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(転載歓迎)

反戦の視点・その77 

第7回 愚かしい海賊派兵を阻止しよう
     ─「海賊対処」は始まったが、反派兵の闘いはこれからだ─

                     井上澄夫 

●ソマリア沖の海賊事件概況

 〈ソマリア沖の海賊、厳戒避けインド洋へ転進?
 アフリカ・ソマリア沖の海賊による商船襲撃事件が3月に入り、同国東方沖のインド洋で急増していることが3月29日、分かった。/海賊は、各国海軍が対策を強化しているソマリア北方沖のアデン湾を避け、警戒体制の手薄な海域に照準を移している可能性もある。/国際海事局(IMB)によると、3月にソマリア東方沖で起きた襲撃は3月27日までに14件で、2月より12件増加。アデン湾は8件で、海賊事件が急増した昨年以来初めて、ソマリア東方沖の襲撃件数が上回った。/欧州軍事筋によると、商船三井の自動車運搬船が襲撃された3月22日には、周辺海域で計4件の襲撃があった。〉
          (3月30日付『読売新聞』)

 「海賊は、各国海軍が対策を強化しているソマリア北方沖のアデン湾を避け、警戒体制の手薄な海域に照準を移している可能性もある。」とあるが、これは憶測による記述であり、鵜呑みにはできない。「ソマリア東方沖のインド洋」とはソマリアからケニアにかけての沿岸沖の海域で、そこでの海賊事件発生はアデン湾での事件とともにこれまでにも報道されている。同海域を航行する船舶はアフリカ大陸最南端の喜望峰をめぐる航路をたどることが多い。上の記事にある商船三井の自動車運搬船襲撃事件とはこうである。

〈商船三井の船舶、海賊?が銃撃 ソマリア沖けが人なし
 国土交通省に入った連絡によると、日本時間の3月22日午後10時10分ごろ、ソマリア沖をケニアに向けて航行中だった商船三井の船舶が2隻の小型船から銃撃された。乗組員は全員フィリピン人。船舶は操舵(そうだ)室の窓ガラスなどに被弾したが、小型船を振り切り、けが人はなかった。/同海域ではしばしば日本の船舶事業者が運航する船などが海賊とみられる小型船から銃撃を受けており、今年になってからは今回が初めて。〉                
          (3月23日付『日本経済新聞』)

 NHKの報道によると、銃撃を受けた船は、船籍がイギリスのケイマン諸島で、東京の商船三井が運航する自動車運搬船「JASMINEACE」(1万3000トン余り)で、3月17日にアラブ首長国連邦で中古車およそ400台を載せ、
ケニアのモンバサ港に向けて航行中、ソマリアの東方沖およそ900キロの海域で襲撃を受けたという。

 しかし、仮に海賊が活動領域の重点を「ソマリア東方沖のインド洋」に移しているとしても、派遣された海上自衛隊艦隊がただちに同海域で「海賊対処」活動を行なうことは考えにくい。日本関連船舶の大多数が地中海─スエズ運河─紅海─アデン湾─インド洋─マラッカ海峡経由で航行しているからである。それに「ソマリア東方沖のインド洋」はアデン湾よりはるかに広大で、そこで「海賊対処」の成果をあげることはかなり困難ではあるまいか。
 しかしアデン湾での海賊の活動も依然として続いている。

 〈海賊 ドイツの補給艦に銃撃
 バーレーンに司令部があるアメリカ海軍の第5艦隊によりますと、ソマリア沖のアデン湾で3月29日、ドイツ海軍の補給艦が小型船に乗った海賊から銃撃を受けました。補給艦も小型船に向けて発砲し、さらに周辺にいた各国の艦艇に支援を求めた結果、アメリカ海軍のヘリコプターなどとともに、駆けつけたギリシャ軍の駆逐艦が小型船を追跡し、およそ5時間後、7人の海賊を拘束したということです。また、小型船の中にあった自動小銃やロケット砲を押収したということです。ソマリア沖で活動している各国の艦艇が海賊に襲撃された例はこれまでほとんどなく、アメリカ軍では、海賊は、ドイツ海軍の補給艦を民間の商船と勘違いして襲撃しようとしたのではないかとみています。〉
          (3月31日付NHKニュース)

●始まった「海賊対処」

 〈海自護衛艦、オマーン到達…まもなく警護活動スタート
 防衛省は3月30日、護衛艦「さざなみ」と「さみだれ」が、オマーンの港湾都市サラーラの沖合に到達したことを明らかにした。/5隻の「日本関係船」を対象に初の警護活動をスタートさせる。国土交通省の「海賊対策連絡調整室」には、これまでに計2595隻から警護の希望が寄せられており、同省は、2隻の護衛艦では対応しきれないとして、P3C哨戒機による空からの警護を実施する方向で調整している。/防衛省によると、初の警備対象となる5隻は、いずれも外国船籍だが、国内の船会社が管理しており、うち2隻に日本人が乗船している。
この海域では昨年だけで計111件の海賊事件が発生しており、5隻は隊列になって航行し、前後を護衛艦にはさまれながら湾内を約900キロにわたって西に進み、2日後にジブチ沖に到達する見通し。/警護はそこで終了し、護衛艦2隻は、湾内から湾の外に向かう別の日本関係船団と待ち合わせ、サラーラ沖まで引き返すことになる。2隻は9月ごろまで活動を続けるとみられる。〉
          (3月30日付『読売新聞』)

