全体表示

[ リスト ]

 
翠雲一行が、三国街道を江戸に向け旅を始めたとの報告を受け取った列堂は、翠雲が城より異変を告げる使者と会っても、直ぐに引き返す事が出来ない距離を考え、高田城三の丸へ総攻撃を掛ける時間を割り出していた。
 
その夜、一人の配下の知らせが列堂の下に届き、翠雲は、武蔵国に入った、と告げたのだ。
 
列堂は、配下を前に、本日、決行する胸を伝え、寝静まった高田城下に間者を放ち、城方の動向を探り始めた。
 
「行くぞ」
配下にその様に告げた列堂は、総勢五十名の配下の先頭を切り、高田城を目指した。
 
城下の侍屋敷を抜け、三の丸に近づくには、南側より攻め上がるのが一番の早道と知っていたが、目の前には幅の広い堀が設けられており、背負っていた板を下ろし、板に仕掛けられた紐の先を引っ張ると、やがて板は、堀に浮かんだ橋となった。
 
その上を音もなく堀を渡り切り、土塁に取り付くや城壁に向けて鈎縄を投げ、一気に三の丸に通じる中庭に出た。
 
城内は不気味なほど静まり返り、歩哨が時折巡回する程度ではあったが、騒がれては不味いと見たのか、歩哨が巡回を行うのを見計らい、二名程の歩哨の後ろより回り込み、左手で歩哨の口を塞ぐや、右手に持った飛苦無で首の根元に突き刺した。
 
歩哨の遺体を木の根元に隠し、本丸に通じる橋を左手に望み乍ら背を低く保ち、三の丸入口付近に到達した。
 
列堂は、この様に簡単に忍び込めると思っておらず、必ずや、城内を守る忍衆が待ち構えていると思っていた。
 
三の丸の前には、五、六名の番兵が立っており、弓を持っている配下に合図を送ると、弓の弦を引き絞る配下の姿に目を落としたが、何か嫌な予感が走った。
 
配下の者が、矢を放つ直前であった。
 
闇夜を切り裂く矢羽の音がし、当に、矢を放つ構えを見せていた者を狙い打ちしたのだ。
 
「伏兵」
思わず叫んだ列堂である。
 
思えば、当然の如く、此れだけの人数を揃え城内に侵入すれば、監視の目に触れずにこの場に立っている事さえ不思議な事であった。
 
その場に倒れ込んだ仲間を茫然と見ていた配下は、矢羽の音がした方向を見つめ、次第に木の根元の辺りから上へ目をずらしていくと、木の上に黒い影が幾つも見え、その影に向い矢を放つ様に命じたが、幹、枝が邪魔になり影に届く矢は見当たらなかった。
 
ならばと、列堂は、素早い動きで右手を木々の方向へ示し、その手の動きに生じて十名程の配下が音もなく動く。
 
肉弾戦に持ち込めば多勢に無勢で、明らかに有利な立場に持ち込めると確信した。
 
樹上の敵を追い落とすのは簡単と見ており、目を三の丸に戻した。
 
城門の前で騒ぎ出した番兵は、明らかに応援を要請するかの様に城門を三回叩き、すると、城門の上に人影が現れ、暗闇ではあったが、火矢を用意する姿が目に留まり、配下に弓を城門に打ち込む様に命じ、素早く標的を変更した弓隊は、城門に向け矢を放ち始めた。
 
城門からの火矢が地に突き刺さる前に城門に達し、一気にケリを付けるべき、列堂の右手が素早く動き、放つ弓隊をその場に残し、残る兵士は列堂の背を追い駆けるかの如く城門の下に到達した。
 
笠間九兵衛が率いる別行動隊が、一斉に用意していた鉤縄を城郭目掛けて投げ入り、縄を強く引き絞り安全を確認し、素早い動きで縄を伝い城門の上に達する者が続出した。
 
火矢を放つ者へ攻撃を開始した九兵衛は、難なく敵方の者を討ち取り、下にいる列堂に合図を送り、城内へ侵入を果たすと城門を内側から開き、列堂を招き入れた。
 
城門の前に十名程見張りの者を残してはいたが、やがて、樹上の敵を目指した一隊が戻り、列堂の前に勢揃いした。
「如何致した・・・」
「我等の動きを見て、逃げ去りました」
 
