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(転載歓迎)
反戦の視点・その77
第7回 愚かしい海賊派兵を阻止しよう
─「海賊対処」は始まったが、反派兵の闘いはこれからだ─
井上澄夫
●ソマリア沖の海賊事件概況
〈ソマリア沖の海賊、厳戒避けインド洋へ転進?
アフリカ・ソマリア沖の海賊による商船襲撃事件が3月に入り、同国東方沖のインド洋で急増していることが3月29日、分かった。/海賊は、各国海軍が対策を強化しているソマリア北方沖のアデン湾を避け、警戒体制の手薄な海域に照準を移している可能性もある。/国際海事局(IMB)によると、3月にソマリア東方沖で起きた襲撃は3月27日までに14件で、2月より12件増加。アデン湾は8件で、海賊事件が急増した昨年以来初めて、ソマリア東方沖の襲撃件数が上回った。/欧州軍事筋によると、商船三井の自動車運搬船が襲撃された3月22日には、周辺海域で計4件の襲撃があった。〉
(3月30日付『読売新聞』)
「海賊は、各国海軍が対策を強化しているソマリア北方沖のアデン湾を避け、警戒体制の手薄な海域に照準を移している可能性もある。」とあるが、これは憶測による記述であり、鵜呑みにはできない。「ソマリア東方沖のインド洋」とはソマリアからケニアにかけての沿岸沖の海域で、そこでの海賊事件発生はアデン湾での事件とともにこれまでにも報道されている。同海域を航行する船舶はアフリカ大陸最南端の喜望峰をめぐる航路をたどることが多い。上の記事にある商船三井の自動車運搬船襲撃事件とはこうである。
〈商船三井の船舶、海賊?が銃撃 ソマリア沖けが人なし
国土交通省に入った連絡によると、日本時間の3月22日午後10時10分ごろ、ソマリア沖をケニアに向けて航行中だった商船三井の船舶が2隻の小型船から銃撃された。乗組員は全員フィリピン人。船舶は操舵(そうだ)室の窓ガラスなどに被弾したが、小型船を振り切り、けが人はなかった。/同海域ではしばしば日本の船舶事業者が運航する船などが海賊とみられる小型船から銃撃を受けており、今年になってからは今回が初めて。〉
(3月23日付『日本経済新聞』)
NHKの報道によると、銃撃を受けた船は、船籍がイギリスのケイマン諸島で、東京の商船三井が運航する自動車運搬船「JASMINEACE」(1万3000トン余り)で、3月17日にアラブ首長国連邦で中古車およそ400台を載せ、
ケニアのモンバサ港に向けて航行中、ソマリアの東方沖およそ900キロの海域で襲撃を受けたという。
しかし、仮に海賊が活動領域の重点を「ソマリア東方沖のインド洋」に移しているとしても、派遣された海上自衛隊艦隊がただちに同海域で「海賊対処」活動を行なうことは考えにくい。日本関連船舶の大多数が地中海─スエズ運河─紅海─アデン湾─インド洋─マラッカ海峡経由で航行しているからである。それに「ソマリア東方沖のインド洋」はアデン湾よりはるかに広大で、そこで「海賊対処」の成果をあげることはかなり困難ではあるまいか。
しかしアデン湾での海賊の活動も依然として続いている。
〈海賊 ドイツの補給艦に銃撃
バーレーンに司令部があるアメリカ海軍の第5艦隊によりますと、ソマリア沖のアデン湾で3月29日、ドイツ海軍の補給艦が小型船に乗った海賊から銃撃を受けました。補給艦も小型船に向けて発砲し、さらに周辺にいた各国の艦艇に支援を求めた結果、アメリカ海軍のヘリコプターなどとともに、駆けつけたギリシャ軍の駆逐艦が小型船を追跡し、およそ5時間後、7人の海賊を拘束したということです。また、小型船の中にあった自動小銃やロケット砲を押収したということです。ソマリア沖で活動している各国の艦艇が海賊に襲撃された例はこれまでほとんどなく、アメリカ軍では、海賊は、ドイツ海軍の補給艦を民間の商船と勘違いして襲撃しようとしたのではないかとみています。〉
(3月31日付NHKニュース)
●始まった「海賊対処」
〈海自護衛艦、オマーン到達…まもなく警護活動スタート
防衛省は3月30日、護衛艦「さざなみ」と「さみだれ」が、オマーンの港湾都市サラーラの沖合に到達したことを明らかにした。/5隻の「日本関係船」を対象に初の警護活動をスタートさせる。国土交通省の「海賊対策連絡調整室」には、これまでに計2595隻から警護の希望が寄せられており、同省は、2隻の護衛艦では対応しきれないとして、P3C哨戒機による空からの警護を実施する方向で調整している。/防衛省によると、初の警備対象となる5隻は、いずれも外国船籍だが、国内の船会社が管理しており、うち2隻に日本人が乗船している。