 もう一つ大事な情報を加える。
 〈事前登録2600隻=ソマリア海域−国交省
 ソマリア周辺海域で海上自衛隊による護衛を希望する船は、国土交通省を通じて申請する。同省への事前登録では、向こう1年間に周辺海域を通過する船は、東向き、西向き合わせ約2600隻(うち約300隻は外国会社が運航)。同省は護衛対象となる条件を満たせば、希望に応えられる数とみている。/護衛を受けたい場合は原則10日前までに申請する。/対象は、現段階では(1)日本籍船(2)日本人が乗り組む船(3)日本の会社が運航する船(4)積み荷が日本の国民生活維持にとって重要な船−に限られる。〉
          (3月30日付『時事通信』)

 実際、3月30日、とうとう「海賊対処」の警護活動が始まった。「防衛省に入った連絡によると、両艦は5隻の日本関連船舶を警護しながらアデン湾を順調に航行しているという。」(3月31日付『東京新聞』)。同日付『朝日新聞』は防衛省提供の写真を掲載しているが、それには隊列を先導する護衛艦「さみだれ」と民間船舶2隻が映っている。記事にこうある。「護衛艦2隻は、ソマリアの隣国ジブチの港など補給拠点に任務を続ける。部隊は4カ月前後で交代を繰り返していく」。海自艦隊の拠点は、ジブチのジブチ港、イエメンのアデン港、オマーンのサラーラ港とされている。そこで日本政府はジブチと地位協定を結ぶ。

 〈海賊対策で協力 ジブチと一致
 アフリカを訪れている中曽根外務大臣はジブチのシライ国際協力担当相と会談し、海賊による被害を防ぐため、両国が連携して取り組んでいくことで一致しました。/この中で、中曽根外務大臣は「ソマリア沖の海賊対策では、護衛艦や航空機の燃料や食料の補給など、ジブチの港などを活動の拠点としていきたいと考えている。日本としてもそれを踏まえて、可能なかぎりの経済支援をしていきたい」と述べました。これに対し、シライ国際協力担当相は「海賊対策をめぐる日本の海上自衛隊の活動が有益かつ円滑に進むように、あらゆる支援をしたいと考えている」と応じました。また両氏は、ジブチで自衛隊員が活動するにあたって、隊員の身分を保障する地位協定を締結することで合意し、近くジブチの外相が来日して署名式を行うことになりました。〉
          (3月22日NHKニュース)

 中曽根外相は「ジブチの港などを活動の拠点としていきたいと考えている。日本としてもそれを踏まえて、可能なかぎりの経済支援をしていきたい」とのべているが、これは海自に活動拠点を提供すれば経済支援するということで、要するに便宜供与を金で買い取るということだ。あまりの露骨さに呆れるばかりである。
ただ注意したいのは、「ジブチの港など」という表現で、これにはP3C哨戒機の基地提供も含まれている。地位協定については次の記事が参考になる。

 〈海賊対策でジブチと公文交換へ=自衛官の活動規定
 海上自衛隊の活動拠点となるジブチと自衛官らの地位に関する交換公文を取り交わすことが3月23日、固まった。4月上旬にも同国のユスフ外務・国際協力相が来日し、中曽根弘文外相と署名する。/交換公文には、公務中に事故が発生した場合のジブチ側裁判権の免除や、問題発生時の両当局間の協議会設置、日本側が持ち込む物資の免税規定などが盛り込まれる。〉
          (3月23日付『時事通信』)
 自衛官が起こした公務中の事故について「ジブチ側裁判権の免除」は日米地位協定で米軍に保障されている特権で、日本政府は同じ特権をジブチに認めさせようとしている。
 日本海軍(海自)がはるか彼方のアデン湾で日本関連船舶を警護する。そのためにジブチと地位協定を結んで海自の拠点を確保する……。少し前なら考えられもしなかった事態がついに現実になったのだ。しかし問題の大きさと深さを忘れないために、ここで話を半月ほど前に戻したい。

【反戦の視点・その77】 第7回 愚かしい海賊派兵を阻止しよう2に続く

(以下、前半より続き)

