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クロスが亡くなったら、どうなってしまうんだろうと思った私たちは、意外と冷静だった。

3日間飲んでいなかったビールを、弔い酒と称し、献杯した。

みんなが見える位置に静かに置かれたクロスは、本当に眠っているような安らかな顔をしていた。

長男は泣いて泣いてどうにもならなかったけど、先が見えない不安というよりは、純粋に寂しくて、悲しくて

泣いている感じだった。

何かで節目をつけてあげないと、彼はきっとしばらく立ち直れない気がした。

ぐ「明日のクラブ活動、休める?」

長「休めるけど・・・どうして?」

ぐ「明日、クロスを天国に送ってあげる最後の手伝いするんだよ。父ちゃん仕事で行けないから、

アンタ、代わりに母ちゃんと一緒に行ってくれる?」

長「クロス、燃やしちゃうの?」

ぐ「小太郎が待ってるから、そこまで送ってあげないとね。いつまでもここに置いておくわけには行かないし。」

長「わかった。」

火葬は迷わず、小太郎が眠っているお寺ですることにした。それなら寂しくないし、お坊さんがいつもお経を

あげてくれるし、他の仲間たちも一緒になる。

旦那はどうしても仕事が休めない。本当は一緒に送ってあげたいのはわかってるけど、こればかりは

しょうがない。

誰かが亡くなったりすると、その死に対して、いろんな関連性を探し出したりするもんだけど、ペットの場合も

同じだったりする。

クロスがなくなったのは水曜日、翌日は唯一長男の学校の時間割が6限クラブ活動。

土曜日にピアノの発表会を控えている長男は、クロスのバタバタでろくに練習ができずにいた。

あと2日間ある。

「あまりに見かねて、クロスも心配だったんじゃない?」

笑えない冗談だけど、長男がその日からピアノの練習に打ち込みだしたのは事実。

天国にいくであろうクロスに聞こえるように弾くんだと・・・

実際、土曜日の発表会は、親の贔屓目を抜いても、全くミスのない力強い演奏だった。


眠っているクロスのそばに、クロスが大好きだったりんごとジャーキーを入れ、

クロスが一番似合っていた、赤いフリースの洋服をクロスにかけてあげた。

時々なでてみるけど、さっきまであったかかったクロスは冷たく、固くなっていた。

「マナーパンツは処分するね。アンタ、あの世に行って「しっこたれ」なんてあだ名をつけられたら

可愛そうだもんね。」

クロスの昔の写真を見ながら、真っ黒だったクロスがシルバーに変わっていたのに時間の経過を感じた。

私も旦那も、さみしさや悲しさを紛らわせるように、クロスの荷物を処分し始めた。

今やらなくても・・・と傍から見れば思うんだろうけど、とにかく今やらなきゃいけない気がした。

その日、久々に家族全員で寝室に入る。

最後の夜だ、クロスも一緒に寝ようと寝室にクロスを運んできた。

2晩もろくに眠っていないのに、全く眠気がないのは、ここ何日間の急すぎる展開が未だ整理できていない

からなんだろう。

クロスが我が家に来てからずっと、私が出産で入院したりする以外は、クロスと同じ布団で眠っていた。

右に子供、左にクロスの川の字も、我が家では普通の光景だったっけ。

あんな小さいクロスがいないだけで、布団ってとても広く感じるんだなぁ・・・

だけど、冬はクロスがいてくれると、あったかいんだよなぁ・・・

今年の冬はちょっと厳しくなりそうだ。


翌日、晴れだと言われていた天気は見事に外れ、寒い雨が降っていた。

出かけるメンバーを送り出し、洗濯をしようと2階へ上がる。

クロスはいつも私が来る後を追って来てたから、部屋の戸を開けた時に、後ろのクロスが入るまで

開けて待っているという私の癖は、まだまだ直りそうもなかった。

1仕事終わるたびに、お仏壇の前のクロスを覗きに行く。起きてこないのはわかってるんだけどね。

クロスの体がなくなったら、あっという間にその存在を忘れていってしまう気がした。

3時に家を出ると言っていたのを聞いていた旦那は、2時を回った頃、家に帰ってきた。

「最後のお別れをしようと思ってね。」

お仏壇の部屋で、しばらくいたようだけど、覗きにはいかなかった。


学校の玄関で、長男は待っていた。

