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ポチ(2代目)は人間の年齢に換算すると、享年84歳だったことになる。
ちなみに初代ポチは享年80歳、どちらもいつお迎えが来てもおかしくなかった。
初代ポチはヨボヨボで、下もまともには出来なくなり、かつては甘えまくり、吠えまくっていたが感情がまるでなくなってしまったようにおとなしくなった。そんな彼は、6月のある朝、突然鳴き出し、私たちを呼んでいた、母が見ると、もうまともに立てなくなっていた。そして昼前、まさにろうそくの炎が消えるように、母の腕の中で、静かに息を引き取った。
ポチ(2代目)は、初代ポチから見るとずいぶんしっかりしていた。下は彼なりのコントロールはきかなくなっていたが、自分の力ですべてを行えていたし、まだ多少は、家に入りたいとか、出たいがこちらもわかるような気がした。そんなポチ(2代目)が突然他界したのは、転落事故。
春分の日の午後、前の晩は家に入り損ねたポチを、おひさまのよく当たるルーフバルコニーに連れて行ったのは私、初代ポチもそうだ、彼らは見通しが良い風の通り道が大好きだからだ。風もなく温かい陽だまりに彼を残して、自室で休んでいたら、
「ポチが落ちた。」と家族が駆け込んできた。
横たわっていたポチを抱えると、まだ息がある、目もしっかりとしているので、一旦、寝床に入れると、ウンチをした。もう一度抱え、話しかけていたら、荒くなっていた息がだんだん弱くなり、止まって行った。胸の鼓動も無くなった。
孤独な犬だったけど、家族全員に看取られて逝った。
抱っこの大嫌いな犬だったけど、抱かれて眠るような最期だった。
最後の最後に抱っこしてもいいよと言ってくれたのかなと今は思う。
推測するに、その当時ポチはウンチすると、スタミナをかなり使うので、排便の後はなかなか起き上がれなくなっていた。バルコニーで排便し、起き上がれないまま這いずって、手すりの柵の下の隙間に入り込んで下に落ちたようだ。
ハチ(今我が家にいる白黒の犬、名前の由来はまた後日)にたいして、思う心は、ポチにしてあげられなかったことをしてあげること、それこそポチが私に残してくれたものかもしれない。
なんでこんなつらい話を、長々と思いだしたのは、
崖っぷち犬の話が耳に入ったからだ。
今から2年ほど前、職場のテレビに生中継で救出の模様が映っていた。茶色い犬が落ちたと思ったら、網でキャッチ、無事保護となった。
私はその瞬間ものすごいフラッシュバックが起こった。よく、そのまま仕事ができたものだ、抗鬱剤が効いているのだろう。犬が助かって喜びはあるが、心の中は妙に苦しかった。茶色の野良犬ってだけでも、変な思い入れが発生するのに、目の前で一瞬だけだが転落するシーンは…
そんな訳で、崖っぷち犬は思い入れのある事件だった。余談だが、バルコニーにいるハチは近所の子供たちにその名前をあだ名としてつけられたらしい。
ニュースになったから里親希望が全国各地から殺到して、抽選で飼い主が決まったとまでニュースになる。
でもさ、いかにも田舎の婆さんって感じの人が、孫が喜ぶって、抽選でおもちゃが当たったみたいに言ってるんだよね。しかも犬は飼ったことがないって…
ポチは最後まで心を全て開こうとはしなかった。そう、一旦、野に放たれた動物はなかなか人間を信用しない。これは、常識的なことだ。
ずーっと犬を飼い続けた私だって、犬のトラウマを取ることは大変だったし、経験者が良いのでは?ハッキリ言って、もう少しましな人はいないのかい?
でも、これからはきっといい飼い主になってくれると、自分を信じるように祈ったんだけど、
結局、情報化時代の今の犬の飼い方から見れば、虐待寸前の扱いを受けて、飼い主が飼育不可能ということでまた保健所に戻っているらしい。昔は、そんな扱いを受けている犬は確かにたくさんいたと思うし、当たり前だったような気がするが…
ああ、聞きたくないニュースだった。
自分は決して良い飼い主だとは思はないが、今日はポチの遺骨に手を合わせ、いつもよりハチを撫でてあげよう。
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