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■電力消費増大神話(毎日新聞『風知草』 山田孝男 2011年5月23日) 「原発を造ったのはみんなです」。そう訴える小6男児の手紙(本紙19日東京本社夕刊)の書きっぷりに感心した。
「僕のお父さんは東電(東京電力)の社員です」で始まるその投書は先月、毎日小学生新聞編集部に舞い込んだ。 「原発を造ったのはもちろん東電ですが、きっかけをつくったのは日本人、いや、世界中の人々です。その中には、僕もあなたも入っています」 「発電所を増やさなければならないのは、日本人が夜遅くまでスーパーを開けたり、ゲームをしたり、無駄に電気を使ったからです」と続く。 子ども離れした目配りで、エネルギー浪費型文明の構造の根幹に斬り込んで鋭い。 毎日新聞の世論調査(16日朝刊)によれば、浜岡原発停止を評価する人は66%だが、「浜岡以外は止める必要なし」が54%。原発の将来については、「減らす」47%、「全廃」12%に対して「依存やむなし」が31%。世論は割れている。 割れてはいるが、政府・原子力関連業界と、そこから排除された一般大衆の分裂という見方は必ずしも的確でない。大都市と原発立地自治体の対立という見方も一面的だ。 原発推進派と反対派の確執は田舎にも都会にもある。同じ1人の人間の心のなかで既に割れている。放射性物質による環境汚染は困るが、冷暖房やデジタル家電の便利さは手放せないという矛盾である。 日本のエネルギー政策は、人口は減っていくにせよ、電力消費は増え続けるという前提で議論されてきた。自然エネルギーでは無理、原発は止められませんという意見が幅を利かせてきたが、この主張の前提はだいぶあやしくなった。 なにしろ「原発安全神話」が崩れた。しかも日本列島周辺の地殻変動はますます活発で、原発震災による放射性物質飛散の脅威は「なんとなく怖い」という段階を超えた。 「電力消費無限増大神話」もあやしい。電気を湯水のように使い続けなければ、われわれは文明以前の暗黒に突き落とされてしまうのか。違うのではないか。電力中毒の先に潜む原発震災が住民から文明を奪い、脅威はさらに拡大しつつあるという実態ではないか。 われわれの内なる矛盾を整理するためには、福島の同胞が何を失い、何を取り戻そうとしているかを見ればよい。それは土地であり、家族と先祖のつながりの記憶である。 原発20キロ圏内ゆえに故郷を追われ、先日、一時帰宅を許された川内村の人々が避難先へ持ち帰ったものは、母親の位牌(いはい)、アルバム、ヒツジの品評会の賞状とトロフィーなどだった(本紙11日東京本社朝刊)。 この村には国指定天然記念物モリアオガエルの繁殖地として知られる平伏(へぶす)沼があり、カエルの詩人として親しまれる草野心平の歌碑がある。 「うまわるや森の蛙は阿武隈(あぶくま)の平伏の沼べ水楢(みずなら)のかげ」 うまわるは「蕃殖る」で、繁殖すること。詩人は隣村(現在は、いわき市)の生まれ。沼べの緑は原発の大熊町、双葉町へつながっている。 繁栄とは何か。発展とは、幸福とは何か−−。 菅直人首相は今週後半、フランス北西部の保養地ドービルへ飛び、主要国首脳会議(サミット)に出席する。最大のポイントは、原発震災を踏まえ、原発の今後をどう語るかだ。歴史的発信に期待する。(毎週月曜日掲載) 毎日新聞 2011年5月23日 東京朝刊 |

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