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「直ちゃん好き……っ!」
緑朗は自分自身を慈しむような直紀の表情に感化され、その唇に熱い想いを込めた。 幾度となく味わっているのに、その唇は重ねる度に愛しさを増し、緑朗の心に幸福と切なさを産む。 好きで好きで堪らない。 離したくない。 出来ることなら、このままいっそ一つになれたらいいのに…。 「んっ……!」 直紀が、息苦しさに小さく吐息を吐いた。 どんなに想っても、一つにはなれない証。 けれどそれは、愛しい証。 二人だから感じられる事、二人だから愛し合える事。 互いの愛しい気持ちに寄り添い、想いあえる。時にはぶつかり衝突し、自分の嫌なところも見せ合い、そんな自分に幻滅し、それでも互いを想い合う気持ちから、やがて互いの悪いところも受け入れられ……。 自分自身の見たくない部分を受け入れてもらえ、自分を赦すことが出来た。 そうやって今までやってきた。きっと、これからもずっと……。 緑朗は直紀の頬に優しくキスを落とすと、その髪にそっと触れた。 「直ちゃん…、愛してる」 「俺も……」 互いの瞳と瞳を絡め合い、唇を重ねる。 つい愛しさの余り、再び我を忘れて貪ってしまった。 二人だから愛しいのに、その実、唇が離れた切なさを感じていたら、自分の腕の中、肩で息をする直紀と目が合った。 「……んっ。ふぁ…、ろく?…俺、全部聞くから…」 不安な気持ちを悟ったかのように抱きしめられた。愛しい恋人に。まるで、幼子をあやすかのように…。 ありがとう……。 首に回されたその腕に力が籠るのを感じ、緑朗は覚悟を決めた。 直ちゃんは、不安な自分をいつもこうして温めてくれる…。 頬を紅く染め、虚ろ気な瞳の直紀が愛しい。 全て…。 自分の全てを受け入れて欲しくて…。 きっと、直ちゃんなら自分の全てを受け入れてくれると信じて……。 その中には、願望もあった。 直紀を独り占めにしてしまいたい欲深さや 、自分の中の嫉妬深さ、自分の中の醜い自分も直ちゃんは、全て包み込んでくれる。 甘えることを恐れていた自分を、心の奥にある寂しくて震えそうな自分を、直ちゃんは優しく温めてくれる。 本当は、そんな自分知らなかった。 直ちゃんと出会うまでは…。 多忙な両親に甘えたくても甘えられず、そんな感情を押し殺して良い子を演じていた。 どうせ聞いてもらえないのなら、話しかけなければいい。他人に期待なんてしても、裏切られたり叶わなかったりするぐらいなら、端から人を信じなれけば良い。 当たり障りなく“良い子”“良い人”を演じていれば、割と世の中は楽に生きていける。 それが、例え自分自身を殺すことになろうとも……。 そうして悟った振りして生きていたのに、直紀に出会って全てが変わった。 今までの自分が崩れ落ちた。 寂しいだとか甘えたいだとかの感情は、自分には無いと感じていたのに、それは錯覚だった事を直紀と出会って思い知った。 本当に欲しかったものに出会えた時、そんな自分は崩れ落ちた。 ……けど、割と今の自分は嫌いじゃない。 直ちゃんを好きで好きで、堪らなく愛しい自分は、嫌いじゃないんだ。 |
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