▼艦隊派遣を急ぐ麻生政権のアクロバット的な法の運用

 すでにのべたように、海上警備行動の発令ではるか遠方の海外で海賊に対処することは筋違いである。そこで政府が考え出した対策はまことに奇妙なものだ。ソマリア周辺・アデン湾に派遣する海上自衛隊の護衛艦に海上保安官を同乗させ、その保安官の権限を活用して、「日本船籍の乗船者に対する殺人や逮捕監禁など重要犯罪を行った海賊の身柄を拘束し、刑法の国外犯規定を適用して逮捕・起訴する」という(1月3日付『産経新聞』)。
 海上自衛隊の隊員にはない権限を海上保安官に行使させて法的な辻褄合わせをしようというのである。しかしこんなことが許されるなら、海上保安官を同乗させた海上自衛隊の艦隊が「海上警備行動」を名目に世界のどの海にも展開することになる。さらにこういう情報もある。
〈アフリカ・ソマリア沖の海賊対策を求められている防衛省が、海賊に乗っ取られた船舶の解放を想定して、護衛艦とともに海上自衛隊の特殊部隊「特別警備隊」の派遣を検討していることが1月16日、分かった。特殊部隊の派遣により、海賊対策の実効性が増す一方で、武器使用の可能性が高まることになる。
 特別警備隊は、能登半島沖で起きた北朝鮮の工作船事件をきっかけに2000年3月、広島県の江田島基地で編成された。三個小隊約八十人からなり、高速ボートやヘリコプターで工作船に乗り込み、武力で制圧する。

 政府は、日本関係の船舶を護衛艦がまとめて引率するエスコート方式をとる方針だが、船団から外れたり、個別に航行する船舶が襲撃されるおそれはある。防衛省関係者は「そのとき『何もできない』では許されない」として、特別警備隊の活用が浮上した。
 防衛省の検討では、護衛艦に乗艦させる特別警備隊は1個小隊(20数人)程度で、高速ボートも搭載する。護衛艦に搭載しているヘリも活用する。〉(1月17日付『東京新聞』)
 これは海上自衛隊が直接海賊に対処するということだが、それには当然根拠法令が必要となる。そもそも日本周辺での工作船への対応がいきなりアフリカ沖の海賊行為に対して適用されること自体にムリがある。上の記事にはまたこうある。
 〈政府は自衛隊法の海上警備行動を発令して海上自衛隊を派遣する方針で、武器使用は正当防衛・緊急避難に限って許される。それでも相手が「国または国に準じる組織」だった場合、特別警備隊が救出に向かえば、憲法九条で禁じた武力行使となる「駆けつけ警護」にあたるが、政府は「国際法上、海賊は『民間』と規定されている。武力行使にはあたらない」という。〉

 法の抜け穴を見つけて、とにかく一刻も早く派兵しようというのだが、問題はそれに留まらない。海上警備行動では日本船籍と日本企業が管理する「日本関係船舶」しか護送できない。しかし政府は「日本籍船のほか、(1)日本企業が運航を管理している外国籍船(2)日本人が乗船している船舶を海自艦艇で護送することが可能と判断した」という(08年12月24日付『産経新聞』)。これもまた強引な拡大解釈だ。外国籍船に一人でも日本人が乗っていれば、護衛艦が駆けつけるというのだろうか。防衛省内には「長期の海外派遣を実施するには82条(海上警備行動)の条文はスカスカ」との違和感が広がっているというが(1月17日付『毎日新聞』)、それはわかりやすい話だ。麻生首相は海上自衛隊の艦隊を一体いつまでソマリア沖・アデン湾に張りつけておくつもりなのだろうか。


▼麻生首相が派兵を急ぐ理由

 麻生首相がこれほどムリにムリを重ねて海賊派兵を急ぐのは、何も中国への対抗意識だけによるのではない。彼はこの際、自衛隊による武器使用基準を緩和し、集団的自衛権行使の既成事実を作り出したいのである。

1月8日に明らかになった、政府が今国会提出をめざしている「海賊行為対処に関する法律案」(仮称)の概要はこうである。
 〈(1)海外派遣時の自衛隊の武器使用基準を緩和(2)国籍や犯行場所に関係なく日本の刑罰法令を適用(3)外国の船舶、船員も保護対象とする。現行の正当防衛や緊急避難に限定している武器使用基準については「自衛隊の任務遂行に必要な武器使用などの権限」を検討する。外国船舶、船員への海賊行為への対応は「わが国が自ら措置を講じ得ることが必要」とした。〉(1月9日付『共同通信』)

 海上警備行動は法的には警察行動だから、武器の使用は正当防衛と緊急避難の場合に限られる。しかしロケット砲まで持っている凶悪な海賊に対処するのにそういうシバリがあるのはおかしいと世論を煽って、自衛隊が武器使用を自由に行なえるようにしたいのである。それがアフガニスタン派兵、さらにそれに続く派兵をにらんだ布石であることは明らかだ。「海賊」をダシに使って自衛隊に米軍並みの武器使用を許そうというのだ。

 ソマリア周辺・アデン湾で他国の軍艦とともに行動することに、集団的自衛権行使の先例作りの意図が含まれていることも確かだろう。麻生首相はあえて海賊対処は「集団的自衛権の問題とは関係ない」と強弁しているが、それがかえって問題の所在を明らかにしている。国連安保理決議を大義にかかげ、海上自衛隊の艦隊が数十隻の諸国艦隊に混じって行動する。麻生首相にとって、それは事実上「集団的自衛権行使」の先取りなのである。ソマリア沖の海賊対処では諸国の海軍とともに活動し成果を挙げた、それこそ国際貢献であり、今さらなぜ「集団的自衛権の行使が違憲だ」などと言うのか、とブチあげたいのだ。

