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 インドには いろいろな種類のシルクがある。
 養蚕シルクもあれば 野蚕のシルクもある。

 養蚕シルクはインドの中でも 主に南インドのカルナタカ、アンドラプラデッシュ、
 タミルナドゥ、東インドの西ベンガル、そして北インドのジャンムー・カシミールで
 生産されている。

 野蚕シルクの中のエリシルクは 太くて柔らかく、保温性に優れ、耐久性がある。
 生育場所は 東インドのアッサム州を中心とした地域、ビハール、東ベンガル、
 オリッサ州が主な場所である。

 野蚕シルクのムガシルクは インドの中でもアッサム州を中心とした地域で生育する、
 自然の輝きを持つ黄金色の黄色のシルクである。

 もう一つインドで有名な野蚕シルクは タッサシルクである。
 インド内陸部のマディアプラデッシュが主な生産地で、マハラストラ、西ベンガル、
 アンドラプラデッシュでも生育している。
 養蚕シルクに比べると 輝きがなく、主にカーテン地、ベッドカバーなどに利用されて
 いる。

 そんな野蚕シルクのうち、エリシルク、ムガシルクを使って織られた布も
 サンプル程度に展示したいと思っている。
 中には ムガシルクと麻を組み合わせた布もある。
 暑い夏には 涼しくて気安いということから 開発された布かもしれない。

 野蚕シルクの良さは 生成りの色合いである。
 シルクの自然の色をそのまま生かした布は魅力的である。
 養蚕シルクと違って、空気の流通もよく、夏でも快適に着ることができるし、
 又、冬には保温性に優れ、暖かい。
 まさに自然の恵みとはこうしたことをいうのだろう。

 カトマンズは 国境をインド・ビハール州と接しており、ビハール、西ベンガル州
 との州境にあるバガルプールという町で織られる野蚕のエリシルクの多くの布が 
 織元やカトマンズ在住のマルワリ商人によって 持ち込まれた。
 同じマルワリ商人が インド・アッサム州で織られる野蚕のムガシルクで織られた
 布を運んできていたので、ムガシルクで織られた布を見る機会も多かった。

 バガルプールで織られたエリシルクの布などは インドで買うより安かった。
 というのは 織元が デリー、カルカッタ、ボンベイに送った布が 売れずに
 返品になった布をカトマンズに運んできて 卸してしていたために、在庫処理の
 価格で売っていたためだ。
 
 タッサシルクの生産地は遠かったせいか、カトマンズで出回ることは少なかったが、
 サリーとして織られたタッサーシルクは カトマンズのサリーを売る店で見かける
 ことはあったが、服地としてのタッサシルク布は少なかった。
 インドで見かけるタッサシルクは どちらかと厚地のショールやベッドカバー、
 壁掛けなどが多かったが、サリー地に使われるタッサシルクは薄地で同じものである
 とは思えなかった。
 今はなくなったが、カトマンズのトリブバン国際空港の3階のレストランに
 飾られていた大きなタッサシルクの壁掛けは 立派なもので今でもよく憶えている。


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 タイにやって来るたびに 過ごしたタイの田舎町 パックチョンでの3年間の生活に
 別れを告げ、3百キロばかり離れた東北タイの中心的な町 コンケンに引越しする
 ことにした。
 手織り布の仕入れの仕事をしていくためには コンケンに住んだほうが都合がよいと
 思ったからだ。
 引越しの大きな理由は 他にあったのだが、今 そのことを書き綴る気持ちには
 なれない。

 地方都市で生活しようと思うなら、やはり その町に親しい知り合いがいることが
 必要条件である。
 住む場所を見つけるにしても 異国の言葉も通じない地方都市では 
 簡単なことではない。
 20年近く前の地方都市 コンケンには まだ不動産屋などない時代である。
 私の場合は いつもコンケンで手織り布を仕入れる知り合いの店があったから、
 そのお陰で住む場所を見つけることが出来た。

