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プレジデント 10月21日(木)10時30分配信】
 
この不景気の昨今、可能な限り人件費を低く抑えるため、
安価な労働力を活用して乗り切りたいと考える経営者は多いだろう。
 
一方、「派遣切り」「雇い止め」に象徴されるように、
いわゆる非正規労働者への冷遇ぶりが大きな社会問題となっている。
パートタイムやアルバイトの従業員、契約社員も、正社員と同じ「労働者」。
それが法の建前である。
人道上も、社の事業に協力・貢献する者に対しては、それ相応の対応で報いるべきであろう。
では、会社を辞めるパート等に対して、退職金を支払う義務はないのだろうか。
 
退職金については、支給するか否かは使用者(雇い主)の裁量によるのが原則である。
賃金ではなく、恩典的な給付だと考えられているからだ。
 
しかし、社会保険労務士の佐藤敦氏は、パート等に対し、
会社が退職金を支払う法的義務が生じる場合もあると指摘する。
大きく分けて「就業規則に退職金の適用範囲が明確に定められていない場合」と
「パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)八条を根拠にする場合」の、
二つのケースが考えられるという。

まず前者のケース。
パート等へ退職金を支払わずに済ませる場合、就業規則に「適用除外」の定めを置く必要がある。
 
たとえば、
「この(退職金)規定は、……パートタイマー、派遣社員その他正社員でない者については適用しない」
などの但し書きを加えておくといい。
この適用除外を定めない、あるいは定めても区別が明確でない場合は、労使間でトラブルが生じる可能性がある。
パート等と正社員とで労働条件が異なる会社なら、別個にパートタイム向けの就業規則を作成したほうがいい。

「特に常時10人以上の労働者を使用する雇い主は、就業規則の作成義務を負う。
一部の労働者につき適用除外にしておきながら、
その範疇の労働者に向けた就業規則を定めない雇い主は、
労働基準法違反の罪(30万円以下の罰金刑)に問われる可能性がある」(佐藤社労士)

では、パート等を就業規則の適用から除外する規定はないが、
そのパート従業員を採用する際、口頭で「退職金は支給しない」旨を通知し、パート側も同意した場合はどうか。
「労働契約法一二条は『就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、
その部分については、無効とする』と定めています。
よって、当該同意事項も無効。パートが仕事を辞める際、雇い主は退職金を支払う必要があります」(同)

後者は、正社員と同じような条件で働くパート等に対し
「差別的取り扱い」をしないよう事業主に義務づけるパートタイム労働法八条を根拠として、
正社員と同様に退職金を支払うべきだとする場合だ。
 
しかし、佐藤社労士は「パートタイム労働法八条を発動させるには、とても高いハードルが待っている」と話す。
 
正社員と同一の労働条件といえるためには、実質的に期間の定めなく働いている必要があるため、
契約が切れるごとに反復更新が求められる。
また、職務の内容や長期的な人材活用の仕組みなどが同一といえるか否かは、
主に「転勤の有無」が基準となるという。
 
パートタイマーやアルバイト、派遣社員が転勤を命じられる場面は、珍しい部類に入る。
仮に転勤の対象となるとしても、正社員には全国転勤があるが、
パートはエリア限定の転勤という扱いならば、同一の人材活用の仕組みといえない。
つまり、退職金を支払わない差別的取り扱いをしても合法となるのである。

パートタイム労働法の趣旨が真に活かされるためには、さらなる法改正や運用改善が必須だ。

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