 麻生首相が正面から改憲を語らないのは、未曾有の世界大恐慌に対応するのに精一杯だからであり、隙あらば改憲の道筋をつけたいと思っていることは想像にかたくない。本シリーズ「反戦の視点・その66」で筆者は「財界も含めた改憲派は、ビニール袋に入った金魚が袋を突き破ろうとするように必死に出口を探している。」と記した。麻生首相は、解釈改憲によるか明文改憲によるかにかかわりなく、大不況の下で日本経済が生き残るためには海外権益を日米の軍事力で守るしかないと思っているのである。それは米国政府の意にまことにかなうことでもある。

 〈オバマ次期政権の発足に伴い退任するシーファー駐日米大使は1月14日、都内で記者会見し、現行の憲法解釈では禁じられている日本の集団的自衛権行使について「解釈を見直すべきだ」と繰り返し言明。日米両国でミサイル防衛(MD)を運用するに当たり、日本政府が憲法解釈の変更に乗り出すべきだとの見解を示した。
 またアフガニスタン情勢に関して、医師や技術者、看護師、教師などの文民派遣により、日本がより積極的な人的貢献を行うよう要求。ソマリア沖の海賊対策にも主体的に取り組むよう促した。〉(1月15日付『共同通信』)

 この記事には「退任直前とはいえ、集団的自衛権をめぐって現職米大使が"解釈改憲"の必要性に踏み込むのは異例と言える」とあるが、日本政府に対しついにかんしゃく玉を破裂させたということだ。シーファーの後任のジョセフ・ナイは「アーミテージ報告」(2000年)の共同執筆者で、彼もまた同報告で日本に「集団的自衛権の禁止の撤廃」を求めていることを私たちは忘れるべきではない。 
海賊行為対処に関する与党プロジェクトチーム(PT)はもともと「まず派兵ありき」の姿勢で、麻生首相はPTの結論を得次第、海上警備行動を発令する。


▼「海賊退治」ではなくソマリア社会の再建を支援すべき

 ソマリアでは、ひたすら無秩序と暴力が支配し経済も社会も崩壊している。91年の内戦以来、全土を統治する政府は存在せず、多数の氏族間で抗争が続いている。同国は「アフリカの角」と呼ばれる戦略上の要地であり、海洋資源や石油資源が豊富であるため、たびたび大国や隣国の介入を招いてきた。ソマリアの人びとは社会の再建を自力で図る機会を奪われてきたのである。国連安保理の決議はその現実を直視せず、国際社会としての責任を果たそうとしない。軍事介入ではなくソマリア社会の自力での再建を支援することが何より大切なのだ。「海賊退治」ではなく海賊を無数に生み出す土壌に目を向けねばならない。外科手術ではなく漢方的対応が不可欠なのだ。

 海賊派兵は、大不況対策で行き詰まった麻生政権が、お定まりの手法だが、私たちの目を自らの失策から外にそらさせるための景気づけである。同時に自衛隊に自由な武器使用を許し、事実上集団的自衛権の行使に踏み込むための策謀にほかならない。そこに潜むのは、日本の海外派兵を新たな段階に押し上げようとする危険な意図である。

 今こそ、今すぐ、声を上げねばならない。「海賊派兵」に断固として反対しようではないか。


※声を上げる方法※
 首相官邸のホームページに「ご意見募集コーナー」があります。そこから各府省に抗議文や要請文を送ることができます。

(転載歓迎)

反戦の視点・その68

【緊急アピール】 どさくさまぎれの海賊派兵を許すな!
        
                 井上澄夫(市民の意見30の会・東京、
                  沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)
                       
▼オバマの戦争拡大と日本の海外派兵拡大

 イラクからの陸上自衛隊の撤退に続き、昨年末、航空自衛隊もクウェート─イラクから撤退したことで、マスメディアは一時期、これで海外派兵は一段落したかのように報じたが、とんでもない話だ。昨年末の国会ではもめたものの、アフガニスタンでの米軍の作戦を支援する給油新法改正案はとうとう成立させられ、海上自衛隊のインド洋での給油活動は今年1月から一年間延長されることになった。そのアフガニスタンをまもなくアメリカ大統領になるオバマは、大統領選で「主戦場にする」と公約した。ブッシュ政権のゲーツ国防長官はオバマ政権で留任する。

 AP通信によると、米陸軍第10山岳師団の第3戦闘旅団(約3500人)がまもなくアフガンに派遣される。さらに今春、AH64攻撃ヘリコプター18機を含む軍用ヘリ約90機を主軸とする陸軍第82戦闘航空旅団(約2800人)が送り込まれる。マレン統合参謀本部議長は昨年末、現在展開中の米軍部隊3万1000人を、今年夏までに約6万人まで倍増させる方針を示した(08年12月23日付『読売新聞』)。遠いところの話ではない。沖縄では米海兵隊がIED(即製爆発装置)の直撃に耐えるとされる路上爆弾対策を施した装甲車エムラップの走行訓練を行なっている。言うまでもなくアフガン増派のためである(1月9日付『沖縄タイムス』)。