 この町には7年ばかり住み、住む場所も3回変えた。
 2,3年住むと町の様子も分かってきたし、タイの経済成長が地方にも影響を与え、
 分譲の新興住宅がどんどん建てられるようになった。
 居住を目的に分譲住宅を買う人間もいたが、投資のために買う人も多かった。
 そんな住宅の大半は 賃貸し住宅になっていることが多かった。
 自転車に乗って 町の中をぐるぐる走り回っていると そんな分譲住宅が 
 たくさんあった。
 賃貸し用の家には 電話番号が貼り付けており、電話をかけて交渉することになる。

 コンケンでの後半の4年間は 出来たばかりの賃貸し分譲住宅を借りることになった。
 1軒の家が2世帯住宅になっている2階建ての家で、2LDKの間取り、シャワー付
 の浴室が 1階と2階にそれぞれあったが 台所は設置しておらず、ガスボンベと
 ガス台を勝手に取り付けて、自炊が出来る形にした。
 当時のコンケンの家賃は安く、庭付きで 1階が12畳くらいの居間と16畳くらいの
 ダイニングキッチンに出来るスペース、浴室、2階は 10畳くらいの部屋が二つと
 浴室、広いベランダもついていた。
 コンケンの駅からも徒歩10分くらいの場所にあって、家賃は月4千バーツだった。
 当時の為替レート 日本円で1万5千円位だった。
 タイ人たちは 7,80万バーツ(約3百万円)で購入し、銀行ローンで支払って
 いた人が多かった。
 すぐそばに分譲住宅を銀行ローンで購入したベトナム系タイ人の兄弟家族が住んでおり、
 この場所に住んだ4年間 親しく付き合い、夕食を作りあって、一緒に食べることも
 多かった。
 コンケンでは 中国系タイ人とも付き合ったが、計算高い人たちだったが、ベトナム系
 タイ人との方が付き合いやすかった。
 東北タイのメコン川沿いの地域には ラオスを経由して タイにやって来た
 カソリックを信仰するベトナム人が多く住みついていた。
 東北タイでは ビジネスの面でも 中国系タイ人に続くのは彼らだった。

 家を購入していたタイ人の大半は中国系タイ人で いわゆるラーオ系タイ人は
 ほとんどおらず、彼らの仕事は 日雇いで家を建てる仕事だった。

 この借りた家を基点に コンケン市内であれば、自転車に乗って動き回った。
 15年近く前のコンケンは バンコクから450キロも離れていたわりには、
 地方の中心都市といった様子で バンコクから180キロ離れていたパックチョンより
 余程進んでいた。
 コンケン県の県庁所在地ということもあり、比較的大きなホテルが ケンインホテル、
 コンケンホテル、コーサホテルと3軒、中級のホテルを含めるとかなりのホテルが
 あった。
 ディスコなども何箇所かあった。
 市内には 大きなスーパーマーケットも何箇所かあり、郊外には 大型スーパーの
 ロータスやビッグCも建てられていた。
 KFC、ピザハット、ミスタードーナツ、ダンキンドーナツ、洋食、タイレストランも
 多く、ないのは日本食レストランだけだった。

 私がバンコクに移る頃には マンション建設も始まっていたが、タイの金融危機に
 陥り、その後、どうなったのだろう。
 便利さだけを考えれば、その当時のチェンマイより便利だったような気がする。
 バンコクに引っ越してきても 取り立ててバンコクが便利であると感じることは
 なかった。
 ただ違っていたのは 日本米や日本食の材料が バンコクでは手に入れやすいこと
 くらいだった。

 手織り布の仕入れということであれば、ウドン、ノンカイにも近く、バスを使って、
 日帰りで布の仕入れが出来たし、コンケンでいつも布を仕入れ、洋服の縫製を頼む店も
 自転車で5分のところにあり、仕事上、移動が楽になった。

 ただ コンケンで耐えられなかったのは 夏の暑さだった。
 内陸部に位置する東北タイの気候といえば、冬は冷え込み(といっても日本の初秋)、
 夏はやたら暑く、暑いときには 日中40度近くにまでなったはずだ。
 木造住宅であれば、夜はしのげたが、コンクリート住宅では 熱がこもり、
 冷房なしには 気持ちよく寝ることはできなかった。
 インドの夏も暑かったが、東北タイのコンケンの夏も暑かった。



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