◆デカダンスの彼方へ.....◆

"デカダンス"「映画」「文学」「美術」を語りましょう♪

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"1週間前にベティと出会い、毎晩セックスした。"
"嵐の前ぶれだった....."

(『ベティ・ブルー〜愛と激情の日々〜 / 37°2 LE MATIN』巻頭字幕スーパーより)

"狂気の愛"、"愛の狂気".....。


■わたしの『ベティ・ブルー〜愛と激情の日々〜 / 37°2 LE MATIN』論

●映画関係のサイトでレビューを覗いてみると、"賛否両論"。

それは何故でしょう?

それは、この映画が身をもって「理解できた」か「理解できなかった」かの違いなのでしょう。
常夏の赤道直下の国へ行って、凛とした「雪」の降る美しさを"言葉"のみで語ってその本質が果して伝わるでしょうか?
ユーラシア大陸の内陸部(たとえばモンゴル)に行って、紺碧の「海」の潮騒や潮の馨りを"言葉"のみで語ってその本質が果して伝わるでしょうか?
答えは「否」です。

人生にはその個人の「経験値」を超えてしまうと、「想像」や「情報」でしか理解できないことがたくさんありますし、われわれ自身が"百科事典"になる必要は全くないのですから、学校で学習する「最大公約数」的な必須の知識を超える「専門的」な知識と「アウトロー的」な知識、逆にわれわれはそういった知識を全部鵜のみにして取り込む(知る)必要もないと考えます。

映画関係のサイトのレビューで本作を「くだらない...」云々のコメントを見るとがっかりします。このような、「映画のほうで観る人間を選ぶ」ような映画の場合、「映画(監督、製作者サイド)」のほうでも、八方美人的な阿諛は一切ないはずです。

「くだらない」「皮層的だ」と"偽善者ぶる"前にひとこと、(わたくしも本作を完全に理解しているなどと僭越なことは申しませんが)「自分の理解の限界を超えている。」、「理解できない。」、ただそれだけでいいのではないでしょうか?

●これは、実際にベティみたいな女性と付き合ったことがなければ描けないリアリズム、エミール・ゾラ以上のリアリズムです。

間違いなく原作・脚本のフィリップ・ディジャンは、ベティと等身大の女性を愛したことがあるのでしょう.....

"femme fatale(ファム・ファタール)"の最左翼.....

わたしも10年くらい前にベティそっくりの"気質"をもった女性と付き合ったことがありました(現在は全く連絡をとっておりませんが、その女性は現在も健在のはずです).....
ベティのような女性は、"こわれやすい"しかし常人の何倍も"繊細"で"pureな魂"を持った天使だといえます。

リチャード・ギア主演の『心のままに / Mr.JONES』ではありませんが、もしその女性を愛しているなら決して「治そう」と思うのは間違いです。
何故なら「現状」が、彼女にとっての「スタンダード(正常)」なのですから.....

こっちに「合わせさせる」のではなく彼女に「合わせて」あげましょう。それができないのであれば、彼女のために"きっぱり"別れてあげましょう。そのほうがお互いのためです。
私も精神科医ではないので、"統合失調症(躁鬱病)"や強度の"ヒステリー"に対する正確な臨床的な対応、カウンセリング術は知らないですけれども、自分がかつて愛したベティのような女性との経験からすると、彼女の世界の"正常なバランス"を保つには、"愛"しかありません.....それも全てを犠牲にして、"献身的におしみなく与える愛"しかありません。それに必要なのは、男のキャパシティ(包容力)。精神的、肉体的な強靱さ。

現実の世界で、ベティのような女性と知り合ってしまった男性諸氏!彼女を本当に愛しているのであれば"愛"に殉じてください。
われわれは、6・3・3制の偽善的、マークシート的画一化社会の中で「根拠なきスタンダード」を盲信し、安逸を貪っている。そして豚のように眠る.....

いったいこの世の中何が「確か」なのでしょうか?何故、誰もその根源のところ、「本質」を疑わないのでしょう?
われわれからみれば「狂人」でも、「狂人」の側からみればわれわれが「狂人」にちがいありません。まさにピエール・ブールが『猿の惑星 / PLANET OF THE APES』で暴いてみせた世界。

『ベティ・ブルー〜愛と激情の日々〜 / 37°2 LE MATIN』のベティ(ベアトリス・ダル)と、『心のままに / Mr.JONES』のジョーンズ(リチャード・ギア)はこの欺瞞に満ちた現代の「統合失"疑"症」的社会という伽藍を突き崩しているといえましょう。

