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美術

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今回も前回のART BREAK Vol.0025:「生のフリーズ vol.03 『思春期』エドヴァルト・ムンク」に続きまして、「『接吻』エドヴァルト・ムンク」をご紹介したいと思います。

"その後三年間に、私はフリ−ズのためのいくつかのスケッチや作品を集めた...そのフリ−ズというのは、ベルリンで1983年にはじめて出陳されたものだ。『叫び』、『接吻』、『吸血鬼』、『愛する女』などがそれであった。

あれは写実主義と印象主義の時代であった...その頃、私は病的に疲れた気分か愉しい気分でいるとき、よくいつも描きたいと思っていた風景をみつけたものだ...私はイーゼルをとってき...それを立て掛け、そして自然のままの絵を描いたものだ。...
それはいい絵になった...しかし私が描こうとしたものにはならなかった...病的な気分か愉しい気分のなかでみたようには、どうしても描くことができなかった。...
このようなことがたびたび起った。そこで私は同様の場合、前に描いたのを削り取ることを始めた...私は記憶のなかで最初の形象...最初の印象を探し求めた...そしてそれを取り戻そうと努めた。"
(エドヴァルト・ムンク)(オスロ、1918年)(注1)

■『接吻』(1892-97年)

「愛」のチクルス(シリーズ)のはじめの『夏の夜の夢』(1893年)は、後に『声』として知られる作品です。つぎに愛の最初の経験としての『接吻』が来ます。
ここでは両性の合体が示されます。街路を見下す、水槽のようにうす暗い部屋。そこではパリで描かれた前作ほど窓に重きが置かれていません。引かれたカーテンの陰に身を寄せた二人は、黒っぽい服を着けたまま抱き合っています。抗しがたい流れの波頭に漂うもののように、二人は愛の抱擁のなかでひとつの輪郭にからみあい、もつれあって一体になってしまっています。女の後ろの暗がりに壁紙にまぎらすようにして、異形なものの面相がいくつか描きこまれています。

ウンテル・デン・リンデンの個展でこれを見たプシビシェフスキは『E・ムンクの作品』のなかで、『接吻』を下記のように評しています。

"ひとは二つの人間の姿を見る、その顔はひとつに融けあっている。そこには一人一人を識別できる輪郭はなにもない。ひとが見るのは融解点だけであり、それはひとつの大きな耳のように見え、それがまた血の恍惚のなかでつんぼになるのだ。それは溶けた肉を捏ねあわせた塊りのように見え、そこにはなにか胸のわるくなるようなものがある。たしかにこの象徴化の方式は異常である。しかし接吻という情熱のすべて、痛みにみちた情欲のおそるべき力、個人的意識の消失、二つのむきだしの個性のあの融合...すべてこれらのことがきわめて率直に描出されているのだから、われわれはその胸のわるくなるような異常な様相をも見逃さなければならないということだ。"

(『E・ムンクの作品』)(注2)

1896年初夏、パリの新しいビングのギャラリー<サロン・ド・ラール・ヌーヴォー>(Salon de l'Art Nouveau)でムンクの展覧会が開かれたとき、ストリンドベルイはバルザックの一句を題辞としたムンク論を、各種のモティーフについて終始一貫した主観的な評釈を書き、それは象徴的な自由散文詩のかたちで『ラ・ルヴェー・ブランシュ誌』に発表されました。

"接吻、融合する二つの存在、
その小さい方は、鯉のかたちをしており、
大きい方をいまにも飲み込まんとしている。
害虫のように、細菌のように、吸血鬼のように、
そして女たちがするように、
さもなくば、男は幻想を与え、生み、
女がそれに報いる。
男は頼む、お願いだから、
魂と、血と、自由と、幸せを与えてください。
何と引き替えに?
僕の魂と、血と、自由と、平和と、
幸せを与える楽しみ、
それと引き替えに...。"

(ストリンドベルイ)
(『ラ・ルヴェー・ブランシュ誌』1896年、525-526頁)(注3)

『接吻』のモティーフをムンクは、いろいろな手法のヴァリエイションで何度も繰返していますが、同年の油彩画のほか、1895年の銅版画があり、1897-1902年には画面の簡略化がさらに進められて、版木の木目をデコラティブなバックにした有名な木版作品にもなっています。

*注1:『みずえ 特集:ムンク 孤独の翳の傷痕』(NO.788,1970)(美術出版社)「生のフリ−ズ」鈴木正明訳(P25〜45)に拠る。
*注2:『ムンク 世紀末までの青春史ドキュメント』鈴木正明著(美術出版社)に拠る。
*注3:『ムンク画集 油彩、下絵、習作』アルネ・エッグム著/西野嘉章訳(リブロポート)に拠る。

●以上、作品解題及び翻訳は、『ムンク 世紀末までの青春史ドキュメント』鈴木正明著(美術出版社)(昭和53年1月31日発行)、『みずえ 特集:ムンク 孤独の翳の傷痕』(NO.788,1970)(美術出版社)「生のフリ−ズ」鈴木正明訳(P25〜45)に拠っています。

画像は、『ムンク画集 油彩、下絵、習作』アルネ・エッグム著/西野嘉章訳(リブロポート)(平成3年12月6日発行)より。


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