 この米軍の増派戦略は〈オバマの戦争〉が始まることを意味している。アフガン東部に展開する米軍はすでにパキスタン西部国境地域を繰り返し越境攻撃している。明らかに戦火は拡大しつつある。その米軍を海上自衛隊はインド洋・アラビア海での洋上給油で支援し続けるの
だ。
 〈昨年末に再可決された改正給油新法をペシャワール会の中村哲医師は「ナンセンスの一語に尽きる」と言う。「空爆のための油が日本からもたらされていることを、報道によってアフガン人は知ってしまった。誰もいい気分はしないでしょう。彼らの正直な思いはもう支援も軍隊もいらないから、人を殺すのをやめてくれ、ということなのだから」。〉(1月16日付『東京新聞』)。

 米軍の殺戮と破壊に加担しつつ、日本政府は復興支援を強化する。
 〈政府は1月9日、アフガニスタン中西部のチャグチャランでリトアニアが展開している「地方復興チーム」(PRT)に今春、外務省職員数人を派遣すると発表した。日本はこれまで、国際協力機構(JICA)の職員らが現地で技術協力を行ってきたが、政府職員の派遣は初めて。学校建設や医療支援などの調整や現地のニーズを調査する見通しだ。

 PRTは外国軍の防護下で文民が地域復興に当たる枠組み。アフガンとイラクで実施され、地域ごとに軍が治安維持などを担い、文民が教育・保健分野の復興支援に当たる。リトアニアが昨秋、職員派遣を日本政府に打診。チャグチャランは「アフガン国内では治安が比較的安定している」(外務省安保課)ことから派遣を決めた。〉(1月10日付『毎日新聞』)
〈政府はアフガニスタンの復興を支援するため、新たな貢献策を固めた。復興の鍵を握る首都カブールの再開発計画を日本主導で策定、2025年までの完了を目指して資金・技術面から協力する。現地で復興支援に当たる政府職員の新規派遣やテロ対策への資金協力も盛り込み、治安と経済の両面から貢献する姿勢を示す。〉(1月11日付『日本経済新聞』)
〈オバマの戦争〉に加担してアフガンの人びとを殺し、国土を破壊しつつ、一方で「復興を支援してあげましょう」と言うのだ。


▼麻生首相が強引に進める海賊対策

 東アフリカ・ソマリア沖で起きている海賊事件に対応するため、NATO(北大西洋条約機構)加盟国が次々にソマリア周辺海域・アデン湾一帯に軍艦を派遣している。すでに英、仏、ドイツ、ギリシャ、スペイン、イタリア、ベルギー、オランダなどが派兵している。さらに中国も艦隊を派遣し自国籍船だけでなく台湾の商船も警護している。アデン湾を含むソマリア沖海域には各国の軍艦が何十隻も集結している。すでに英海軍は海賊との銃撃戦で海賊2人を射殺し、インド海軍は海賊に乗っ取られたタイの船舶を撃沈した。

 世論調査のたびに支持率が下がる麻生首相は、ここで頽勢挽回とばかり、海賊派兵を強行する気である。「バスに乗り遅れるな」というわけだ。その前のめりの姿勢は、2001年の〈9・11〉直後の小泉首相(当時)にそっくりだ。〈9・11〉が起きるや、小泉はただちに訪米してブッシュの報復戦争に全面的支持を表明し、テロ対策特措法案が国会で成立する前に(!)海上自衛隊の艦船をインド洋に派遣した。その名目は「情報収集」だったが、はなはだ根拠を欠いた恣意的な軍の運用というほかない。小泉首相は国会でろくに審議をせずに強引にテロ対策特措法を成立させた。そして洋上で待機する艦隊に同特措法に基づく措置を命じ、さらに艦隊を増派したのである。

 麻生政権は当初、(1)「海賊行為対処法」のような一般法を制定する(2)海賊対処特措法を制定して対応する(3)海上警備行動を発令して海上自衛隊の護衛艦をソマリア沖に派遣するという3種の対応を考えた。しかし一般法の制定には法的な課題が非常に多く、しかも現在のいわゆるネジレ国会では(1)も(2)も早期実現は望めないので、(3)を当面の政策として押し出し、突っ走ろうとしている。

 事態は急を告げている。1月15日付の『中国新聞』はこう伝えている。
 〈アフリカ・ソマリア沖の海賊被害対策で、呉市の海上自衛隊呉基地所属の護衛艦2隻が、自衛隊法に基づく海上警備行動による派遣をにらんで準備を始めたことが1月14日、海自関係者の話で分かった。派遣が決まった場合、部隊は400―350人規模になる見込みという。
 2隻は、さざなみ(4650トン)と、さみだれ(4550トン)。遅くとも昨年12月下旬には、防衛省海上幕僚監部から指示が出ているとみられる。海自隊艦艇の海外派遣の準備には通常2カ月、最短でも1カ月かかるとされ、防衛相の発令があればすぐに出発できるよう備えているという。〉
 

▼強引な拡大解釈による艦隊派遣

 海上警備行動は自衛隊法第82条(注参照)に規定されているが、それはもともと海外での海賊取締りを想定したものではない。日本の周辺海域で発生する事態に備えるものだ。河村官房長官は昨年12月24日、記者会見で「海上警備行動は原則、日本の領海内を想定している」と言明している。

