◆デカダンスの彼方へ.....◆

"デカダンス"「映画」「文学」「美術」を語りましょう♪

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今回は、『血と薔薇 1』創刊第一号(澁澤龍彦責任編集)(天声出版)(昭和43年10月発発行)所収の巻頭グラビア■特集1 男の死 LES MORTS MASCULINES(P 1) より、「聖セバスチャンの殉教」(三島由紀夫氏)をご紹介します。

Vol.0006:『三島由紀夫おぼえがき』(立風書房)に澁澤龍彦氏の興味深い以下の論考があります。

"三島氏は最近のエッセーで、「道義的革命」という、まさに私たちの意表をつくような新語(ネオロジスム)を創始した。この氏独特の革命概念が、果して社会学的に普遍妥当性を得るものか否かの検討はさておき、体制の全否定には決して向かわず、制度自体の純粋性をめざし、つねに敗北をくりかえすという(ロマン主義的イロニーを絵に描いたようなものだ!)、その道義的革命なるものの本質的性格が、三島氏のすべての作品の底に横たわっている暗い死への衝動と、微妙な照応を示していることは否めないだろう。

おそらく、この道義的革命のイメージにぴったり対応するものは、ブルータスではなくて、あの三島氏のお気に入りの聖セバスティアンであろう。(私は、セバスティアン・コンプレックスという言葉を使っている心理学者はいないかと思って、片っぱしから手もとの文献に当ってみたが、ついにこれを発見することを得なかった。)

ディオクレティアヌス帝に愛されたセバスティアンの叛逆は、父なるローマと皇帝に背きつつも、それが窮極的には反対衝動を志向し、自己破壊の欲求につながってしまうというところに特徴がある。フロイトならば自己懲罰というだろう。三島氏の作品にしばしば登場する、挫折の宿命をもった叛逆的青年のあらゆるイメージは、この原型のなかに吸収され、ぴったりおさまってしまう。
私は、三島氏の文学を解明すべきもっとも重要な鍵の一つが、ほかならぬ、この「セバスティアン・コンプレックス」ではないか、と思っている。"

(澁澤龍彦)

画像は、『血と薔薇 1』創刊第一号(澁澤龍彦責任編集)(天声出版)(昭和43年10月発行)所収■特集1 男の死 LES MORTS MASCULINES(P 1) より、「聖セバスチャンの殉教」 モデル:三島由紀夫氏、カメラ:篠山紀信氏です。

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「新宿アートシアター」前の『憂国』ポスターと三島由紀夫氏です。

ポスターには、下記の「推薦文」が添えられています。

"《愛と死の儀式》に於て、三島由紀夫と堂本正樹は、抒情的色彩に彩られた臨床学的な精密さで、一人の青年将校の腹切りと、その死體の上に自ら短刀で咽喉を突いて果てる彼の若き妻との物語りを詳述する。

突如としてスクリーンの上に迸り溢れ出る血潮と内臓は、まさに、愛ゆえに身を生贄に捧げる行為の最後の成就を證しするものに他ならぬ。
残酷さの中にある何という優しみ、屠殺台上における何という安らかな陶酔、情熱に燃え滾る茨の上の何という慎み。
それらは観音をして茫然自失たらしめ、その魂を揺り動かし、雷にて打ち砕くのである。

ねがわくは、四十才の小説家、三島由紀夫が、
この映画製作の経験を生かし、
再びこのような映画を製作し、更に立派な作品を生み出してくれんことを。"

(ピエール・ビラール氏)

シネマ'66誌 三月号

画像は、『グラフィカ 三島由紀夫』(新潮社)(初版本:平成2年9月10日発行)より。

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「辞世の句」

"益荒男がたばさむ太刀の鞘鳴りに幾とせ耐えし今日の初霜"

"散るをいとふ世にも人にもさきがけて散るこそ花と吹く小夜嵐"

昭和四十五年十一月二十五日
楯の会隊長 三島由紀夫

画像は、『STUDIO VOICE Vol.182 特集★再考 三島由紀夫の檄』(INFAS)(平成3年2月1日発行)(P16)所収。モデル:三島由紀夫氏、カメラ:篠山紀信氏です。

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「檄」

われわれ楯の会は、自衛隊によつて育てられ、いわば自衛隊はわれわれの父でもあり、兄でもある。その恩義に報いるに、このやうな忘恩的行為に出たのは何故であるか。かへりみれば、私は四年、学生は三年、隊内で準自衛官としての待遇を受け、一片の打算もない教育を受け又われわれも心から自衛隊を愛し、もはや隊の柵外の日本にはない「真の日本」をここに夢み、ここでこそ終戦後つひに知らなかつた男の涙を知つた。ここで流したわれわれの汗は純一であり、憂国の精神を相共にする同志として共に富士の原野を馳駆した。このことには一点の疑ひもない。われわれにとつて自衛隊は故郷であり、生ぬるい現代日本で凛烈の気を呼吸できる唯一の場所であつた。教官、助教諸氏から受けた愛情は測り知れない。しかもなほ、敢てこの挙に出たのは何故であるか。たとえ強弁と云はれようとも、自衛隊を愛するが故であると私は断言する。
 
