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その場に姿を現わしたのは敦姫で、侍女らしき者を連れ、家康の見舞いに参ったのだ。
 
敦姫から見舞いの言葉を受けた家康ではあったが、敦姫が連れて来た侍女に気を奪われていたのか、上の空で聴いていた。
「敦姫、連れて参った侍女は・・・」
 
面を伏せていた侍女の顔を見ることは出来ず、苛立つ家康であった。
 
正信も、敦姫が連れて来ていた侍女の名を聴いておらず、正信の近習に由れば、家康に目通り願いたい、の一点張りで、名は伝えていなかった。
 
「大御所様、此方に控えております女子は、大御所様が良く御存知の御方で御座います。面を上げ、お顔を大御所様に御見せ致せ」
 
千姫は、ゆっくりと面を上げ、家康に顔を晒したのである。
 
家康は、千姫の顔を見ても誰なのか思い浮かべる事は敵わず、
「敦姫、何者であるか・・・」
「大御所様、今一度、姫の顔を御覧下され」
 
家康は、苛立ちを覚えたのか、敦姫ではなく、直接、女に問い、名を申せ、と迫った。
 
「御爺様、御久し振りで御座います。御気分が優れぬ御噂を耳に致しましたので、お見舞いに参上致しました。千姫で御座います」
 
千姫の口から名を聴かされ、驚きを隠せないのは家康ではなく、正信であった。
「何故、何故に、千姫をお主がお連れしたのだ・・・。殿、千姫様が、お見舞いに・・・」
 
千姫と名乗った女の顔をじっと見詰めた家康は、幼き頃の千姫を思い出し、その面影を見出した。
 
「解かっておるわ。千、何故に敦姫と参った。お主は、確か、姫路、本多忠刻の元へ嫁いだ筈だが・・・」
「御爺様、其れには深い事情が御座います。大坂城より助けられ、暫らくの間、二条城に身を隠しておりましたが、父上の御命令で江戸へと向かいました。その途中、賊に襲われましたが、ある者の手に由り救われました」
「では、江戸へ到着した者は何者で・・・」
「正信、千が、説明している時に横槍を入れるではない」
「江戸へ到着致しましたのは、私と瓜二つの千代と申す者で御座います。若しもの場合を考えまして、影武者に二条城にて教育を致しました。賊に襲われました時、千代と私との籠が御座いましたが、当初より千代を私と思っていた護衛の方々は、その輿のみ助け、私は危うく賊の手に渡る所を助けられ、一行の者と分かれ離れになりました。私を助けて下さいましたのは、赤壁城主、小太郎様で御座います。小太郎様の優しさに心身ともに癒され、私は、小太郎様の妻になる事を決め、伯母上で御座います敦姫様に相談を致しまして婚儀に至りました」
「千、その様な事が許されると思っているのか・・・」
「御𠮟は、御尤もで御座います。私は、千姫として生きて行く事を捨てた者で御座いますが、御爺様の病状が心配で、敦姫様に無理やり御願い致しまして、駿府に参りました」
 
千姫の話を聴いた、家康、正信は、突然、家康の見舞いに訪れた者が、千姫だと知った驚きは尋常ではなく、千姫が話した事が事実であれば、千姫を名乗った女を処罰しなければならず、思わず絶句した二人であった。
 
「敦姫、この様な申し立て、儂が認めるとでも思ったか、佐渡、敦姫より赤壁を取り上げよ」
「殿、もし、その様な事実が公になりましたならば、敦姫だけでなく、秀忠様の汚点にも関わる問題で御座います。赤壁の件は取り下げ、事を穏便に済ませねばなりませぬ」
「佐渡、妙案が浮かんだ様じゃな」
「はい、秀忠殿には内密に、千姫様を此のまま敦姫の元で暮す手立てを講じなければなりませぬ。翠雲は、別室で控えておりますゆえ、お連れ致します」
「・・・、佐渡に任せる」
 
正信の口より、翠雲の名が出た事で千姫の鼓動は高鳴り、自らの顔を赤らめた。
 
「小太郎様が、駿府に居られる・・・」
千姫は、小太郎に会ったならば、何を話すべきか考えてはいたが、いざ、その時が迫れば、頭の中は真っ白になり、無事でいてくれていた嬉しさか、一筋の涙が頬を濡らした。
 
正信に連れられ、家康の前へ登場した翠雲ではあったが、家康の傍にいる二名の女性を見た時、千姫と敦姫であると認識した。
 
しかし、表情には出さず、家康に再び面を伏せ、
「御呼び頂き、参上致しました翠雲で御座います」
面を上げ、家康の御傍へそぞろ歩きで向い、敦姫と千姫に軽く会釈し、家康の下へと行き、再び面を伏せた。
 

「翠雲、お主は、儂に秘密にし、千姫を娶った。本来ならば切腹を申し渡す所ではあるが、今回の件で手柄を上げ、褒美として許す。今夜は、積もる話もあるであろう、城に泊まるとよい。佐渡より、今後の沙汰は、明日、申し渡す。下がってよいぞ」
 
家康の顔を拝むことなく言葉を聴き、正信に会釈した後、家康の下を離れた。
 
翠雲に続いて、敦姫、千姫が退席し、家康が正信に言い渡したのは、翠雲と千姫の事は公にせず、千姫の化粧料として五万石を翠雲に与える、この様に申し渡した。
 
翠雲が退席後、家康は、正信に高田城三の丸に隠されているとされる金塊は、翠雲が手に入れ、幕府に差し出す様に命じたのである。

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