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反戦の視点・その78 2より続き
◆麻生政権の暴挙と私たちの課題
まず「NO!AWACSの会」と「人権平和・浜松」が4月1日に麻生首相と浜田防衛大臣に提出した要請書から引用する。
◎「破壊措置命令」の撤回と浜松基地のPAC3の秋田・岩手からの撤退を求める要請書 麻生政権は、3月27日、朝鮮による「衛星」発射準備を利用して「破壊措置命令」を出し、「ミサイル防衛」(MD)を発動させました。それにより、部隊を実戦配備し、戦争の開始につながる態勢をとろうとしています。それは排外主義を煽り、外交努力ではなく軍事的威嚇を行使するものであり、このような動きに、私たちは強く抗議し、その撤回と部隊の撤退を求めます。/この命令によって首都圏では、市ヶ谷を中心に朝霞・習志野にPAC3が配置され、佐世保のSM3を持つイージス艦「ちょうかい」「こんごう」なども配備されています。/浜松基地のPAC3は浜松を3月29日の朝に出発しました。迷彩服姿の自衛隊員が実戦を想定して北門に立って警備し、一般車両は警察に規制され、迷彩服を着用した隊員を乗せた47台・4基分のPAC3の軍用車両が基地を出て行きました。それは軍事的大移動でした。/部隊は東名高速から清水港で民間船第1有明丸に乗り込んで仙台に移動し、さらに東北道を使い秋田・岩手に展開するというものでした。ここでは民間の有事動員もおこなわれたのです。/PAC3部隊は秋田の空自加茂分屯地や陸自秋田駐屯地に指揮・通信関係を置く形で、
秋田の新屋演習場、岩手山演習場に配備されました。すでに浜松基地からは「破壊措置命令」の発令を前提に、発令前の3月19日付での特殊車両の通行予告が静岡・秋田・岩手などに通知されています。わたしたちはこのようなPAC3の展開に抗議し、その撤退をここに求めます。/この間、わたしたちはMD導入とPAC3の配備の中止を求めてきました。その理由は、MDやPAC3は新たな米軍の戦争システムへと浜松基地を統合することになり、政治的には憲法を破壊し、日米共同作戦により集団的自衛権が行使され、経済的には数兆円の軍需企業の利権を生み、社会的には基地機能を強化し、宇宙の軍事化とアジアでのミサイル軍拡をさらにすすめるからです。/今回の「破壊措置命令」とPAC3の展開によって、私たちが指摘してきたことが実際に起きようとしています。それは戦後初めての「破壊措置命令」による実戦配備であり、その軍事行動によって、憲法第9条が最初に破壊されることになります。戦力の不保持も武力の威嚇・行使の禁止も交戦権の否認も、実際の軍事行動によって無きものにされます。その運用は米軍からの情報と日米の共同作戦司令部の判断によることになり、浜松基地のAWACSもこのシステムに組み込まれていきます。/今からでも遅くはありません。「破壊措置命令」の撤回とPAC3の撤退をすすめ、ミサイル防衛政策自体を中止すべきです。(要請書の引用ここで終わり)
※ 文中の航空自衛隊加茂分屯地は秋田県の男鹿半島にあるレーダーサイト(基地)。今 回の迎撃態勢では新屋演習場に配備されたPAC3発射の頭脳になった。AWACSは 早期空中管制機。
要請書が指摘する「軍事的大移動」は公然と行なわれた。昨年、東京都心の新宿御苑にMD関連機材を搬入したときは深夜密かに行なったが、今回の迎撃態勢作りはむしろ軍事的デモンストレーションだった。そしてマスメディアはこのパフォーマンスに積極的に協力した。「いざというとき頼りになる」自衛隊の姿を大宣伝したのだ。
この「臨戦態勢」の構築と宣伝が持つ意味は非常に大きい。「北朝鮮の脅威」を煽り、世論に戦時を意識させる大きな役割を果たした。確かに「ミサイル発射秒読み」の行き詰まる興奮は一時的なものだったが、この種のことが繰り返されていけば、脅威への反撃気運は着実に高まっていく。自分の身を守るために自衛隊に協力しなければというムードがかもし出される。それこそ防衛省・自衛隊中枢の政治的ねらいだっただろう。
人工衛星打ち上げロケットの1段目ブースターは日本の領土や領海に落下せず、迎撃は行なわれなかったから、現在のミサイル防衛(MD)システムが実効性のあるものかどうかは明らかにならなかった。もっとも日本の領土や領海への「落下物」を迎撃するといっても、SM3やPAC3をブースターに打ち当てた場合、破片が広範囲に落下してかえって被害を広げる危険性や失敗の確率などについて、防衛省はまったく説明責任を果たさなかった。「PAC3を開発した米軍でさえ、市街地に展開して活用した例はない。迎撃による被害も想定できない武器が何の説明もなく市街地に置かれた」(4月6日付『東京新聞』)。防衛省はただ破壊措置命令による迎撃を大宣伝しただけである。それゆえ迎撃はポーズだけで、防衛省・自衛隊はMDの実効性が衆人環視の下で検証されないよう、打ち上げの成功を祈るばかりだったというのが真相だったのではあるまいか。
しかし「北朝鮮の脅威」の煽動は一定の効果をあげたから、MDの拡充に期待する世論が台頭する下地は作られた。すでに防衛省や自民党はMD拡大論を唱え始めている。三菱重工業幹部の高笑いが聞こえるようではないか。
私たちがなすべきは何より〈脅し・脅される〉関係を解消することを政府に要求することだ。日中間には国交があり平和友好条約が締結されているから、中国が保有するミサイルが日本を襲うことにリアリティを感じる人は少ない。ならば、北朝鮮と一刻も早く国交を正常化すべきである。幸い「日朝平壌宣言」という重要な基礎がすでにできている。宣言に基づく早期国交正常化を政府に求めよう。 〈脅し・脅される〉関係を解消するためには、日米安保条約を破棄して日本から米軍を去らせること、日本政府に南北の統一を妨害させないことも重要な課題である。北朝鮮に対する制裁措置を解除・撤廃し、在日朝鮮人への抑圧をやめることは今すぐなすべきことだ。
また〈脅し・脅される〉関係を解消するためには日本が軍拡をやめねばならない。「専守防衛」をタテマエにしながら、武装ヘリ搭載の小型空母「ひゅうが」を建造するなどという愚行はやめるべきだ。北朝鮮にとっては、米軍や韓国軍のみならず自衛隊という日本軍も脅威なのである。
外交ですべての問題を解決するなら、金食い虫のMDなどに政府予算を費やすことなく脅威は解消し、東北アジアに平和と安定をもたらすことができる。それは私たちが本気で実現しようと思えばやれることだ。安易なあきらめを友とせず、ともに日々努力しようではないか。
(09・4・14記)
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