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 カトマンズにやってきてから10日が過ぎた。
 暖かいカトマンズに喜んでいたが 昨夜は本来の寒さがぶり返し、
 冷え込みの厳しさから 深夜の2時間ばかり 石油ストーブを使ってしまった。
 灯油も1L 63バーツと値上がりし、贅沢は出来ない。
 2年前の灯油がそのまま、石油ストーブの中に残っていた。
 それが幸いしたのである。

 今日の朝は8時過ぎに起きたが 正午までは電気は来ない。
 1週間前に 停電時間を1日14時間から12時間に短縮の話が ネパール電気公社
 から発表されたが、結局、川の水が増えていないことを理由に取りやめになった。
 散々期待させて、この揚げ句である。
 政治も国民の生活のことなど無関心で 各政党は勢力争いに明け暮れているだけだ。
 政府の存在が本当に国民のためになるのか 疑問が湧いてくるばかりである。

 電気が正午まで来ないので、それまでの時間 バグマティ川周辺を散策することにした。
 バグマティ川の河川敷の広場の川のすぐそばにある水場へと行ってみた。
 この前から 皆が使いやすいように改修している。
 今日は 改修の責任者が来ていたので、詳しい話を訊いてみた。
 この改修工事の費用は パタン市が半分、住民が半分負担すると言う取り決めで
 始められたようだ。
 4つの井戸を掘り、近隣の住民の水不足の解消に役立てるのが目的だ。
 工事の総予算は20万ルピー(約25万円)、水も飲料にも適していると言うことだが、
 パタン市から10万ルピーの援助は約束されていても、近隣の住民から半分の
 10万ルピーをいかにして集めるのか、頭を悩ましているようだ。
 一人100ルピーとして 千人以上の寄付が必要だ。
 金持ちは 自分のところに井戸なり、地下水を掘っているから水には困っていない。
 水に困っているのは 間借り生活をしている貧しい人たちである。
 儲けている企業なり、商店からの寄付は期待できないものだろうか。
 ネパールでも金持ちはお金を溜め込むばかりで 地域貢献には関心はない。
 段々世知辛い世の中になってきているのである。

 その水場の近くに 数ヶ月前にこの河川敷で知り合った少女が 井戸から水を
 汲み出しては バケツで運んでいる。
 インドからやって来た洗濯を生業にしている家族の娘である。
 この少女には 熱い太陽の陽射しがよく似合う。
 この肌寒い季節の中では その明るさを発揮していないようだ。
 彼女の父親が洗濯し、この少女は 水運びと洗濯物のすすぎが仕事である。
 学校など行かず、ひたすら家族のために尽くす毎日の生活だ。
 数ヶ月前は 真夏の妖精のような明るい雰囲気を漂わせていた少女だ。
 少しでも家族とともに生活の向上を望むばかりだ。
 インドでの貧しい生活を逃れ、カトマンズにやって来手も簡単に生活は
 楽にならないだろう。
 祖母、父親、兄弟は3人 彼女と幼い弟二人である。
 もっと家族がいるのかもしれないが、見知っているのは 彼らだけである。
 この水場を離れ、河川敷の広場を抜けようとすると、4,5歳の幼い男の子が
 バケツを提げてやってきた。
 よく見ると あの少女の1番下の弟だった。
 幼いながらも 父親と姉の仕事の手伝いにやってきたのだろう。
 私のことを憶えていたのか、笑顔を見せて、通り過ぎて行った。

  参照記事
   http://blogs.yahoo.co.jp/hikaruno_season/25950731.html
   http://blogs.yahoo.co.jp/hikaruno_season/25603769.html



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 パタンの町の古い旧市街の中を歩き回っていると レンガ造りの建物に囲まれた
 広場のある集落の中に入り込むことがある。
 ネワール族の典型的な集落の形である。
 サッキャ・カースト、バジャチャーレ・カースト、マハルザン・カーストの仏教徒たち
 のカーストの集落は 広い広場を持っている。

 今日はいつもと違うコースを辿って、パタンの旧市街の周辺部を散策してみた。
 街の周辺部には ネワール族の中でも比較的カーストの低い人たちが住んでいる。
 上位カーストの人たちは 街の中心部 王宮の近くに住んでいる。
 カトマンズの場合は ネワール族のマッラ王朝を征服したチェットリ族のゴルカ王朝が
 入り込んできたために ネワール族の上位カーストの人たちの居住区の移動があった
 ために昔ながらの形で人々は住んでいない。
 しかし、パタンはカトマンズの中心部から離れていたために、街の形や人々の居住区が
 そのままの形で残っている。
 チェットリ族のゴルカ王朝による影響をあまり受けていないといってよい。

 そんなパタンの旧市街の周辺部を歩いていた時に マハルザン 農民カーストの
 集落の中に入り込んでみた。
 200人近い人々が住み着いているマハルザンの人たちの集落である。
 レンガ造りの建物に囲まれた広場に 人々は陽だまりを求めて座り込んでいる。

 老女たちは老女でまとまって座り込み、働き盛りの若い者は それぞれに固まって
 午後の暖かい陽射しを享受している。
 チベット絨緞用の毛糸を解いている女たち、座り込んで朝の仕事の疲れを癒している
 人といろいろである。
 まだまだ寒さの残るカトマンズ盆地の中では、室内は冷え込んでいる。
 暖房の設備もないレンガ造りの家の中は 日中でも寒さを感じる。
 だから、暖を取りに 陽だまりの中に出てくる必要があるのだ。

 広場では それぞれがそれぞれの生活スタイルに合わせて、
 陽だまりの中で座り込んでいる姿は のどかな平和な風景である。
 この集落に住む人は 皆、血の濃さに多少の違いはあっても、
 血でつながっている親戚同士だ。
 だから、住んでいる人すべてが知り合いであり、
 行事のたびに顔を合わせる者同士である。
 皆が顔見知りであるから、集落全体に安心感と安らぎがある。
 泥棒が入ってくれば、一声、助けを求めれば、集落のもの全員がとび出してくる。

 集落の中には 祖父母、父母、子供たちが 当然のことのように生活しており、
 集落の中では 人間のごく当たり前の生活がある。
 老人が大切にされ、家族とともにしに至るまで家族とともに生活し、孫の世話をし、
 嫁たちには 昔ながらの習慣や行事のやり方を伝えていく役割を持っている。
 こうした習慣は ネワール族の農民カーストの中で 今でも色濃く残っている。
 土地は少なくなり、生活は苦しくなるが、心の安定は今なお充分に保証されている。

 当たり前のことが 当たり前に出来なくなった日本とは大違いだ。
 幸福のためにどうお金を使えばよいのかさえ、わからなくなっている日本だ。
 どこに先進諸国だと自慢できるものがあるというのだろう。
 飽食、飽くことのない消費への欲望、そんなものに捉えられている限り、
 幸福は 雲のかなたへと消え去っていくばかりだ。

 この集落を包んでいる安らぎ、平和、落ち着き、満足感を
 今の日本のどこに見出せるというのだろう。
 幸福な社会には 幸福を作り出すための社会システムが必要だ。
 このシステムを学ぶには ネワール族の社会は1つの見本になる。
 ネワール族の集落の中に入り込んだときには いつもそんな思いに駆られる。


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