この海域では昨年だけで計111件の海賊事件が発生しており、5隻は隊列になって航行し、前後を護衛艦にはさまれながら湾内を約900キロにわたって西に進み、2日後にジブチ沖に到達する見通し。/警護はそこで終了し、護衛艦2隻は、湾内から湾の外に向かう別の日本関係船団と待ち合わせ、サラーラ沖まで引き返すことになる。2隻は9月ごろまで活動を続けるとみられる。〉
(3月30日付『読売新聞』)
もう一つ大事な情報を加える。
〈事前登録2600隻=ソマリア海域−国交省
ソマリア周辺海域で海上自衛隊による護衛を希望する船は、国土交通省を通じて申請する。同省への事前登録では、向こう1年間に周辺海域を通過する船は、東向き、西向き合わせ約2600隻(うち約300隻は外国会社が運航)。同省は護衛対象となる条件を満たせば、希望に応えられる数とみている。/護衛を受けたい場合は原則10日前までに申請する。/対象は、現段階では(1)日本籍船(2)日本人が乗り組む船(3)日本の会社が運航する船(4)積み荷が日本の国民生活維持にとって重要な船−に限られる。〉
(3月30日付『時事通信』)
実際、3月30日、とうとう「海賊対処」の警護活動が始まった。「防衛省に入った連絡によると、両艦は5隻の日本関連船舶を警護しながらアデン湾を順調に航行しているという。」(3月31日付『東京新聞』)。同日付『朝日新聞』は防衛省提供の写真を掲載しているが、それには隊列を先導する護衛艦「さみだれ」と民間船舶2隻が映っている。記事にこうある。「護衛艦2隻は、ソマリアの隣国ジブチの港など補給拠点に任務を続ける。部隊は4カ月前後で交代を繰り返していく」。海自艦隊の拠点は、ジブチのジブチ港、イエメンのアデン港、オマーンのサラーラ港とされている。そこで日本政府はジブチと地位協定を結ぶ。
〈海賊対策で協力 ジブチと一致
アフリカを訪れている中曽根外務大臣はジブチのシライ国際協力担当相と会談し、海賊による被害を防ぐため、両国が連携して取り組んでいくことで一致しました。/この中で、中曽根外務大臣は「ソマリア沖の海賊対策では、護衛艦や航空機の燃料や食料の補給など、ジブチの港などを活動の拠点としていきたいと考えている。日本としてもそれを踏まえて、可能なかぎりの経済支援をしていきたい」と述べました。これに対し、シライ国際協力担当相は「海賊対策をめぐる日本の海上自衛隊の活動が有益かつ円滑に進むように、あらゆる支援をしたいと考えている」と応じました。また両氏は、ジブチで自衛隊員が活動するにあたって、隊員の身分を保障する地位協定を締結することで合意し、近くジブチの外相が来日して署名式を行うことになりました。〉
(3月22日NHKニュース)
中曽根外相は「ジブチの港などを活動の拠点としていきたいと考えている。日本としてもそれを踏まえて、可能なかぎりの経済支援をしていきたい」とのべているが、これは海自に活動拠点を提供すれば経済支援するということで、要するに便宜供与を金で買い取るということだ。あまりの露骨さに呆れるばかりである。
ただ注意したいのは、「ジブチの港など」という表現で、これにはP3C哨戒機の基地提供も含まれている。地位協定については次の記事が参考になる。
〈海賊対策でジブチと公文交換へ=自衛官の活動規定
海上自衛隊の活動拠点となるジブチと自衛官らの地位に関する交換公文を取り交わすことが3月23日、固まった。4月上旬にも同国のユスフ外務・国際協力相が来日し、中曽根弘文外相と署名する。/交換公文には、公務中に事故が発生した場合のジブチ側裁判権の免除や、問題発生時の両当局間の協議会設置、日本側が持ち込む物資の免税規定などが盛り込まれる。〉
(3月23日付『時事通信』)
自衛官が起こした公務中の事故について「ジブチ側裁判権の免除」は日米地位協定で米軍に保障されている特権で、日本政府は同じ特権をジブチに認めさせようとしている。
日本海軍(海自)がはるか彼方のアデン湾で日本関連船舶を警護する。そのためにジブチと地位協定を結んで海自の拠点を確保する……。少し前なら考えられもしなかった事態がついに現実になったのだ。しかし問題の大きさと深さを忘れないために、ここで話を半月ほど前に戻したい。
【反戦の視点・その77】 第7回 愚かしい海賊派兵を阻止しよう2に続く
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