販売担当部長だった同氏は、同社社長に「醜い」と言われる嫌がらせを受け、
さらに不当解雇されたとして同社を訴えた。
このドラマはミラノやニューヨーク、パリではそれほど人の目を引かないかもしれない。
しかし、女性の権利というものが目新しい考え方である日本では、大いに注目に値する。
日本女性は職場で不当な扱いを受けても耐えるものだと思われている。
それが世の中というものだ、我慢しなさい――と。
ボブリース氏は我慢する気などないし、それは良いことだ。
不満 を抱いた結果、同氏は「日本病」の主因を浮かび上がらせることに誰よりも貢献してくれた。
女性の労働力を無視するという慢性的な病気は、成長を阻害し、公的債務を増加させ、
出生率低下などその他の難題を日本にもたらしている。
ボブリース氏は先日、東京の喫茶店で筆者に、
「頭が良くてやる気と才能のある日本女性が大勢、不公平な扱いを受けることにうんざりしている」と主張、
さらにこう訴えた。「わたしは彼女たちの声を代弁している。
公平な扱いを要求する勇気を持たなくてはいけない」。
経歴
ファッション界で18年働いたベテランで
パーソンズ・スクール・オブ・デザイン(ニューヨークのファッション・アート・デザイン・インテリア専門大学)
卒業生の同氏は、プラダUSAとシャネルに勤め、
ニューヨークとロンドン、パリ、ハワイで働いた。姓が「ボブリース」なのは、パリでフランス人と結婚したためだ。
同氏の経歴を買った(はずの)プラダジャパンは、
2009年4月に40店舗500人の従業員を統括する管理職として同氏を採用した。
同氏に言わせれば、そこからトラブルが始まった。
ボブリース氏は、15人の女性従業員を
「歳を取っている、太っている、醜い、感じが悪い、プラダのイメージじゃない」
などという理由で解雇するよう命じられたという。
さらに、同氏自身も体重を減らして髪型を変えるように命令された。
同氏はミラノの本社に苦情を言い、そのすぐ後に解雇されたという。
プラダジャパンの広報担当者はこのコラムについて会社はコメントしないとし、
ボブリース氏の訴えを否定した同社声明を読んでほしいと述べた。
プラダジャパンは先月、会社のイメージに傷を付けられたとしてボブリース氏を逆提訴した。
説得力
わたしはボブリース氏の話には説得力があると思う。
2人の元プラダ従業員もボブリース氏の訴訟に加わった。
この事件は日本の問題をよく示している。
国連女子差別撤廃委員会の代表団が先月ボブリース氏と面談したのには理由がある。
経済協力開発機構(OECD)が日本に女性の地位向上を呼び掛けたのも同じ理由からだ。
日本の国民1人当たり所得は、政治や企業経営への女性の参加度を反映している。
現時点で、日経平均株価の構成企業で女性がトップを務める会社はない。
2008年終盤のウォール街のメルトダウン(いわゆる「リーマンシ ョック」)で、
女性ばかりが偏って大きな打撃を受けた。
パートや契約社員として働く女性が多く、企業の業績が悪化したときに切り捨てるのが容易だからだ。
国民の半分
日本の年功序列や男性中心の社会の中で、
1億2600万人の国民の半分である女性の活用は遅々として進まない。
労働力の半分しか利用しないというのは経済学的に最悪だ。
日本は生活水準を上げるために、使われない橋やダムや道路を作り、金利をゼロにしている。
一方で、女性という大きな集団の才能を使いこなすことには消極的だ。
ボブリース氏は「女性の立場がここまでしか改善していないと思うと残念だ」と言う。
ボブリース氏のように声を上げる女性が、日本にはもっと必要だ。
男性の指導者らが女性の地位向上のために闘ってくれると日本女性が期待するなら、それは間違いだ。
本物の変化を求めるなら、女性たちは日本の経済界や政治システムの中でもっとその声が尊重されるよう、
要求しなければならない。
それが、日本が能力主義社会になる鍵だ。
社会的規範というのは力の強いものだ。
そして、日本の社会規範とはつまり、「出る杭は打たれる」ということだ。
性差別はしばしば、波風を立てたくない、スキャンダルになったときその中心になりたくないという恐れから、
表ざたにされずに終わる。
波風を立てよう
しかし、女性は波風を立てるべきなのだ。
それも大きな波風がいい。
日本の性差別は、修正不可能な問題のように思われがちだ。
それを口にすると、人々は分かったようにうなずいて肩をすくめる。
日本では、履歴書に写真を添付すること、生年月日を記すことが当たり前になっている。
東京の痴漢に対する地下鉄会社の解決策が「女性専用車両」という隔離策であることに
疑義を呈する声もほとんどない。
小説と映画の世界では「プラダを着た悪魔」だが、ボブリース氏のケースは「悪魔のようなプラダ」だろう。
しかし、ボブリース氏も同意するように、これは同氏1人の問題ではない。
世界3位の経済大国 の将来にかかわる問題だ。
そして、好むと好まざるとにかかわらず、
ボブリース氏はこの経済ドラマでの自分の役が「スタイネム」だと感じている。
同氏の新しい名刺には「ファッショニスタ・フェミニスタ(ファッションとフェミニズムの専門家)」とある。
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラム ニストです。)
(このコラムの内容は同氏自身の見解です。)
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