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【葉玉匡美弁護士/うっかりインサイダー論/会社法であそぼより・・・】
内閣府 規制改革会議 金融タスクフォース
というところで
インサイダー規制について改革すべき点
について語ってきました。
その模様は、そのうち規制改革会議のHP(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/)に載るでしょうが、皆さんにも、ぜひ知っておいていただきたいので、ブログネタにさせてもらいます。
私は、検事としてインサイダー規制の捜査に携わりましたし、弁護士になってからも、沢山の企業から、インサイダー規制についてのご相談を受けましたので、インサイダーについては、裏表知っています。
始めに断っておきますが、私は、インサイダー規制は当然必要であり、悪い奴については、課徴金を強化するのも、罰則を強化するのも、どんどんやってもらいたいと思っています。
他方、現状では、インサイダー規制が形式犯であるため、
上場企業の普通の役職員が、インサイダー取引に該当しているという意識もないまま、インサイダー取引をしてしまうという「うっかりインサイダー」のリスクがあまりにも高いとも感じます。
自動車を運転してスピード違反をするのは、本人も、悪いと分かってやっているので、犯則切符を切られるのはしょうがないのですが、うっかりインサイダーの場合は、本人に何の罪の意識もなければ、儲けるつもりもないのに、インサイダー取引の構成要件に該当してしまうので、誤解を恐れずに言えば現行のインサイダー規制は「犯罪者製造マシーン」になりかねないというのが実感です。
普通の人が、普通のことをやって、犯罪構成要件に該当してしまうというのでは、法制度としても、非常にまずいので、社会の変化に合わせて、インサイダー規制も緩和すべき点は緩和することも必要です。
そこで、私が、規制改革会議金融タスクフォースで、いくつかの改革案を提案しました。
1 子会社の解散は、軽微基準を設ける
(理由)上場会社自体が解散するに軽微基準がないのは当然だが、
子会社の解散をそれと同視する理由はなにもない。
2 合併等の決定事実の効力発生日及び公表予定日が6か月以上先である場合には、インサイダー規制をかけない。
(理由)準備についての決定により、インサイダー規制が生ずるという現行法では、日常的にM&Aの検討をやっている現在の上場企業の担当者は、インサイダー規制が解ける期間がない。そもそも、海のものとも山のものとも分からない段階で、インサイダー規制をかける必要はないし、効力発生日も公表予定日も6か月以上先ならば、その間の株価変動のリスクを犯してまで、その重要事実をもとにした売買を行うことは少ない(重要事実と売買との因果関係が希薄になる)。
3 自己株式の処分は、売買等から除外する。
(理由)インサイダー規制ができたころと違って、自己株式の処分は、損益取引ではなく、資本取引になったのだから、インサイダー規制の対象とする理論的根拠が希薄になっている。しかも、募集株式にせよ、合併にせよ、自己株式の処分は、新株発行と同様の手続によるから、新株発行と同視すべきであり、通常の売買とは性質が異なる。
4 担保権の実行を売買等から除外する。
(理由)担保権の実行は、債務不履行に起因するものであり、重要事実を知っていることと担保権の実行との間に因果関係がないのだから、売買等に含める必要はない。
5 自己株式の取得について、現行よりも適用除外の範囲を広げる。
(理由)自己株式の取得は、ROEを高めるのため等に有益な資本取引であり、取得手続も法定されているから、不公正な取引に利用されるリスクは小さい。
そもそも、重要事実を知っている者が、その重要事実に起因して株式の売買を決定することを防止するのが、インサイダー規制の趣旨なのだから、重要事実を知らない株主達が株主総会で取得を決定し、取得期間も一定の範囲に制限した場合には、仮に、取締役が、他の重要事実を知っていたとしても、株主総会の決議に従って取得する行為をインサイダー規制の対象とすべきではない。
6 役職員持株会の適用除外要件を広げる。
(理由)持株会に加入したり、拠出金を増額することをインサイダー取引と認識している役職員は、あまりにも少ない。また、持株会は、通常、長期間にわたり、定期的に、一定額で、株式を購入し続けるものであり、ある重要事実に起因して利益を得るようなインサイダー取引には向かない。100万円以内ならば、一律、適用除外にするか、もしくは、加入後、1年以内には、株式の引出ができないことを条件に加入した場合には、適用除外すべきである。m
7 第三者が、インサイダー規制を解除できる方策をもうける。
(理由)現在は、会社が公表しない限り、インサイダー規制が解除されないため、第三者が一旦重要事実を知ってしまうと、会社が公表してくれない限り、一生、その会社の株式を売買できない。これは、不合理であり、個人の財産権に対する過度の制限である。
8 インサイダー取引をした者が、調査や捜査による発覚前に、自首した場合には、課徴金を課さないことができる旨の規定を置くべきである。
(理由)うっかりインサイダーをした者が、一番恐れているのは、公表であり、マスコミである。課徴金が減額されても、公表されるのでは、あまり意味がない。刑事罰ですら、起訴猶予があるし、独禁法にリニエンシーがあるのだから、インサイダー取引にだって同様の制度を設けるべきである。
その他にも、いろいろと提案しましたが、
私の主眼は
うっかりインサイダーにより普通の人が苦しむ姿をみたくない
ということにつきます。
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