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牛肉輸入自由化の前から想像はついていたが、
日本の肉牛生産者は、高品質で対抗し、世界的に日本産牛肉を知らしめた。
もちろんそのおかげで、事業から撤退した方もいるだろう。しかし、市場のニーズを的確にとらえ、生産目的を変更することは、全ての業種に言えることで、格差ではないと思う。
アメリカの自動車生産、ビッグ3が今、存続の危機に面し、かの地の議会でも紛糾している。ラルフ・ネーダーが指摘した欠陥車問題、マスキー議員の排ガス規制等に対し、ロビイスト活動(族議員による陳情運動みたいなもの)で乗り切ろうとした過去の過ちを、21世紀になっても生かせなかったわけだ。アメリカ輸出枠自主規制なんて、社員や下請けには厳しい日本メーカーも、ここぞと協力しましたね。
潰れる会社の理由なんて大体同じだから書かないけど、GMの元役員デロリアンは著書の中で、「アメリカの自動車メーカーは、オートマティック・トランスミッションとパワーステアリング以来、消費者のための開発(発明)をしていない。」と言っている。これは、極論であるが、巨大マーケットの上に胡坐をかき、消費者のし好や時流に対して、細かいリサーチをしてこなかったつけがとうとうここまで来たということだ。
さて、話を牛肉に戻すと、アメリカ政府のごり押しによって始まった、牛肉輸入自由化、アメリカ政府の思惑通り、アメ牛が日本の市場を席巻し始めた、
アメリカの肉牛生産者が、売れないアメ車の分も頑張ったのか?
そんなことは絶対ないが、まったくのはずれでもない。
それは、オーストラリアの場合牛肉を輸入するなら一頭買いになるが、アメリカの場合は部位で輸入できるからだ。
顧客のニーズに合わせ、顧客の満足度を高める。
市場経済として当たり前のことを、実行したにすぎない。
表向き自由主義大国 としてのメンツを牛に頼ったアメリカ政府だが、とんでもない敵が現れた。
Bovine Spongiform Encephalopathy=B.S.E=牛海綿状脳症=狂牛病 だ!
日本で発症が確認されたら、アメリカ政府はすぐさま日本産牛肉の、輸入全面禁止処置を行った。それは、あの病気の恐ろしさを知っていれば、当然である。日本の牛肉生産者はこの危機を、全頭検査という手数が掛かるが確実な方法で、消費者にアピールし、マーケットを回復した。その時、アメ牛は、今思うと何を根拠に言っていたのか分からないけど、安全だとアピールし、火事場泥棒の如く、市場を食いまくった。
狂牛病は異常プリオン蛋白質によって引き起こされ、人間が発症すると、ヤコブ病といわれる。その潜伏期間はおよそ10年、最長50年という症例もあるらしい。
この潜伏期間が曲者だ!
キノコやフグ食べて毒に当たったら、すぐ発症するから、危険物として認識するけど、夕べ食べたプリオンステーキは、自覚症状としては当分何も起こらないから、あまり危険と認識しづらい。
それに、食中毒の患者になった人は、周りを見りゃ珍しくもない。でも、ヤコブ病の人はそういない。なかなか、その恐ろしさは伝わらない。
私の先輩は、20代で脳腫瘍が発見され、幸い早期だったため、手術も成功し、会社にも復帰した。働き盛りの40そこそこでヤコブ病が発症、2年ほどの闘病の末、亡くなった。原因は牛肉の食べ過ぎではなく、脳腫瘍の手術に、プリオンに汚染された人工硬膜が使われたからだ。若いころは、一緒に飲みに行ったり、女の子のことを話してたりしていた人が、ベッドの中で動かなくなり、機械によって生きている様を見せられたら、なんでこんな病気があるのか、腹が立ってきた。へたれ牛とか発病した牛を言うが、人間の場合は尊厳を奪っていくように思える。
直す手段のない 不治の病 なのだ。
その恐ろしい病を持つ牛がアメリカでも発見され、別に報復でも何でもなく、アメ牛は、日本から締め出された。
非常事態になり、アメ牛の生産管理の問題点が浮き彫りになってきた。ま、そういう大雑把なやり方が、低コストになっていた理由の一つでもあったわけだか…
アメリカ政府は何の根拠かわからんが、全頭検査は非科学的と、自分たちの管理のまずさをないがしろにして喚き立て、早く輸入を再開しろと日本政府を恫喝し始めた。全頭検査をしている日本産牛肉の禁輸を解除してないのに!
先述のとおり、アメ牛は部位売りという日本市場に合わせるスタイルをとって、市場を席巻した。なら、日本で行われている全頭検査をすればいいじゃないか、それが顧客ニーズだ。禁輸が長引くとダメージが大きくなるアメリカのある輸出業者は、
「うちで出荷する分は全頭検査いたします。」と手を挙げた。
全頭検査、確かに面倒くさいし金もかかるかもしれないが、牛肉単価を100g単位で判断する日本の消費者に悪影響を及ぼすほどのコストアップはないと判断したのだろう。その通りである。
しかーし、
アメリカ政府はその業者に圧力をかけた。
早期の輸出再開を望んでいるはずなのに?
当時は、検査によって、アメリカ国内での牛肉の流通が混乱するとか、コストアップによる経済損失とか素直に考えた。
「非科学的だ。」の繰り返しは調査捕鯨反対並みに非科学的。
結局、小泉がブッシュの土産として、ほとんど無策のまま、というか以前と全く同じように輸入は再開された。
一時的に牛丼復活のため、あれだけ列を作って盛況だった橙色の看板の店も、今は入ると当たり前に席は空いてる。全ては、あの狂牛病騒ぎの前のように…
でも、今でも思う、なぜアメリカはあそこまで強硬に、全頭検査に反対したのか?
普通、普段しない咳や、痛いところがあったら、大したことはないと考える人もいるだろうが、医者に「大丈夫ですよ」と言われるために病院に行く人もいると思う。アメリカは前者で、全頭検査は後者なのだろうと思っていたが。
絶対に、何かしら病気を指摘されそうな人も病院に行かない気がする。
全頭検査したら、安全で安心のはずなのに、
国民がパニックになって、手に負えないほどたくさんのB.S.Eが発見されるはず。なんて落ちは嫌ですよ。
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