列堂は、この時、怪しむべきであったのだが、勝ちに乗った脳裏には、城内のお宝の存在に向いており、如何に素早く証拠の品である金塊を盗み出し、引き上げるしか考えていなかった。
 
夏目幸太郎から聴き出した、金塊は地下蔵に眠る、が蘇り、地下蔵への入口を捜索させ、二階、三階からの攻撃に備えた。
 
「お頭(列堂)、地下への入口が見つかりました」
配下の報告に九兵衛を差し向け、己は城門近くで待機していた。
 
 
笠間九兵衛は、地下蔵の入口に到達し、用意しておいた松明に点火するや、地下蔵に侵入を果たした。
 
松明で通路を照らしながら進み、やがて、金塊が隠されていると思われる蔵の前に到達した。
 
厳重に鍵が掛けられてはいたが、鍵を壊し蔵の中に侵入し、詰まれた木箱を目にした。
 
「金塊が詰まった木箱である」
その様な思いが九兵衛の思い込みであろうか、重い木箱の一つを配下数人がかりで蔵の入口に運ばせ、木箱の蓋を開けさせ、中を検めた。
 
松明を近づけ、中に詰まった目映いばかりの黄金色を目にした。
 
所が、詰まっていた物は金塊ではなく、小判であった。
 
今更、小判を持ち帰っても何の意味もなく、証拠となる金塊を拝むまで、次なる木箱を蔵より運び出す様に命じた。
 
 
列堂は、城門の所で配下に指図しており、九兵衛からの吉報を待っていた。
 
九兵衛の配下が伝言を持ち帰り、次々と齎される報告に耳を傾けてはいたが、金塊の発見は届かず、苛立ちを隠し切れずにいた。
 
列堂の脳裏に浮かんだのは、此れだけの大人数で侵入したのに似合わぬ中庭の静けさであり、当然、樹上で矢を放ち、逃げ去った者達が城内へ報告に走る様子が見られない事であった。
 
城内へ報告に走れば、多くの兵士が騒ぎを嗅ぎ付け、三の丸へ来る筈なのが、一向に姿を見せないのである。
 
列堂の下から九兵衛へ使者が派遣され、一刻も早く金塊を見つけ出す様に催促し、今にも二の丸、本丸から駆け付けるのであろう敵の姿を監視し、二の丸から三の丸へ到達するには堀に掛った橋を渡るか、本丸から駆け付けるのであれば中庭を通り、三の丸に到着せねばならないと読んでいた。
 
大部隊を招集し、三の丸に駆け付けるには相応の時間を要すると読んでいたが、それにしては初期の戦いを念頭におけば、余りにも押し寄せて来る時間が長く感じていた。
 
ふと脳裏に浮かんだ事は、九兵衛の知らせに由れば、幾つかの木箱を開けて見たものの中身は小判でしかなく、金塊は見当たらぬとの報告であった。
 
「蔵の奥深く探せ」
命じたものの、夏目幸太郎が申した言葉を今一度、此の場で思いだしていた。
「金塊は、恐らく地下蔵に隠されていると思われます」
 
果たして、夏目幸太郎は、地下蔵に眠るとされる金塊を目にした事があったのであろうか、という疑問である。
 
もし、金塊を地下蔵で見たのならば、思われます、の言葉を使うことなく、あります、とはっきり口にする筈で、曖昧だからこそ、あります、の言葉を避けた。
 
「ならば、金塊は本丸の地下蔵に隠されているというのか、今更、本丸に攻め込む事など不可能に近く、もし、此の侭、三の丸の地下蔵に金塊が眠っていなければ・・・、己の命と引き換えに・・・」
列堂は、焦り始めていた。
 
本丸、二の丸から敵の軍隊が駆け付ける様子が見られない今、時間を掛けてでも二の丸の地下蔵を捜索する以外手の打ちようはなく、城門から中庭を見つめていた。
「うっ、何やら音が・・・」
 
三の丸を取り囲む城壁が崩れたのか、開いたのか、判断に苦しむほどの物音がし、黒い影の集団が動き始めたのを目の当りにした。
「罠だ」
 
その様に悟った列堂は、黒い影の集団が動き始める前に配下に命じ、地下蔵にいる九兵衛に退却する様に伝え、自らは、数名の配下を率い、素早く三の丸城門前より姿を消した。

.
hfmjr376
hfmjr376
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

ブログバナー

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
お米、お肉などの好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!
コンタクトレンズで遠近両用?
「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」
無料モニター募集中!
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事