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 カトマンズの中心部を流れる聖なる川は 二つある。
 1つは バーグ(トラ)の口から流れ出た水から出来た川ということから、
 バーグマティと名づけられ、もう1つは ヒンズー教のビシュヌ神の名をとって 
 名づけられたビシュヌマティ、この二つの川 聖なる川にもかかわらず、
 すっかり汚染され、自らの名前をつけられた神もトラも苦笑していることだろう。

 私の住んでいるところからカトマンズの中心部へ向かう道は 二通りある。
 バーグマティ川に沿って上流に上れば、バーグマティ橋、下流に向かえば テクに至る
 橋にぶつかり、ブシュヌマティ川に沿って上っていけば、今日王宮広場へと出る。
 このテクでは バーグマティ川とビシュヌマティ川も合流する地点だ。

 テクからビシュヌマティ川沿いには舗装された道路があり、川辺のゴミの山と
 汚染された川の流れを眺めながら、上流に向かうと、一本の橋がある。
 私が25年前にやってきたときにも同じ姿でかかっていた。
 その頃は この橋の周辺には カーストの低い掃除人カースト、屠殺カーストの
 人たちが住みつき、掘っ立て小屋のような住居が建ち並んでいたが、近頃では
 昔よりこぎれいになってきている。

 このビシュヌマティ川は、マッラ王朝時代から旧王宮のある聖なる場所と
 穢れた場所カーリマティという低カーストの生活場所に分けていた。
 そのために川沿いのカーリマティ周辺には 貧しい人たちが多く住んでいた。
 聖と穢れをこのブシュヌマティ川が隔て、それを結んでいた橋が この橋である。

 この橋の上は 今では 小さなバザールだ。
 それも貧しい庶民たちが 昔ながらの品物、一山ごとに売られている安い少し質の
 劣った野菜を求めてやってくる。
 売る側も貧しいぎりぎりの生活をしている人々、買う側も同じように貧しい人たちだ。

 昔ながらの手作りの鉄製品を売るカミと呼ばれる鉄職人カースト、ダマイと呼ばれる
 縫製職人カースト、手回しミシンを並べて、注文の服を縫っている。
 乳飲み子を抱えて 僅かばかりの野菜を売る明るい母親、中国製の安い服を売る露店の
 後ろで子供たちがズタ袋をハンモックのようにして遊んでいる。
 写真を撮っていると、子供たちの父親が写真を見せろとやって来て、撮った写真を
 見せると大喜びである。

 この橋の上には タマン族、グルン族、マガール族、ネパールではダリットと
 呼ばれている低カーストのカミ、ダマイと 皆、ネパールの底辺部で生きている
 人たちだ。
 どんなに虐げられても 明るさだけは失わずにいき続けてきた人々だ。
 25年前のネパール、カトマンズでは 皆、貧しかったし、今ほど貧富の差も
 なかった。
 貧しくても 明るくたくましく生きる人々であふれていた。
 そんな時代の片鱗を この橋の上の人々の中に見た思いがする。


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