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 ネワール族の農民カースト マハルザンの食べ物にバーラというものがある。
 大豆をすりつぶし、それを鉄板の上で焼くものだ。
 簡単なバーラは、それだけで焼いたものだが、少し贅沢なものは 
 日本のお好み焼きのように卵を乗せたり、水牛のひき肉を乗せたりして一緒に焼く。

 今日紹介するものは、最もシンプルなバーラ、1つ6ルピーというバーラだ。
 カトマンズのインドラ・チョークのアッカス・バイラワ寺院の横の細い通りを
 に入り、ちょうど、寺院の真後ろに当たる中庭に入り込むと、そこでは いつも
 午後1時過ぎから、ネワール族の女の子たちが、このバーラなるものを売っている。
 白いバーラと少し緑がかったバーラの2種類があり、白い方が柔らかい。
 私の好みは白い方である。
 2枚のバーラとアル・タルカリ(ジャガイモカレー)を食べれば、18ルピー(30円)
 昼間の軽食にはちょうど良い。
 ネパール人にとっても、20ルピー前後というのが、庶民の昼間のカザ(軽食)の
 費用の目安なのだろう。
 モモ(ネパール風蒸し餃子)も20ルピーから25ルピーの値段になっている。

 二人の女の子は、近くのマハルザンたちの集落に住む。
 カトマンズの農民カースト マハルザンはほとんど持っていた土地を売りつくし、
 農民カーストとは名ばかりになっている。
 だから、男は大工、左官の仕事、女はこうした細々とした路上の商いで、生活を
 支えている。
 それでも、自分の住む家があり、地方からやって来手、貸間住まいをする人たちに
 比べれば、まだ生活は豊かだし、彼らの地域共同体も機能している。
 未だに家では、ジャール(どぶろく)、ロキシ(蒸留酒)も造るし、家庭料理も多彩で
 ある。
 ただ農作業という肉体労働を支えるために 彼らの料理には唐辛子を多く入れた辛い
 ものが多い。

 寺院の裏の中庭の路上の食べ物屋であるが、材料は丁寧に用意しているようだ。
 ただ、ネパール人相手の商い、皿などは用意しておらず、新聞紙の切れ端に
 食べ物を載せてくれる。
 昔は日本もそうだった。4,50年前の日本も田舎はそんなものだった。
 昔の日本人はたくましかったのだ。どこに行っても生活できる適応性を持っていた。
 どのレベルまでだったら、大丈夫かと判断できる力を持っていたように思う。
 今の日本人は、見た目でしか判断できなくなっている。
 清潔感も度を過ごすと、海外旅行も味気ないものになる。

 この中庭に接するアッカス・バイラワ寺院は、農民カースト マハルザンの守り神の
 ようである。
 この寺院の管理は、マハルザンによって維持されているようだ。
 水の神様インドラの守り神であるバイラワを祭っていることから、農耕に深く係わる
 神様なのだろう。神様というより魔物に近い存在なのかもしれない。


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 パタンの旧市街地を歩いていると、心惹かれるような建物に出会うことがある。
 この建物もそんな建物だった。仏教寺院という大げさなものではなく、近隣の
 仏教徒たちが、仏教的な行事を催す建物だ。
 レンガの古ぼけた色合いに惹かれたといっても良い。
 入り口の木の彫刻もシンプルで仰々しくはないところがいい。
 入り口をくぐって中庭に入り込んでみても、人影はない。
 石造りの仏塔が静かに佇み、その存在感を示している。
 正面には仏陀の像を納めたレンガ造りのビハールがある。
 建物の横にプラスティックの容器が置かれ見苦しいが、我慢することにしよう。

 ビハールという建物は宗教行事以外には使われないから、行事のないときには
 ひっそりしている。この静けさがいい。
 街の喧騒に疲れたときには、こんな場所に座り込んで身も心も休めるのも
 良いかもしれない。

 カトマンズ、パタン、バクタプールとカトマンズ盆地の中には、こうした仏教に係わる
 建物が多い。それらは、一族のものであったり、地域のものであったりする。
 お金を儲け、余分なものが生まれれば、こうした建物を建てる姿は、利害関係とは
 無縁の姿である。
 現在の金儲けの亡者が、お金のために金儲けをしている姿は、いかにも浅ましい。
 お金を精神的な文化のために使うなど、日本の大企業の中にはない。
 発展、発展、企業の発展を謳い文句に、従業員を奴隷の如く使い、人間らしい生活など
 考えてもいない。
 戦後 追い抜け、追い越せと、皆して 号令を掛け合ってきたが、今の日本の姿を
 見れば、それが、幸福とは結びついていないことが良くわかるはずだ。
 人を大切にしない社会は、若者を無気力にし、短絡的な凶悪犯罪へと向かわせる。
 団塊の世代を出発点にした戦後社会のその結果が日本の今の姿である。
 無批判、無関心、思慮のなさ、従順さが こうした社会を作り出したことに
 誰も気がつこうとはしない。
 自分は関係ないと思っているのである。
 だから、責任逃れに 日本を離れ、海外ロングステイなどと夢見るのである。
 こんな味気ない社会を残された若者たちは不幸である。

 どう考えても昔の人のほうが賢かったようだ。
 百年、二百年以上前の地域、一族の精神的支えになるものが、通りのあちこちに
 存在している社会、何か行事でもあれば、顔を揃え、協力し合う。
 形ばかりのコミュニティホールなど造っても、生き生きした共同体など
 再生出来るはずもない。中味がないのである。
 形ばかりを追いかけるのは、日本人の弱点であり、欠点である。
 教育然り、地域共同体然り、だから、荒廃した心は どんどん考えられないような
 犯罪を作り出していく。
 人と人との心の絆が希薄になれば、犯罪を押しとどめる力は失われるのである。
 親子、兄弟、親戚、近隣 すべてがその力を失いつつある日本だ。

 そんな日本をもう一度見直すには、ネパールの社会、地域、人間関係は、
 1つの手がかりになるのではと思う。


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