今回は、Vol.0019:『血と薔薇 3』第三号(澁澤龍彦責任編集)(天声出版)に続き、事実上「最終巻」となってしまった『血と薔薇 4』第四号(本号のみ平岡正明責任編集)(天声出版)をご紹介いたします。
神彰(じんあきら)氏から『血と薔薇 4』第四号の編集を任された平岡正明氏は、『ユリイカ』のなかで下記のように回想しています。
"『血と薔薇』は三号までが澁澤龍彦の編集であり、敗戦処理号のかたちとなった四号の編集者が俺だった。その旨を挨拶に行ったとき、澁澤龍彦はこう言った。
− きみが損するよ。神彰には金がない。
俺は、ひきうけてから事情がわかったが、こちらもひっこみがつかなくなった、やらせてもらいますと答えたように記憶している。
場所は北鎌倉の彼の家だった。書斎の籐椅子にすわり、つむぎの和服を着て、背後の壁には『英名二十八衆句』中、大蘇芳年の「稲田九蔵新助」(女を鮟鱇の吊し斬りにしている絵)がかかっていたような気がするが、それは以前に訪れた滑川わきの家と記憶がまざりあっているかもしれない。
彼を肝甕の如しと評したのは三島由紀夫だったと思う。この評言はサド裁判時の度胸のよさにてらして世人を納得させるものがあるが、そのほかに、ごく日常的な場面での澁澤龍彦の気腑のよさをさしているのではないかとも思っている。ただその種の澁澤龍彦伝説は住む世界を異にしたので俺は知らない。俺に言えることは、『血と薔薇』ひきつぎの時点で会った澁澤龍彦に侠客の風格を感じたということである。"
(平岡正明)
「澁澤龍彦の侠 ■雑誌『血と薔薇』とその後」
『ユリイカ〜総特集 澁澤龍彦〜』昭和63年6月臨時増刊号(青土社)所収
さて、最終巻コンテンツは以下のとおり。
特集=生きているマゾヒズム
マゾヒストの精神病理 伊野 浩 P 20
いそぎんちゃくの思想−菊屋橋101号ノート 平岡正明 P 30
鬼胎誕生−A・チマサヲの出産記による交感価値の測定 足立正生 P 38
(スクリーン)
切り裂かれた銀幕−映画におけるサド・マゾ幻想 佐藤重臣 P 47
ファンタジー
ガラスのヴァギナ 唐 十郎 P 67
カラーオフセット・子宮幻想 カメラ・吉岡康弘 P 3
ブラック・ポルノグラフィー家畜人ヤプー 沼 正三 P205
原理としてのマゾヒズム−<家畜人ヤプー>の考察 安東 泉 P274
エッセイ・日本の天上界 稲垣足穂 P 82
グラビア/まだとむらいの序の口 カメラ・吉岡康弘 P197
詩・みごとな新世界 田村隆一 P 78
小説『少女地獄』より 火星の女 夢野久作 P 93
<薔薇画廊>ハンス・ベルメール 解説 ・桑原住雄 P153
責め絵/英名二十八衆句 浮世絵提供・山本 孝 P 93
小説 美女破壊工房 平岡正明 P162
悪魔儀礼と黒ミサ 吉田八岑 P 80
黄泉からのオルグ/M・モンロー解裂 木下成人 P186
血と薔薇 次号予告
表紙・イメージティレクション=粟津潔 木下太郎 カット=山本美智代 小笠原正勝
イラストレーション=渋川育由 中村宏 西部亮一 宮下芳子 橋本修
画像は、平岡正明責任編集『血と薔薇 4』第四号(天声出版)(昭和44年6月1日発行)です。
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