近代戦史と国際情勢の研究、考察

旧北方領土(樺太、千島列島)の史実伝承

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 1946年(昭和21年)夏、ソ連初中等学校(10年制)と附属日本人学校が開校されたとき、ソ連人生徒の 数は20名前後で、大部分が村のソホーズ(集団農場)で働くソ連人労働者の子弟だった。
 
 校庭の国旗掲揚台はそのままソ連児童が使用するところとなり、朝夕にソ連国旗の掲揚と降下が行なわ れる事になる。日本国旗はソ連軍が樺太を占領した時点から掲揚禁止で、事実上の廃棄同然となる。
 
 毎朝、ソ連児童によって行なわれる国旗敬礼を眺めるたびに、わが祖国・日本は戦いに敗れ、アメリカ 軍の占領下で同胞は奴隷のような暮らしをしているのだろう、と残念に思った。
 そしてもう国家としての日本は存在せず、もし日本に帰ってもわれわれは一生奴隷生活をしていくのだ ろうか?
 
 「樺太は我々日本軍がしっかりと守るから、君たち小国民は安心して勉強に励みなさい」そう云って
 立派な敬礼をしてくれた日本軍将校の記憶もまるで夢のようだった。
 彼らソ連児童は週に1度、軍歌のように勇ましく勝ち誇った歌を聞こえよがしに歌っていた。
 そんな彼らを見るにつけ、グーと敗戦国民の屈辱がこみ上げてきて、「畜生!マンドリン(自動小銃) がいまここにあれば、皆殺しにしてやるのだが・・・」という激情に駆られた。

 日本時代は、校舎の廊下は冬でも児童が雑巾できれいに拭いていたが、ソ連になって校舎の清掃は
 日本児童も禁止され、ソ連人の専門の労働者が行なうようになる。

 日本児童は校内では運動靴をはき、外靴とは別にしていたが、ソ連人は習慣から土足で校内を歩き、
 日本人職員もそれに異論はなかったが、校内を汚さないように泥はぬぐうようソ連側と協議し、納得を 得ていた。

 ところが新しく入校してきた10年生と以前からいる9年生が結託して、日ソ教職員に対して反抗的な
 態度をとり、とりわけ日本人児童を敗戦国民として露骨に争いを挑戦するソ連児童が増えた。
 
 校長(父)は部下の教師の訴えをソ連人校長に報告し、「反抗し、教師の注意や指導を無視するソ連児 童に対しては、実力行使(体罰)をしてよい」という許可をとった。
 
 そしてまもなくその日がやってきたのだ。
 廊下の窓が乱暴に開けられ、そこから泥靴のソ連児童2人が入ろうとして、たまたま廊下を歩いてきた
 日本人教師に見つかった。
 日本人教師は廊下に降り立った一人に、ゼスチャーで「窓から出て行け。玄関から入れ」と指差すが
 傲慢な笑みを浮かべたその児童は、両手をボクシングの構えで先生に向かって攻撃をかけた。
 背丈は2人とも先生より高く、他の一人も廊下に降り立った所だった。

 (まずいな)わたしがそう思ったとき、先生の体がソ連児童の身体に突進し、ソ連児童の身体は
 「アツ」というまもなく、宙をとび、2,3メートル先の床に叩きつけられていた。
 一瞬の出来事で、わたしには神業のように思えた。
 いつのまにか両国の児童が廊下を埋めていたが、ソ連児童の中から感嘆に似た「ジュードー」という声 が聞こえた。鮮やかな巴投げだった。先生は余裕のある構えでソ連児童の出方を待ったが、真っ青な顔 色の児童にはもう反抗の意思などなく、呆然と立ち尽くすもう一人の児童になにか小声でささやくと、
 急いで窓から出て行った。
 わたしも他の日に体験したことだが、ソ連人は一度なにかの技で負けると、もう2度と挑戦してくるこ とはなかった。精神力が当時の日本人より数段かよわかったのである。

 この先生は、日本敗戦の前年(1944年)、6ヶ月間の下士官候補生特訓を受けた予備役砲兵伍長で
 柔道、剣道の高段者だった。
 1945年春の青年学校の軍事教練では、普段温厚なこの教師が、全員に往復 ビンタを加えているところ を見たわたしは、日本の戦況の思わしくない事を察したものである。
 
 翌日、日本人学校長(父)はソ連人校長にこの顛末を報告し、「よくやってくれました。これからはき っとおとなしくなるでしょう」と感謝されたのだった。ソ連人女性校長も手を焼く札付きのソ連悪童だ ったのだ。
 このことがあってから、ソ連児童の日本人教師や児童に対する挑戦的態度は嘘のようになくなったので ある。(続く)
 
 *写真は塔路小学校(樺太観光絵葉書にもなったマンモス校ー直線廊下300メートル)


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