全体表示

[ リスト ]

 
夏目幸太郎の葬儀も相模屋の全面協力の上で、幸一郎に恥をかかぬ様にとの配慮からか盛大に行われ、重鎮でもある花井も姿を現わした。
 
幸一郎に挨拶をし、焼香を澄ませると翠雲に近寄り、
「御庭番筆頭家老の任命式が、明日、忠輝様が同席の上で行われるが、お主の後釜に誰を据えるか、良い人材が見つからぬ。誰ぞ、推薦したい者はおるかな・・・」
「この様な席で、申し上げにくいのでは御座いますが、是非、夏目幸一郎様を御願申し上げます」
「改易された者の子を、直ちに御庭番に召し上げるとは・・・」
「其処は、花井様の御力で、お願い申し上げます」
「翠雲、お主の申す人材を登用するとなれば反発も起きようぞ」
「其処を曲げて、是非にお願い致します」
 
花井は、翠雲の申し出に渋い顔をしたが、この申し出を受ければ、翠雲は懐刀になるに違いないと読み、翠雲の申し出を受け入れたのである。
 
夏目幸太郎の葬儀も無事に終わり、その夜、幸一郎との話しの中で、御庭番として推薦しておいた、と幸一郎に伝え、幸一郎は翠雲の言葉を驚きとして受け入れた。
 
翠雲が此れほどまでに幸一郎に梃入れをしたかといえば、赤壁には見当たらぬ文武両道の逸材であり、譬え、高田を後にした後にも、翠雲の息の掛かる者を残せば、何れは己と高田藩との橋渡しになるであろうとの考えであった。
 
「幸一郎様は、下僕、侍女も郷へ帰された様子、何かと不便で御座ろう。身の回りの世話をする者を使わしたいが如何であろうか・・・」
 
翠雲と幸一郎との話に同席していた三姉妹は、己の身の上の話しをしているものと思っておらず、話を冷静に受け止めていた。
 
「三人の姉妹の内で、誰か屋敷に残したいと思うが、何れの者がよいかな・・・」
翠雲の言葉を聴いた三姉妹は、翠雲が、幸一郎の元に間者として送り込む者を選ばす選択を始めたと気が付いた。
 
幸一郎は、三姉妹を恥ずかしそうに見、蓮に話し掛けた。
「名は、何と申す」
この一言で蓮が幸一郎の目に留まった事は確かであった。
 
「蓮、其方が気に召した様じゃ。幸一郎様の身の回りを頼むと致す」
 
蓮は、何かを言い掛けたが、翠雲は、凛に、下僕として、太郎座に人を寄越す様に伝えた。
 
 
幸一郎は、何から何まで翠雲の世話になる事を躊躇わず受け入れ、己の立場を理解しようとしていた。
 
城内での要職の世話まで推薦し、両親の悲惨な死より、新たな道標を示された事で、生きる勇気が湧いたのも事実であった。
 
 
多くの重臣が居並ぶ中、翠雲と幸一郎は会議の最中顔を出し、多くの重臣が幸一郎の登場で騒めき始めた。
 
改易を申された夏目家の嫡子が姿を見せ、それもあろう事に、父親と同じ役職に就くと思っておらずいたが、総てが花井に由る配慮と受け取り、重鎮としての花井の大きさに改めて驚きを隠せないでいた。
 
忠輝が着席し、花井の申し出に忠輝は、翠雲に委任状を渡し、幸一郎に対しては、精進致せ、の言葉を残し、退席した。
 
 
任命式、新たな屋敷への引っ越しも無事に終え、蓮は、翠雲の下を去る事となったが、間者としての働きを窺うため、翠雲の屋敷を訪れた。
 
翠雲の部屋には、姉である凛と涼がおり、蓮を嫁に出す気持ちが起きたのか、一言も口を開くことなく、翠雲と蓮を見守っていた。
「蓮、幸一郎様はお主を気に入り、身の回りの世話を頼んだのだ、頼んだぞ」
「あの・・・、身の回りの他に・・・」
「他にとは、柳生より幸一郎様を御守り致すのが役目である。他にとは・・・」
「間者としての役目は・・・」
「余分な事を致すな」
 
翠雲のこの言葉を聴いた凛は、翠雲が蓮に託そうとした事は、蓮さえ良ければ、幸せになって頂きたいとの願いから出た言葉であり、蓮の父親の心情であると思ったのだ。
 
だから、幸一郎を役職につかせ、将来の道を与えたのだとも思いを馳せた。
 
 
蓮が、幸一郎の元で暮らし始め、翠雲は、御庭番筆頭家老の要職を授かった事で、幸一郎と共に三の丸に姿を現わし、天土、太郎座と此れからも起こるのであろう柳生との戦いに於いての打ち合わせを行い、幸一郎を太郎座の元に残し、翠雲と天土は、地下蔵があるとされる階段を下り始めた。
 
至る所に天土の配下が配置され、厳重な警戒がなされていた。
 
見張り役の者は、翠雲の顔見知りであり、御庭番筆頭家老に昇進した翠雲に礼を以って迎い入れた。
 
地下への階段を下り終え、ひんやりとした通路の突き当りに鉄格子による扉が見え、見張りの者が事前に鍵を開けていたであろう、翠雲と天土の姿を見るや、地下蔵へ案内した。
 
「翠雲、この地下蔵には何も無い」
その一言を翠雲に述べた後、案内した者に頷き、更に、その先へと案内され、壁と思われる扉を開け、その先には新たな階段が見えた。
「この先に、今一つの地下蔵がある」
天土の説明に翠雲は頷き、再び階段を下りて行くと、その先には、鉄格子の扉に守られた地下蔵が見えた。
 
鉄格子の扉が開けられ、翠雲と天土は地下蔵に入り、道案内の者が備え付けの松明に明かりを灯すと、幾つもの木箱が翠雲の目に飛び込んだ。
 
すると、天土が、
「城に隠された秘密の根源じゃ。では・・・」
天土は、隠された秘密を翠雲に見せた事により、御庭番としての役職を全うする様に暗黙に語ったのだ。
 
 
翠雲は、高田城の秘密を見せられても別段驚きもせず、ただ漠然として受け入れたに過ぎなかった。
 
其の訳は、如何に信用できる者として高田城に迎い入れたのは確かではあったが、城の秘密である地下蔵を、そう易々と見せる方がおかしくもあり、疑いの目を持つのは当然と思えた。
 
天土は、金塊が地下蔵に眠らせていると匂わせたのだが、金塊がその場に置かれているならば、地下蔵に眠る金塊の箱を開け、実物を翠雲の目に曝すのでなければ信用できない話しであった。
 
その様な所業に出ない事には、お主を信用してはいないに繋がる行為であり、此の読みは、翠雲の勘繰りであるのかも知れない。
 
依然、金塊の所在は闇の中であると思われ、何れかに在るかは、翠雲はどうでも良い事であった。
 
だが、頭から金塊の所在を拭き払おうとすればするほど金塊の在処を知りたいと思うのが人情であり、その先を突き止めなければ気が収まらないのも人である証であった。

.
hfmjr376
hfmjr376
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

ブログバナー

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

コンタクトレンズで遠近両用?
「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」
無料モニター募集中!
お肉、魚介、お米、おせちまで
おすすめ特産品がランキングで選べる
ふるさと納税サイト『さとふる』
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事