 海上警備行動はこれまでに2度発令された。それらはいずれも領海内に入った不審船(99年)と中国潜水艦(04年)への対処だった(いずれも事態に間に合わず対処できなかった)。麻生首相は、日本を遠くはなれたアフリカ沖での海賊対処のために海上警備行動を発令する気なのだが、それが自衛隊法のまったく恣意的な解釈によることは明らかである。

 海上警備行動は閣議で決定することができ、国会の承認を必要としない。それゆえ、防衛省幹部でさえ「安易に使われると世界中どこにでも行け、となりかねない」と懸念しているほどだ(昨年12月26日付『毎日新聞』)。麻生首相が前のめりで強気である背景には、国連安保理が昨年10月、加盟国に対してソマリア沖への海軍派遣を要請する決議を行ない、同年12月にはソマリアの領土・領空での海賊制圧を認める決議を採択したことがある。しかし海賊行為に対して国連憲章第7章(平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動)を適用するのは明らかに過剰な対応である。いかに社会や経済が破綻していると言っても、一国の領海・領土・領空に踏み込んで好き勝手にふるまうことは許されない。中国が艦隊を派遣したことが日本政府・外務省を焦らせ、派兵強行を決断させたという報道があるが、そんなことで軍隊を動かすのであれば、今後どんな派兵が強行されるかわかったものではない。

※注:自衛隊法第82条 防衛大臣は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。


▼海賊への対処は海上保安庁の任務である

 海上警備行動は、海上保安庁では対応が困難な場合に職務を代行することになっている。しかし海賊への対処が「海上保安庁では対応が困難な場合」に該当するかどうかなどこれまで検討されなかったし、それゆえ当然のことだが、海上自衛隊は海賊対処の訓練をしていない。海賊への対処は一義的に海上保安庁の仕事である。海上保安庁法は第2条で同庁が「海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕」を任務とすると定めている。
 〈マラッカ海峡の海賊対策では、海上保安庁がアジアの沿岸各国と情報を共有する体制を築き、人材育成を支援してきた実績がある。〉(08年12月26日付『北海道新聞』)。
 〈日本は、東南アジアの海賊対策で「アジア海賊対策地域協力協定」策定を主導し、マラッカ海峡周辺国に海上保安庁の巡視船を提供するなどして海賊封じ込めに成功した実績がある。〉(08年12月27日付『毎日新聞』)

 実際、同海峡での海賊事件は激減した。「2003〜07年のデータを見ると、海賊事案は東南アジアでは5年間で半数以下になっている」(外務省のホームページ)。だからソマリア沖での海賊事件についても、海上保安庁はイエメンやオマーンなど沿岸諸国に働きかけてマラッカ海峡での経験を活かそうとしている。そもそも日本政府の「海賊対策」は沿岸国イエメンの要請に応じ巡視船や巡視艇を供与する方向で調整を始めるところから始まったのだ。
 〈巡視船艇供与は2006年6月に閣議決定したインドネシア向けに続き2例目。イエメンの海上警備能力の向上が狙いで、政府開発援助(ODA)の無償資金協力の枠組みで実施される見通し。既に海上保安庁が今月(12月)、現地に職員を派遣し、巡視船艇導入の効果などを詳細に調査している。〉(08年12月24日付『共同通信』)

 ところが麻生首相が突出して海上警備行動発令を持ち出し、まず護衛艦隊を派遣し、その後「海賊行為対処に関する法律案」(仮称)を成立させることになった。浜田防衛相は一般法(海賊対処法)を整備した上での艦隊派遣を望んでいるが、麻生首相は押し切るかまえだ。

【論考】「あたご」による漁船沈没事故とPAC移動展開訓練
                  池田五律:戦争に協力しない!させない!練馬アクション

▼ミサイル防衛の中心護衛艦「あたご」による漁船沈没事故
 イージス護衛艦「あたご」が漁船を沈めた。「あたご」は、海上から弾道ミサイルを撃ち落す次世代SM3を搭載が予定されているミサイル防衛の中心艦だ。次世代型SM3は、現在、日米で共同開発が行われている。その配備は2015年、日本負担の共同開発費は2006年度だけで30億円、2014年までの9年間で10億〜12億ドルといわれている。加えて、次世代型SM3は射程が伸びるので、米本土に向かう弾道弾ミサイルの迎撃など、配備されれば日本防衛以外の目的でも運用される可能性が高く、憲法が禁じる集団的自衛権の行使に踏み込むことにつながると指摘されている。さらに、共同生産した次世代SM3の輸出のために、武器輸出の規制緩和しようという動きもある。防衛省・自衛隊は、事故の責任を取るとともに、ミサイル防衛推進政策を見直すべきだ。