車に乗り込み、後部座席にいるクロスを確認すると、やっぱり泣いた。

「さみしいな・・・さみしくなっちゃうな・・・」

って言いながら・・・

天気が悪かった私たちが向かう先に妙高山が見える。不思議とそのあたりに太陽の光が何本もの線になって

空から降ってきているように見えた。

ぐ「○(長男)、見てごらん。クロスはあの光に登っていくんだよ。」

長「あ、ホントだ!!すごい!」

ぐ「クロス、道に迷わないでいけるね、きっと。」

長「どうやって、あそこまで行くの?」

ぐ「だから、火葬して、クロスの魂を煙にしてあげるのさ。煙ならどんどん高くまでいけるから。」

彼が体験する最初の愛する家族との別れは、トラウマにさせたらいけないと思っていた。

どんな想像を使っても、命はいつか消えてなくなるものだと教えなくてはいけない。

それには、誠に素晴らしい陽の光だった。どうか、火葬場に着くまで、この晴れが続きますように・・・


小太郎が眠るお寺は、我が家からかなり遠い場所にある。

手続きを済ませ、祭壇の前にクロスを置いた。

涙を流す長男と、いつもとは違う珍しいところに来たという好奇心でじっとしていない次男。

お経を上げてもらい、本当の最後のお別れをした。

「クロス、ありがとね。小太郎によろしく伝えて。」

私の中では、さみしさというよりも、ちょっと安堵感みたいなものの方が大きかった気がする。

「ほら、あそこに煙突があるでしょ?あそこからクロスの煙が天に登っていくんだよ。天気が良くてよかったね。」

しばらくその煙突を眺めていた長男だったけど、多分自分の中で踏ん切りがついたんだと思う。

「何か、ちょっと悲しくなくなってきた。」

その言葉通り、彼はその瞬間から涙を見せることはなかった。

「お葬式ってさ、面倒だったり、大変だったりするけど、こうしてちゃんとお別れして、残された人がいつまでも

悲しくないようにするために、大切なんだよ。」

帰りの車の中で、珍しく私の話を黙って聞いていた彼。彼もいつか私たち親の葬式を取り仕切る日が来る。

そのとき、今日のこと思い出すかなぁ・・・


本当に寂しくなるのは、きっとこれからな気がする。

日常の中で、いるべきはずの場所にクロスがいないこと。

今まで、当たり前のように費やしてきた散歩や世話の時間分、日常に空白ができる。

だけど、私には感傷に浸っている時間は、まだなかった。

来春から保育園に入る次男坊のトイレトレーニングは、終盤だけど終わってはいない。

そして、まだまだ手がかかる。

年末に差し掛かり、大掃除もしなくちゃいけない。

クロス、あんた、選んでこの時期に逝ったのかな?

「この時期なら、アンタ、さほど悲しんでもいられないんじゃない?」

そう言われたような気がした。

来年になったら、もっとゆっくり散歩もできるし、もっと色々連れて行ってあげようと思ってたんだけど・・・

これからって時だったんだけどね。


だけど、今年は家族で結構いろんな所に行ったね。

キャンプだけでも2回行った。

家族で写真を撮るってことが、なかなかなくて、いつも私がいない写真ばっかりだったけど・・・

上の写真は、珍しく家族とクロス全員で撮ってもらった、最初で最後の写真。軽井沢の白糸の滝。

去年のお盆、だったよね。ペットを連れて入れる場所を、ネットで片っ端から調べたんだ。

チビが前日に骨折してね。ばったばただったけど、行ってよかった。

私たちが出かけるとき、必ずそのそばにはクロスがいた。

あんまりいい子で、おとなしいから、時々足を踏んづけちゃったりしたけど・・・

いつも一緒にいてくれて、ありがとう。

あなたのおかげで、子供たちは弱いものに優しく接する心を教えてもらったよ。あ、次男坊はまだまだだけど。

「クック(クロスのこと)、バイバイ。」

と、何となく別れはわかってるみたい。大きくなる頃には忘れちゃうだろうけど、ちゃんと話しておくから。

我が家には、とても賢くて、とてもかわいい、ぬいぐるみみたいなクロのプードルがいたんだよと。

あなたのちょっかいにも、怒らずにそばにいてくれたおじいちゃん犬がいたとね。

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