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正種の報告で、分厚い城壁の中に隠れていた完全武装の兵士の一団が動き出す機会を狙っており、忍び込んだ者が三の丸地下蔵に到達し、時を掛けて捜索する時間を与え、今、当に動き出したのだ。
 
鎧武者の一団は、分厚い城壁の中を通り、次々と三の丸に送り込まれ、忍び込んだ不届き者の制圧に乗り出したのだ。
 
先発隊とされる武装集団が勢揃いし、各々の手には黒塗りの盾を持ち、その後方には槍隊、弓隊が控えていた。
 
隊列を組み、三の丸城門に到達した時、逃げ遅れた侵入者は完全に囲まれた様子ではあったが、何とか脱出する道筋を探すのに必死で抵抗を始めた。
 
矢を放つ者、無駄だと知りつつも刀を抜き払い、武装集団に切り掛かる者もいたが、盾の後ろに控えていた槍隊の一突きで絶命して行く。
 
 
笠間九兵衛への報告が届いたのは、列堂が逃げ去ったのを耳にし、急いで地下蔵より階段を駆け上り、城門の前に辿り着いた時であった。
「お頭(列堂)は、最早、此の場におりませぬ」
 
当然、目の前に布陣している隊列を見れば、配下の言葉は耳に入らず、如何にこの危険な場から脱する事が出来るか、瞬時に考え、三の丸に侵入して来た経路を思い出し、配下を城門に配置し、敵軍隊の迫るのを少しでも遅らせる様に命じた。
 
三の丸城内に戻り、城閣への道を探し出し、其処から城壁の上を伝い、堀脇に到達した。
 
侍屋敷を経て侵入を果たした堀には浮橋が健在ではあったが、己の居る場所よりまだ距離があると見たのか身を中腰にし、浮橋の元に到着した。
 
周囲を見渡し、城内から聞こえて来る騒ぎを他所に、浮橋へ一歩踏み出した。
 
頭上より何か降って来る気配に気付き、上を見た瞬間に、己の身に重い物が落ちて来るのを感じた。
 
良く見れば、荒縄で編まれた網であり、完全に自由な動きが取れない状況に追い詰められたのを知った。
 
其処へ、黒い影の集団が現れ、網を押さえ付けられ、更に、身動きが出来ない状態へとなり、抵抗も何も出来ず、只、黒い影の為される儘であった。
 
腰の得物は奪われ、網の中で両手を縛られると、最早、抵抗を諦め、網の中で座り込んだ。
 
無言の黒い影の一団は、無抵抗と決め付けたのか、網の外に引きずり出された後に足も縛られ、担がれて行くのを黙って任せる他はなかった。
 
 
列堂の配下で逃げ遂せた者といえば極僅かで、完全武装の兵士の前では矢を放てば盾に阻まれ、鎧に身を固めた武者に飛苦無も役に立たず、極稀ではあったが、投げた飛苦無が運よく顔面に命中した物は幾ばかりの成果が認められた程度である。
 
列堂は、危険を逸早く察知し、城を抜け出したが、伴回りといえば三名の配下のみで、何の成果を上げぬまま退却を余儀なくされた。
 
しかし、三の丸地下蔵では金塊を発見する事は出来なかったけれど、高田城三の丸に金塊が無い事を確認したのは唯一の救いであった。
 
 
翠雲が旅発つ前に、天土、太郎座と打ち合わせの後、正種に会い、三の丸に柳生を引き入れる様に伝え、高田城家老である花井義雄に会った。
 
その折、柳生の攻め寄せる気配が濃厚であり、敵が侵入を果たしたならば軍隊を以って成敗したと事を公にし、幕府を牽制する様に申し出、最後に伏兵は、本丸、二の丸より三の丸へ通じる城壁の中に隠れ、仲間の者が敵の侵入を伝えたならば一時を置き、一斉に兵を三の丸に向かわせる事を申し出た。
 
「翠雲、事を公にすれば、高田藩は、幕府に由ってあらぬ疑いを掛けられるも知れぬ」
「追い込まれるのは、柳生を使い、高田藩陰謀説をでっち上げ様とした張本人で御座います。花井様、攻め込んだ侵入者の数を水増しし公表すれば、誰しも幕府が送り込んだ兵であると思い、幕府の弱みを握った事と相成りまする」
其々との打ち合わせを念入りに行った成果であり、正種の下には柳生一門である笠間九兵衛を捕らえており、今後、幕府に対して優位の立場になった事は確かであった。
 
 
正種の手に由り、捕らえられた笠間九兵衛は、厳重な本丸地下牢に手足を縛られたまま放置され、尋問、或いは、拷問を以って白状させられるかと思っていたが、自害を防ぐため食事をする以外は轡をはめられ、何の咎めも受けなかった。
 
正種は、笠間九兵衛が何者か判断できずにいた訳だが、侵入を果たした者の幾人かが捕らえられたと公表すれば、何れかの者が行動を起こすものと見ていた。
 
行動を起こすとすれば柳生以外にない事は確かではあったが、公表する事に意味があり、捕らえた者は誰でも良かったのである。
 
列堂は、高田城より離れた落ち合う場所で城を窺っていたが、追撃の様子は見られず、やっと、仲間の安否が気になりだした。
 
一刻程過ぎた頃、配下の一人が何とか逃げ遂せたのだが、九兵衛の後を追い駆けた一人に過ぎなかった。
 
九兵衛が、敵の忍衆の投げ網に捕らえられたのを物陰から見ており、助けに向かいたい衝撃に駆られていた事は確かであった。
 
だが、助太刀で姿を現わせば、討ち死には目に見えており、其れよりも、この急を列堂に伝える事が先決と判断を下し、九兵衛が担ぎ連れ去られるのを茫然と見送っていた。
 
敵の忍衆がその場を立ち去ったのを確認し、密かに城を抜け出した。
 
「正種様、一人の影を見つけましたが・・・」
「好都合じゃ。仲間が捕らえられた事を告げれば、其れで良い」
 
一人の柳生忍が逃げ去ったのは、正種も承知の上で逃がし、事の事実を仲間に伝える事により、反応を探る算段でいた。
 
城内へ侵入し、狼藉を働いた者を公にする事に由り、他国の大名へ、明らかに幕府の手に由る攻撃であると知らしめ、反感の眼を幕府に向ければ、二度と下手な手は打ち難いと考えての策略であった。
 
九兵衛が捕らえられた事実を胸に秘め、列堂が定めた落ち合う場所へとたどり着いた柳生忍の一人は、九兵衛の身の上を詳しく伝えた後、列堂の反応を見た。
 
列堂は、捕らえられた九兵衛を助けはしたいが、今、事を起こせば城への侵入、囚われた者のその事実を公にされ、其れを知った諸国の大名より非難が集中し、柳生、幕府顛覆の憂き目に合う事は確実で、それらを考慮すれば捕らえられた者を放置するか、或いは、秘密を暴露される前に絞殺するか何れかであった。
 
「回避せねばならぬ」
九兵衛が口を割るとは思えないが、列堂の思いは柳生一族を如何に守るか、この一点であった。
 
その為には、越後高田城で多くの犠牲を余儀なくされ、更に、腹心というべき九兵衛が捕らえられたとなっては、汚名を払拭するどころではなく、自らの地位も危ぶいのである。

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