▼PAC3移動展開訓練
 一方、航空自衛隊は、パトリオット3(PAC3)ミサイルを、2007年3月の入間配備以降、続々と配備している。PAC3は、海上発射型迎撃ミサイルが撃ち落し損なった弾道ミサイルを迎撃するためのものだ。しかし、弾道ミサイルを落ちてくる段階で撃ち落すことは、専門家からも不可能といわれている。撃ち落せたとしても、射程は約20キロだから、弾道ミサイルを爆発させることになる。その影響は計り知れない。
その入間基地に配備されたPAC3の移動展開訓練が行われようとしている。想定されているのは、練馬駐屯地、市ヶ谷駐屯地、新宿御苑、代々木公園、日比谷公園、晴海ふ頭など。石原都知事は、皇居前という案を出している。さらにサミットに際しては、洞爺湖に移動させるという案もある。
 1月14日深夜に、新宿御苑で通信状況などの調査が行われた。今後、各地で同様の調査が行われ、候補地が選定され、実際に移動展開訓練が行われるという段取りだ。移動展開訓練の際には、最大50トンともいわれるトレーラーをはじめ十数台の車両でPAC3が運ばれることになる。その際の水道などのライフラインが埋められている道路への影響も、迎撃対象のミサイルを補足する訓練で発せられる電磁波の健康への影響も、不明だ。

▼防衛省・自衛隊に協力する東京都
1月21日に、「戦争協力させない 東京ネットワーク」は、東京都の国民保護担当者と、この問題に関して面談を行った。そこでの東京都姿勢は、防衛省が公表しないように要請してきているから何も明らかにできないというものだった。しかも、誰も都として新宿御苑での調査に立ち会ってもいないのに、「安全だ」の一点張り。さらには、上空で迎撃した方が地上に落ちるよりは被害は少ないと、防衛省・自衛隊の主張をそのまま繰り返す始末。
防衛機密の保全を自治体に要請し、自治体もそれを当たり前のように受け入れる「戦争協力態勢」が着々と作られつつあることを改めて痛感させられた。
 さらに石原都知事は、「サミット警備」を名目に、「国民保護態勢」の強化を図ろうとしている。4月に国民保護実働訓練を実施し、交通機関や地域自主防犯組織なども動員した「テロ対処態勢」を作り出すという。この動きを注視する必要がある。

茂木@戦争に反対する中野共同行動です。

日頃なにかとお付き合いのある井上さんの文章です。
以下転載です。

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(転載歓迎)

反戦の視点・その58

    バグダッドの治安が改善された?

                 井上澄夫(市民の意見30の会・東京)


 ブッシュ米大統領は最近、自分が決断した3万人の米軍増派によって首都バグダッドの治安状況が大いに改善したと誇らしげに語っている。さて、それはどういう意味だろうか。

 彼が稀代のウソつきであることは、イラク開戦時にかかげた二つの大義、サダム・フセインのイラクが膨大な大量破壊兵器を保有していることと、アルカイーダを支援していることとがいずれも完全なデッチ上げだったことが明らかになったことで証明され、それは世界周知のことである。しかし彼はデマゴーグであることを認めず、独裁者フセインを除去したことで米国と世界は安全になった、と論点をすり替えて開き直った。

 そういう人物の言う「バグダッドの治安改善」をどう受け止めるか。イラク情勢に詳しい私の友人は笑いながらのべた。「そりゃそうでしょうよ。住民を追い出してしまったのだから」。

 米軍の増派による首都の制圧は、バクダッドに巣食うイスラム過激派やアルカイーダ系のテロリストを掃討することを目的とするとされ、その作戦は各地区でしらみつぶしに行なわれた。圧倒的な軍事力を前にした場合、ゲリラはさっさと逃げ出す。それはゲリラ戦の常識である。したがってしらみつぶしに行なわれる掃討作戦の主たる効果は住民生活の破壊にほかならない。住処(すみか)を荒らされ生活を破壊された人びとは居住地域を離れ、難民になるしかない。ヨルダンやレバノンに逃れるか、国内難民になるか。それ以外に道はない。

 バグダッドに残っている難民のレポートを要約する。

 〈難民の住む地域にいる人びとは、動きのとれない老人、寡婦、戦争で負傷した元兵士、無数の戦災孤児などであるが、電気も清潔な水も、医療施設もゴミ処理のサービスもなく、寒い冬に備えて毛布を入手することも困難なまま、家族がたった一間や屋根を壊された家屋に住むしかない。バスルームやシャワーもない。赤新月社や赤十字などの救援組織は皆無で食料を買う金も乏しい。バグダッドの周辺部でテント生活を強いられている人びとも少なくない……。〉
(末尾注1参照)

 ブッシュが言う「首都の治安状況の改善」とは、首都駐留米軍が他の地域の同軍に比べていくらか「安全」になったということにすぎず、住民の生活は安全になるどころか破壊されたのだ。しかし首都駐留米軍が「安全」であり続けるためには首都に駐留し続けるしかないし、自軍の削減はできない。米軍は2003年3月にバグダッド空爆を開始したが、その際、石油省だけは無傷で残した。それが示すように、米国政府が自らのカイライ・マリキ政権を軍事力で支えるのは、石油利権を確保しイラクに空軍の拠点を置くためだが(末尾注2参照)、米軍によるイラク国軍の養成は遅々として進まない。一方、マリキ政権はなかなか石油法を制定できない。北部のクルド、中部のイスラム教スン二(スンナ)派、南部のイスラム教シーア派の間で利害の調整ができないと伝えられるが、イラクの地下に眠る石油は本来イラク国民のものであるにもかかわらず、石油法の制定は米国政府と癒着した米石油資本に半永久的な利益を保障するものでしかないという問題が根底にある。