われわれは戦後の日本が、経済的繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ、国民精神を失ひ、本を正さずにして末に走り、その場しのぎと偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込んでゆくのを見た。
政治は矛盾の糊塗、自己の保身、権力慾、偽善にのみ捧げられ、国家百年の大計は外国に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と伝統を冒涜してゆくのを、歯噛みをしながら見てゐなければならなかつた。われわれは今や自衛隊にのみ、真の日本、真の日本人、真の武士の魂が残されてゐるのを夢みた。しかも法理論的には、自衛隊は違憲であることは明白であり、国の根本問題である防衛が、御都合主義の法的解釈によつてごまかされ、軍の名を用ひない軍として、日本人の魂の腐敗、道義の頽廃の根本原因をなして来てゐるのをみた。もつとも名誉を重んずべき軍が、もつとも悪質な欺瞞の下に放置されて来たのである。自衛隊は敗戦後の国家の不名誉な十字架を負いつづけて来た。自衛隊は国軍たりえず、建軍の本義を与へられず、警察の物理的に巨大なものとしての地位しか与へられず、その忠誠の対象も明確にされなかつた。われわれは戦後のあまりに永い日本の眠りに憤つた。自衛隊が目ざめる時こそ、日本が目ざめる時だと信じた。自衛隊が自ら目ざめることなしに、この眠れる日本が目ざめることはないのを信じた。憲法改正によつて、自衛隊が建軍の本義に立ち、真の国軍となる日のために、国民として微力の限りを尽くすこと以上に大いなる責務はない、と信じた。
 
四年前、私はひとり志を抱いて自衛隊に入り、その翌年には楯の会を結成した。楯の会の根本理念は、ひとへに自衛隊が目ざめる時自衛隊を国軍、名誉ある国軍とするために、命を捨てようといふ決心にあつた。憲法改正がもはや議会制度下ではむづかしければ、治安出動こそその唯一の好機であり、われわれは治安出動の前衛となつて命を捨て、国軍の礎石たらんとした。国体を守るのは軍隊であり、政体を守るのは警察である。政体を警察力を以て守りきれない段階に来て、はじめて軍隊の出動によつて国体が明らかになり、軍は建軍の本義を回復するであろう。日本の軍隊の建軍の本義とは「天皇を中心とする日本の歴史、文化、伝統を守る」ことにしか存在しないのである。国のねぢ曲がつた大本を正すといふ使命のため、われわれは小数乍ら訓練を受け、挺身しようとしてゐたのである。
 
しかるに昨昭和四十四年十月二十一日に何が起こつたか。総理訪米前の大詰といふべきこのデモは圧倒的な警察力の下に不発に終わつた。その状況を新宿で見て、私は「これで憲法は変わらない」と痛恨した。その日に何が起こつたか。政府は極左勢力の限界を見極め、戒厳令にも等しい警察の規制に対する一般民衆の反応を見極め、敢えて「憲法改正」といふ火中の栗を拾はずとも、事態を収拾しうる自信を得たのである。治安出動は不用になつた。政府は政体維持のためには、何ら憲法と抵触しない警察力だけで乗り切る自身を得、国の根本問題に対して頬つかぶりをつづける自信を得た。これで、左派勢力には憲法護持の飴玉をしゃぶらせつづけ名を捨てて実をとる方策を固め、自ら、護憲を標榜することの利点を得たのである。名を捨てて実をとる政治家にとつてはそれでよかろう。しかし自衛隊にとつては致命傷であることに、政治家は気づかない筈はない。そこでふたたび、前にもまさる偽善と隠蔽、うれしがらせとごまかしがはじまつた。
 
