仕事の流儀 【哲学編】

時代は変わっても、人間の本質は変わらない。

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16:不適切な人事は組織の敗北につながる
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■勝てない提督や卑怯な司令官をすぐさま更迭した米軍

ガダルカナルは、帝国陸軍が初めて米軍と対峙し大敗北を喫した戦場です。
この島の戦闘の陰では、
決戦のため「お飾り人事」を徹底排除した米軍の指揮判断の見事さがありました。

ガダルカナル作戦の開始時、第一次、第二次ソロモン海戦では、
局地戦闘では日本海軍は健闘しており、太平洋南西地区の司令官だった
ロバート・ゴームレー中将は、現地作戦侵攻の準備で手間取り、
なおかつ極度の悲観論で司令部に敗北主義に近い報告を行いました。
そこで太平洋艦隊指令長官のチェスター・ニミッツ大将は、
ゴームレーを猛将ハルゼー中将と交代させています

ハルゼーへの交代効果は目覚しく、すぐさま現地に移動し精力的に活動、
直ちに日本艦隊と決戦をするための計画を練り上げました。
勇猛果敢さから「ブル・ハルゼー(雄牛ハルゼー)」と呼ばれ、
その後、レイテ海戦ほか日本占領前後まで各作戦で活動を続け、
米海軍の戦勝に大きく貢献した一人として、歴史に名を残しています。

軍人として合理的な判断力があり、勇猛果敢な行動力を持つ指揮官ではなく、
日本軍との戦闘にいたずらな悲観論を持ち、現場把握力に欠けたゴームレーが米海軍の指揮をとれば、
少なくとも日本海軍にとってかなり有利な状況が訪れたはずです。

第一次、第二次ソロモン海戦で、局部的な優勢を得ていた日本海軍が第三次では米海軍に押されたのは、
ハルゼーが海戦に最新鋭艦の投入を迷わず決めたからであるとも言われています。
たった一人の優れた人材配置が、ここまで大きく戦局を左右するのです。

■評価制度の指標変更は、組織運営最大のイノベーション

「評価制度」は組織運営において、最大のインパクトを与えるイノベーションの一つです。
「ブル・ハルゼー」が抜擢されたことで、米海軍全体が次のことを理解したからです。

(1)戦場で迅速な行動力と勝利への執念がある人物は高く評価される
(2)非効率で行動が遅く、成果を挙げない人物は降格される

明確な指針が浸透することで、評価される指標に合致する行動を全軍人が目指します
フレッチャーやゴームレーの左遷は
「無能であればクビにする」という組織の方針を明示したことにもなるのです。

米軍の人事評価指標と異なり、人事の指標で悪影響ばかり生み出したのが日本軍です。
これでは、敗戦や無謀な作戦を立案・実行しても責任をとらなくて済む、
と将校が認識しても不思議ではありません。人事評価とは組織に対するメッセージです。

「日本軍は結果よりもプロセスを評価した。個々の戦闘においても、戦闘結果よりはリーダーの意図とか、やる気が評価された。(中略)このような志向が、作戦結果の客観的評価・蓄積を制約し、官僚制組織のおける下克上を許していったのである」
慎重論を唱えた下士官や参謀は「やる気・意欲がない」という理由で左遷、更迭されています。

無謀・無能でも勇壮で大言壮語し、やる気を見せるなら罪に問わない」というメッセージを
関係者全員に発信するなら、組織内に無責任な失敗者が続出するのは当然です。
人事評価と人材配置は、それ自体が組織のメンバーに対して強い影響力を発揮します。
なぜなら、組織を構成する人物が生み出した成果をどう評価して、その人物をトップがどう扱うかは、
メンバー全員の関心事だからです。

人事評価と配置を「組織が発する重大メッセージ」であると捉えれば、
日本軍内に無謀・無責任極まりない参戦立案をする人物が増えていったこと、
その一方で合理的思考を持ち、慎重論を唱える人物が減っていった理由も容易に想像できるでしょう。
日本軍の人材を評価配置する指標自体が、
無謀極まる指揮官・参謀を数多く育てる温床になった
のです。