 これも常識のたぐいだが、軍隊が一番危険にさらされるのは撤退のときである。かつてムサンナ州サマーワに駐留していた陸上自衛隊の部隊は、イラク国軍が見送りに駆けつける4時間前に夜陰にまぎれて撤退した。逃走、逃亡と言っていい。ブッシュは米大統領選を意識して、増派した米軍を夏には帰還させるつもりのようだが、それが可能かどうかは予断を許さない。イラク現地米軍司令官はすべて情勢次第とすでに予防線を張っているが、撤退はそれ自体が難事なのだ。

 ベトナム侵略戦争で米軍は増派に増派を重ね50万人もの兵士を送り込んだが、結局、ベトナムから追い出された。無惨な敗退だった。イラク戦争がどういう形で終わるかはまったく予断を許さないが、米軍はイラクに10数ヵ所、空軍の拠点を置こうと目論んでいる。中央アジアから追い出されかかっているから、中東のど真ん中に複数の空軍拠点を置く計画を手放すはずはない。カイライ政権にとりあえず法的な体裁を整えさせ、石油収奪のシステムを確立しないことには、戦争を終わらせることはできない。

 撤退がどんどん遅らされる理由として、最後にイランの台頭を加えねばなるまい。イスラエルが200(あるいは100〜300)発の核を保有していることは公然の秘密であり、それに対抗するためにイランが核開発を急いでいることは明らかである。ブッシュ政権のイラクの「民主化」を手始めに中東全域を「民主化」するというドミノ構想が完全に破綻しただけでなく、米国の出先であるイスラエルの防衛も危うくなってきた。米軍をイラクに駐留させ、ペルシャ湾に空母など米艦隊を張りつける理由がまた増えたのだ。

 米国防総省が2月4日に発表した09会計年度の対テロ戦費を除く通常の国防予算案は08年度実績比7・5%増の5154億ドル(約54兆6300億円)で、これが議会で承認された場合、インフレ調整後で第2次世界大戦以降、最高水準になる。しかしこれはイラン、アフガンなどでの対テロ戦費を除いた予算案で、同戦費については数カ月分として700億ドルが計上された(2月5日付『毎日新聞』)。

 また同日、ブッシュ大統領が議会に提出した任期最後となる09会計年度予算教書は、08年度の財政赤字が4100億ドル(約43兆4600億円)に達し、過去最大だった04年度(4130億ドル)に匹敵する規模になるという見通しを明らかにした。09年度の財政赤字は4070億ドル(約43兆1400億円)を見込んでいる(同)。終わらない戦争が景気を後退させ、税収の落ち込みが赤字を膨らませたのである。同予算教書は医療保険などの財政支出や教育などへの支出を低く抑えている。戦争経済のツケは増大する貧困層に回される。

 軍事予算を突出させて国家財政を破綻させ、米国社会を荒廃させながら、ブッシュは任期の最後まで「ブッシュの戦争」を続けるつもりである。


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※注1
 高遠菜穂子さんのブログ「イラク・ホープ・ダイアリー」
http://iraqhope.exblog.jp/8048411/
にイラクから送られてきた報告の日本語訳が掲載されている。


※注2
ブッシュ政権は米軍の海外拠点について、わざとまぎらわしいレトリックを用いている。2月13日付AFPは、大統領府のダナ・ペリノ報道官が「海外のいかなる米軍基地も恒久的なものと考えていない」と表明したと報じた。一見期待を抱かせる発言であるが、大統領選でイラクからの撤退が争点の一つになっているため、撤退含みの展望に触れて民主党を牽制したにすぎない。

 ただし海外に恒久的な基地を維持しないという考えは、ラムズフェルド米国防長官の時代、米国防総省によってすでに表明されていた(2004年8月、在外米軍再編計画を発表)。在韓米軍(3万7000人)については04年10月、3分の1の1万2500人を08年9月までに削減することで米韓が合意、在欧米軍(11万6000人)については05年4月、陸軍部隊のうち3万8000人を今後5〜10年で削減する計画が公表された。その文脈でとらえれば、ペリノ報道官の表明は、とりたてて新しいものではない。 要するに、在外基地の将兵を帰還させ米本土防衛を強化するとともに、ハイテク化や前方展開戦力の再配置によって米軍が有事に即応して世界のどこにでも出動できる態勢を作りたいのである。そのような有事即応の機動展開のために米軍が必要とするのは、恒常的な基地ではなく、中継地点としての空間である。必要なのは「ベースではなくスペース」なのだ。

 アフリカを含め世界のどの地域で起きる紛争にも即時対応できる態勢であれば、膨大な経費を要する基地を維持する必要はない。有事に空軍を展開するため中継地点があれば十分ということなのだ。周辺事態法では同事態に際して米軍が来援するときは、民間の港湾・空港なども使用できることになっている。イラクに置く予定の空軍の拠点も、あえて「基地」とは呼ばれないかもしれない。

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