■内容に関して

●タイトルについて

これも山のような解釈があるようですが、わたくしは下記のように解釈しております。
「37°2 LE MATIN」、直訳すると"朝、37度2分"。

一般的には、女性が一番妊娠しやすい体温だとされており、これに関連づける解釈が多いようです。
わたくしは、「微熱」と解釈しております。われわれの通常の体温は36°前後。しかし、血液型でRh-AB型の方もいれば、身長が2m超の方もいます。
37°2の体温を「平熱」と考えると、36°は異常に低い体温になります。つまり37°2 という「微熱」の体温は、ベティの「平熱(スタンダード)」=「激情型(躁鬱、強度のヒステリー)」という人格のアレゴリーと解釈しております。

●ベティの炯眼について

"こわれやすい"しかし常人の何倍も"繊細"で"pureな魂"を持ったベティ.....
それゆえ、その神がかった、ことの「本質」をとらえてしまう"天使の眼"は、社会のさまざまな欺瞞を見抜いてしまい、それに我慢ができません。

ゾーグの足元を見てそれにつけ込むずる賢い親方、大手出版者の編集長の座に胡座をかいて"新人発掘"の気が全然ない怠慢編集者、ピザ・レストランで店員であるベティに"欲求不満"の八つ当たりする女性客、彼ら全員にベティはキレる.....さらに、ゾーグの小説家としての才能を発見し、近所の雑貨店(スーパー)の少年のピアノの天才的な才能も見抜いてしまいます。

●ベティ="あげまん"

精神と人生の破滅という下降線を辿ってゆくベティとは対照的に、ゾーグは、「修理工」→「ピザ・レストラン店員」→「ピアノ店主」→本物の「小説家」と人生が上昇してゆきます。ベティのお蔭で.....

●オープニングについて

クレーン使用による、俯瞰カットからのオープニング。押し掛け女房的に登場する、ベティ(ベアトリス・ダル)。

よく見ると、「裸にエプロン」です。
ここからジャン=ジャック・ベネックス監督のベティに関する常軌を逸した"アブナイ女"の気配を漂わせる演出がスタートします。

●ゾーグの職業について

まあどうでもいいことですが、たまたま巻頭の海浜地区のレンタルのコンドミニアムの住込み管理人をやってて、オーナーに足元を見られて"ペンキ塗り"をやらされているので、ペンキ職人と書かれていますが、リサ(エディの彼女)の配管を直してたくらいですから、修理屋、今で言う「便利屋」といったところではないでしょうか?

●ジャン=ジャック・ベネックス監督の「小わざ」いろいろ

巻頭のペンキ塗りのシーンでゾーグの脇でアルト・サックスを吹いていたおじいさんは渋かったですよね。それから、旧式のイエローのベンツのバック・トランクからゾーグがベティの誕生日のケーキを取り出すシーン、自分のピアノ店に戻って来ると近所の雑貨店(スーパー)の悪戯好きな少年が驚くべき腕でピアノを弾きこなしているシーン.....とりわけ、好きなのは「テキーラ・ラピド」!! わたくしも学生時代、ディスコやBARで、カウンターで"バーン""シュワー"とやってました。


"ボクは人生の意味を求めてきた.....。"
"君と生きることこそボクの生きがいだ。"

(『ベティ・ブルー〜愛と激情の日々〜 / 37°2 LE MATIN』字幕スーパーより)

P.S.ジャン=ユーグ・アングラード Jean-Hugues Anglade、まさにフランスのAL PACINO、シビレます。


■『ベティ・ブルー〜愛と激情の日々〜 / 37°2 LE MATIN』1986年(フランス)

監督:ジャン=ジャック・ベネックス Jean-Jacques Beineix
脚本:フィリップ・ディジャン Philippe Djian
原作:フィリップ・ディジャン Philippe Djian
撮影:ジャン=フランソワ・ロバン Jean-Francois Robin
音楽:ガブリエル・ヤーレ Gabriel Yared
出演:ベアトリス・ダル Beatrice Dalle
ジャン=ユーグ・アングラード Jean-Hugues Anglade
コンスエロ・デ・ハヴィランド Consuelo de Havilland
ジェラール・ダルモン Gerard Darmon

画像は、映画『ベティ・ブルー〜愛と激情の日々〜 / 37°2 LE MATIN』(オリジナル・レンタルビデオ)CFX-3907(CBS / FOXビデオ・ファーイースト株式会社)です。

閉じる コメント(2)

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これ、音楽が好きで、いつも聴いていたのを思い出した。実家に置いてきたな〜そっか、タイトル解釈〜激情〜か・・面白いかも。はわたしは妊娠説派だった。

2006/3/11(土) 午後 0:24 [ amai ]

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この作品好きです。そうだ!確かにベティは「あげまん」ですねぇ〜。最後のネコちゃんのシーンが好き!あと、見終わると必ずオリーブを食べたくなります。ビン抱えて食べます(笑)「テキーラ・ラピド」は無理!!

2006/7/27(木) 午後 7:05 MIYA


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