銘記せよ!実はこの昭和四十五年(注・四十四年の誤りか?)十月二十一日といふ日は、自衛隊にとつて悲劇の日だつた。創立以来二十年に亘つて、憲法改正を待ちこがれてきた自衛隊にとつて、決定的にその希望が裏切られ、憲法改正は政治的プログラムから除外され、相共に議會主義政黨を主張する自民党と共産党が非議会主義的方法の可能性を晴れ晴れと払拭した日だつた。論理的に正に、その日を堺にして、それまで憲法の私生児であつた自衛隊は「護憲の軍隊」として認知されたのである。これ以上のパラドックスがあらうか。
われわれはこの日以後の自衛隊に一刻一刻注視した。われわれが夢みてゐたやうに、もし自衛隊に武士の魂が残つてゐるならばどうしてこの事態を黙視しえよう。自らを否定するものを守るとは、なんたる論理的矛盾であろう。男であれば男の矜りがどうしてこれを容認しえよう。我慢に我慢を重ねても、守るべき最後の一線をこえれば、決然起ち上るのが男であり武士である。われわれはひたすら耳をすました。しかし自衛隊のどこからも「自らを否定する憲法を守れ」といふ屈辱的な命令に対する男子の声はきこえては来なかつた。かくなる上は、自らの力を自覚して国の論理の歪みを正すほかに道はないことがわかつてゐるのに、自衛隊は声を奪はれたカナリヤのやうに黙つたままだつた。
われわれは悲しみ、怒り、つひには憤激した。諸官は任務を与へられなければ何もできぬといふ。しかし諸官に与へられる任務は、悲しいかな、最終的には日本から来ないのだ。シヴィリアン・コントロールが民主的軍隊の本姿であるといふ。しかし英米のシヴィリアン・コントロールは軍政に関する財政上のコントロールである。日本のやうに人事権まで奪はれて去勢され、変節常なき政治家に操られ、党利党略に利用されることではない。

この上、政治家のうれしがらせにのり、より深い自己欺瞞と自己冒涜の道を歩まうとする自衛隊は魂が腐つたのか。武士の魂はどこへ行つたのだ。魂の死んだ巨大な武器庫になつて、どこへ行かうとするのか。繊維交渉に当つては自民党を売国奴呼ばはりした繊維業者もあつたのに、国家百年の大計にかかはる核停条約はあたかもかつての五・五・三の不平等条約の再現であることが明らかであるにもかかはらず、抗議して腹を切るジェネラル一人自衛隊からは出なかつた。沖縄返還とは何か?本土の防衛責任とは何か?アメリカは真の日本の自主的軍隊が日本の国土を守ることを喜ばないのは自明である。あと二年のうちに自主性を回復せねば、左派のいふ如く、自衛隊は永遠にアメリカの傭兵として終わるであらう。
 
われわれは四年待つた。最後の一年は熱烈に待つた。もう待てぬ。自ら冒涜する者を待つわけには行かぬ。しかしあと三十分。最後の三十分待たう。共に起つて義のために共に死ぬのだ。
 
日本を日本の真姿に戻して、そこで死ぬのだ。生命尊重のみで魂は死んでもよいのか。生命以上の価値なくして何の軍隊だ。今こそわれわれは生命尊重以上の価値の所在を諸君の目に見せてやる。それは自由でも民主主義でもない。日本だ。われわれの愛する歴史と伝統の国、日本だ。これを骨抜きにしてしまつた憲法に体をぶつけて死ぬ奴はゐないのか。もしゐれば、今からでも共に起ち、共に死なう。われわれは至純の魂を持つ諸君が、一個の男子、真の武士として蘇へることを熱望するあまりこの挙に出たのである。

昭和四十五年十一月二十五日
楯の会隊長 三島由紀夫

画像は、『STUDIO VOICE Vol.182 特集★再考 三島由紀夫の檄』(INFAS)(平成3年2月1日発行)です。

「表1」モデル:三島由紀夫氏、カメラ:篠山紀信氏。
「檄」文は本誌、P11〜13に掲載。

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『写真集 三島由紀夫 '25〜'70』(新潮文庫)「表4」の下記「跋」文に表記のとおり、

"「私はそもそも、天に属するのか?」− 仮面と情熱、創作と行動、死と美の臨界をひたむきに駆けぬけた、文字通り「不世出」の文学者、三島由起夫。彼はまた、つねに世間の注目を浴びたその作家生活と活動を通じて、少なからぬ写真家たちの被写体でありつづけた。華麗にして不可解なるまま「謎」として残された三島の生涯。劇的なほどに真摯な45年を、写真の数々で鮮烈に再検証する。"

三島ファンには必携の写真集です。

構成は、編年体方式で、随所に「三島由紀夫年譜」、「自筆原稿写し」、「作品の抜粋(名文句)」が鏤められています。

"「文武両道」とは、散る花と散らぬ花とを兼ねることであり、人間性の最も相反する二つの欲求、およびその欲求の実現の二つの夢を、一身に兼ねることであつた。"

"想像力も剣も、死への親近が養ふ技術である点では同じだったからである。しかも、この二つのものは、共に鋭くなればなるほど、自分を滅ぼす方向へ向ふやうな技術なのであつた。"
『太陽と鉄』(三島由紀夫)

編集は、三島由紀夫夫人、平岡遥子氏と『新潮日本文学アルバム 三島由紀夫』を担当された藤田三男氏の手になっております。

現行本では、『写真集 三島由紀夫 '25〜'70』というタイトルにて新潮文庫(平成12年12月1日発行)があります。

画像は、『グラフィカ 三島由紀夫』(新潮社)(初版本:平成2年9月10日発行)です。

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