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【記憶は都合よく機能する】

 ★心理学者・内藤誼人(よしひと)氏の言葉から―

 ◎人間は、つらい記憶を頭の中にしまっておくのが苦痛である。

  そのため、どれほどつらい経験をしても、しばらくするときれいに忘れてし
  まうようにできている。

  これを「記憶の楽観作用」と呼ぶ。

  記憶というのは、まことに都合よくできていて、つらい経験はさっさと忘却
  するようになっているのだ。

  楽しいことだけ、記憶にとどめておくようになっているのである。
  つらい経験はさっさと忘れてしまうにかぎるのだが、そうなると、せっかく
  の経験から、学びとれないという困ったことも起きる。

  「お前は、何度同じことを言わせるんだ!」
  「お前は、この前も同じ失敗をしたぞ!」と上司に怒鳴られてしまうのは、
  記憶の楽観作用が悪い方向に機能してしまったためである。

  つらい経験をしたら、本来は、何かを学ばなければならないのに、きれいに
  忘れてしまうのであろう。

  その点、不安な人は、一度でも懲りたら、それを忘れない。

  つらいことを何度も反すうして考えるので、記憶にしっかりと定着し、忘却
  させないようになるのである。

  しかも、不安な人は、メモや日記をつける習慣があり、なおさら忘れにくい
  という特徴もある。

  スコットランドにあるグラスゴー・カレドニアン大学のエレイン・ダンカン
  は不安な人ほど日記をつける習慣があることを突き止めた。

  しかも、日記をつけている人の66%は古い日記を捨てずにとっており、
  そのうちの88・7%は時おり読みかえしたりもしているという。

  不安な人が、つらい経験も忘れないのは、記録をとって、しかもその記録を
  何度も読みかえすことで、苦い記憶、つらい記憶も思い出すからである。

  彼らはつらい経験を思い出すから、そこからいろいろなものを学びとれるの
  だと言えなくもない。

  普通、つらい経験をした人は、「酒でも飲んで、きれいに忘れちゃおう」と
  思うものである。精神的には、そちらのほうがずっとラクである。

  しかし、不安な人は、つらい経験をしたことをきちんと日記に書き留めて
  おく。

  書き留めることで、自分なりに反省し、将来的に二度と同じ過ちをくり返さ
  ないようにするのである。

  何度、叱られてもケロッとしている人は楽観的人に多い。

  彼らは、たしかに気楽なのかもしれないが、忘れっぽくて経験から何も学び
  とれないというデメリットがあることを考えると、楽観性が絶対によいとは
  言い切れないのではないだろうか。

  (参考文献:内藤誼人著 「『不安』があなたを強くする」 廣済堂出版)

________________________________________

 *不安があるから、人は学び強くなる。
  心理学者でもある著者は、そう指摘します。

  不安な気持ちが起きることは、むしろ健全であるという証明とも言えます。

  ただ、不安になり過ぎると、不安から学ぶということができなくなります。

  不安という感情を、もっていないと落ち着かないというケースもあります。
  この状態が、日常化すると、強迫観念も増していきます。

  結局、生きていることそのものがつらくなるという状態です。

  そうならないためにも、不安であること、不安になることを恐れないで、
  不安な中にも、自分が強くなれるきっかけを見つけることです。

  日記の活用は効果があると言われています。
  「いいこと日記」を書く人もいます。

  要は、日記は改善のためのツールであり、自己肯定のツールとも言えます。

  自分に合った、不安への対処法を持っておきたいものです。


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