■米軍が目標達成に向けて一直線に突き進めた理由
信賞必罰をできなかった日本軍が「愚かさの芽」が大きく育つのを放置したのに対し、
米軍は人材評価指標の課題を見事に克服して、勝利へ一直線に進みました

米軍は、少将を戦意不足という理由で戦闘中に解任し
真珠湾で大打撃を受けた基地司令官を軍事裁判にかけるなど、
責任の所在をはっきりさせ、
新たに大きな失敗が生まれる可能性を許さない姿勢を徹底させています


米軍は現地指揮官に、部下の無能指揮官を罷免する人事権まで与えています。
士気のない、作戦の成功を邪魔する指揮官を即座に排除するためです。

日本軍では、第一線の高級指揮官に人事権が与えられておらず、無能な指揮官の交代を、陸軍省に上申するだけで、正式な発令があるまでは指揮権を奪うことはできませんでした。

明らかに無能でも、日本軍内では現地第一線に留まり続けてしまうことができたのです。
これでは、無能指揮官の部隊に所属する日本軍兵士はたまったものではありません。

米軍は、第二次世界大戦で「徹底した能力主義」を貫いており、戦争の勝利という目標達成へ向け、一直線に組織の全力を発揮させる体制を敷いてきました

組織内に内在する「人事・評価制度」は、組織の性格や能力を規定し、目標達成を邪魔する要員を作り上げることもあれば、有効に設計し運用することで、目標達成への一直線に進む、強力な組織を生み出すこともできるのです。


■ミニッツの人事評価制度
・継続して6ヶ月以上、巡洋艦以上の艦長経験を積んだ大佐を対象
・その中からまず海軍省人事局が適格者を選ぶ
・次に9人ないし11人の将官で構成する昇進委員会の投票実施
・投票結果を海軍長官、作戦部長、人事局長、航空局長その他が合議
・合議で四分の三以上の賛成で昇給が決定する

この人事評価制度に対して、ミニッツは次の二つのメリットがあることを指摘しています。
(1)選定プロセスに感情が入り込む余地を排除したので、選ばれた人は結果に自信を持つ
(2)選ばれなかった者も、次の機会に希望を持って能力向上に励むことができる。

「優れた人材」を最適な場所に配置することは、戦場の勝敗に直結する最重要要素です。
そして「○○という部分に優れた人材」を抜擢するという、人事評価の指標を明示すれば、
組織内で「○○」の指標に優れた人材を増殖させる効果があります。

評価指標を正しく切り替えることが、組織運営のイノベーションであるゆえんです。



■人事は組織の限界と飛躍を決める要素である

優れた人材配置が組織の可能性を押し広げることに対して、
「お飾り人事」が組織の限界を狭め、敗北を作り出すことが、日米の戦史からもわかります。
実務的な成果や、能力以外の要素で人材を配置することにより、
社内から見た都合を一部優先させることができたとしても、
社外に待ち受けている問題、課題はそのような「内側の都合」を一切考慮してくれません


お飾り人事は相応の理由もあるので、改善するのはとても難しいという指摘もあるでしょう。
しかし、「売上を向上させる」「組織を活性化する」「会社の危機を救う」のはもっと難しいはずです。
「勝つ側は必要な行動を行い、負けた側はその理由を述べるだけ」という言葉があります。
出来ない理由を上手に説明しても、会社が勝てるようにならないのは、まさに警句の指摘する通りです。
不適切な人事の放置は、組織全体の大敗北につながる危険性がある一方、
正しい人事は組織を飛躍させる最強の武器にもなるのです。

■まとめ
厳しい課題に直面していたら、「お飾り人事」を徹底排除し、課題と配置人材の最適化を図ること
能力のない人物を社内の要職に放置すれば、競合企業を有利にさせる以外の効能はない

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「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ
[単行本(ソフトカバー)] ダイヤモンド社
鈴木 博毅 (著)


内容紹介
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震災や原発事故への国の不十分な対応、リスク管理、情報の隠蔽……。

また、長年日本を牽引してきたソニーをはじめとする製造業の混迷、
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