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苦しい人専用メールマガジン「なんとかなるさ!」
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Let's Noteの前に座ってジッとモニタを見つめている。実を言うと、私は何も書くことが決まっていない。言わばカオスだ。始めに持ち出すテーゼによっては、あなたの人生に変革をもたらすことを述べることになるかも知れないし、逆に途方もない怒りをかってしまうことになるかも知れない。もちろん前者のようにあなたに良かれと願って文章を書くのだけれど、カオスとは非常に不安定なものなのだ。
そんなことを言ってしまうと恐ろしくなって筆がつけられなくなってしまいそうだから、リラックスしよう。そうだ、小野リサのアルバムでも聴こう。そして深呼吸、深呼吸。
そうだ。今日は重苦しいほど暑かったのだ。目を覚ますと雨が朝の町を叩く音が聞こえて、雷鳴で部屋がにわかに震えていた。身支度をととのえて外に出た頃には、騒々しい雨は勢いを失い、かすかな水滴が舞っているくらいだった。ただ湿った重い空気だけを残して、雨雲はどこかへ行ってしまった。
太陽が高くなるにつれて厚く覆った雲も次第に姿を消して、威圧的な夏の日差しが空気を熱した。湿気は熱を帯びてぼんやりと流れ、人々の活力を奪い去っていった。オフィスで仕事をしているほうがまだ気分が良かった。
少しずつ執筆することになじんできた。余裕が出てきたところで、あなたに質問してみよう。あなたにとって、大切なものって何だろう? ありきたりな質問だな。まぁいい。「もっとも」を付け加えたほうがいいだろうか?「もっとも大切なもの?」
私は自分で言うのも何だけれど、人間が好きだ。あなたがいま何を考えているのか? あなたはこれまでどんな経験をしてきたのか? あなたの横に座って静かに話を聞くことができたら、私にとってとても幸せなことなのだ。もちろんあなたが気分を悪くしない程度に、であるけれど。
話を戻そう。あなたのもっとも大切なものは何だろう? 「人に物を訊ねるときには、まず自分が腹を割るべきである」そんな格言はないかも知れないけれど、一応それが私の誠意である。だから、まず私がその問いかけに答えよう。
私はほんのちょっと考えてみた。「ほんのちょっと」は人によって違うだろうから、定量的な数字を使おう。そうだな。1分足らず。私が答えを出すまでに要した時間である。わりと自分でも納得できる答えが見つかった。それは、「記憶」である。
なぜ「記憶」なのか?それは、私の置かれた立場が関係しているように思う。しつこいのだけれど、私は視覚障害者であり、かつ中度の難聴である。そして、それらは進行する性質のものだ。私の胸のなかに、必ず見えなくなること、聞こえなくなることが前途への覚悟としてある。
だから、最悪のときに備えておくべきものについてしばしば考える。最悪のとき、つまり目も耳も機能を失ったときにも、豊かに生活するために今から備えておけることって何だろう? ちょっと想像してみて欲しい。視聴覚が失われたときに、人はどのようにして楽しみを生み出していけるだろうか?
私が思うに、キーとなるもののひとつは「想像力」である。想像するという行為に際して、目も耳も付随することはない。ただジッと目を閉じて、「想像しよう」と決めるだけだ。そこで大切なのは、「記憶」である。
想像するときに浮かんでくるイメージは、これまで自分が見てきたものであり、聞いてきた音であり、そしてそれらを組み合わせて自ら作り上げたものである。目からも耳からも情報が入らなくなったときには、「記憶」を利用して自分で自在に生み出せばいい。もしかすると、見たり聞いたりするよりずっと自由なのかも知れない。想像力は、人間に与えられた偉大な能力である。
さて、あなたが大切にしているものは、何だろう?
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