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僕は、ずっと傍にいるから。
離れたりなんかしないよ。
ずっと。
ずっと。
二人で。
4月になって、骸の病室の窓からは降り注ぐ桜が見えた。
遂に、骸は起き上がれなくなって。
寝たきりとなった。
それでも、良かったんだ。
傍にいられれば。
骸が生きていれば。
それで良かったのに。
カミサマなんて、信じたことはないけど。
毎日願った、骸が一日でも長く生きられるようにと。
でも、やっぱり何処かで信じてなかったんだろう。
カミサマは、思った以上に残酷だった。
日に日に、骸の時間は削り取られてゆく。
怖い思いをさせてごめん。
一人にさせてしまう事を許して。
必ず行くから。
いつか。
いつかきっと。
骸の傍にいるから。
それまで、それまで、どうか。
一人にさせてしまう事を許して。
「………」
雲雀は、黙って桜の見える窓を見つめていた。
「如何したんですか。そんな顔をして」
ベッドに横たわったまま、前よりも小さな、弱い声で骸がたずねてきた。
そんな骸を、雲雀は静かに見つめる。
すると、骸は小さく笑って言った。
「ああ、桜にはあまりいい思い出がないですからね……」
確かに、いい思い出はない。
骸との最悪の出会い。
変な病にかかって、酷い思いをした。
その病が治ってからも、最初の方は少しトラウマが残って。
群れている草食動物を咬み殺そうとしても、桜が傍にあるせいでやる気が起きない。
でも、今はそんな事を考えていた訳ではない。
日に日に弱っていく骸。
それを見て雲雀は。
今まで感じたことの無い、恐怖を覚えていた。
大切なモノが遠ざかっていくのが、目に見えた。
失う恐怖を、雲雀は酷く強く感じた。
大切なモノが、成すすべもなく自分の掌から零れ落ちていく。
音もなく、残すものなど何も無い。
「消えて」しまう恐怖。
そんな恐怖に駆られている雲雀を見て、骸はふわりと笑った。
「僕に、あれだけ泣かせておいて、雲雀君だけ我慢しているなんて、許しませんよ」
雲雀の頬に骸の白く儚い手が、伸ばされてくる。
骸の冷たい掌が、雲雀の頬を優しく撫でた。
ああ。
僕は、何て臆病だったのだろう。
つう、と雲雀の頬を透明な雫が滑り落ちていく。
僕が骸の想いを受け止めてあげられるように。
こんなに近くに僕の想いを受け止めてくれる人がいたのに。
僕は、話す事すら出来なくて。
話してしまえば、君が困るかもしれないと思って、恐かった。
それが、君に心配を掛けていたなんて。
「雲雀君?僕に、言いたい事があるんじゃないですか?」
骸が優しく微笑みながら問いかけてくる。
「……あ………」
嗚咽で声が出なかった僕に、骸は優しく笑いかけてくれた。
「……し…」
これは、僕の飾りの無い気持ちだから。
「…死なないで……骸…」
そう言った僕を、骸は引き寄せて抱き締めてくれた。
抱き締めてくれた骸は、暖かかった………。
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