ブータン布の今昔

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          ブータン  木綿と毛糸のキラ    1970年代

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 前回 紹介したキラは アクリル毛糸を使って、片面縫い取り織りの技法を使って
 紋様を織り込んだキラだったが、今回は 前回のキラより 少し前の1970年代の
 キラを紹介しよう。

 このキラも 地はインドからの工場生産の木綿糸、片面縫い取り織りの技法を使って
 織り込まれている紋様には 工場生産の羊毛と銀糸は使われている。
 このキラも普段着としてのものではなく ハレの日に身につけるものをして織られた
 ものである。
 このキラも上層階級の人たちのために織られたというより、一般庶民のために織られた
 ものだろう。
 それでも 織り込みの紋様は 丁寧に仕上げられている。
 前回紹介したアクリル毛糸を織り込みの紋様に使ったキラに比べると 色のバランスも
 いいし、打ち込みもしっかりしている。
 部分的に使われている銀糸もプラスティックではなく、昔ながらのきちんとした銀糸が
 使われている。
 そんなところから 着る人(注文主)を意識して、キラを織り上げていることが感じられる。
 決して 高級品の部類のキラではないが、丁寧な仕事、心をこめた仕事ということが
 キラ全体から感じ取れるから面白い。
 これが手仕事ということだろう。

 クシュタラやノシェムというハレの日に身につけるキラは 高級なものは 
 地も生糸、紋様も生糸で織られる、これは主に王族や上流階級のものだ。
 中流階級では木綿の地、織り込みの紋様は 野蚕のシルク糸、もしくは木綿の刺繍糸が
 用いられる。
 しかし、羊毛アクリル糸を用いるというのは 防寒のためなのか、材料が安いため
 なのかどうかはよくわからない。
 1970年頃から羊毛やアクリル毛糸の織り込み模様は増え、1980年以降では
 織られるキラのかなりのものにアクリル毛糸が使われている。
 色落ちがしないのはいいが、木綿の地との色バランスは あまりよくないし、
 着込んでいくうちに 木綿の地は色落ちしていくのに、毛糸やアクリル毛糸は
 色落ちせず、おかしなものになる。



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       ブータン 木綿とアクリル毛のキラ   1980年代

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 1980年後半あたりに織られたキラである。
 このキラは 普段着というよりハレの行事のために織られたものだろう。
 片面縫い取り織りという高度の技術を駆使しながら、使っている素材がよくない。
 地はインドからの木綿の工場糸、そして片面縫い取り織りの紋様は 化繊のアクリル
 毛糸が使われている。
 キラを豪華に見せるための金糸といえば プラスティック製のものである。
 これを使っただけでも ブータン布の持つ品位が失われている。

 インドから怒涛のように入り込んでくるキラの材料に眼を奪われ、それを使うことで
 風合いや味わいがどんどん失われていっている。
 このキラだって 織り上げるのに2,3ヶ月はかかっているはずである。
 せっかくの労力が 報われていないのは残念なことだ。

 新しい素材を試してみたいのはわかるが、それによって 品位が失われることには
 気がつかない。
 多彩な色を持つ化学染料や化繊は ブータンの人々の色感覚を変え、織り込む紋様の
 複雑さを加えていったが、落ち着きのようなものが感じられなくなった。

 どうしてアクリル毛糸が使われるようになったのだろう。
 羊毛と違って洗いが楽なことからだろうか。
 そして、羊毛より安く材料を手に入れることが出来たからだろうか。

 昔からキラの紋様の織り込みに羊毛を使うことはあった。
 これは冬場の寒さに対する防寒の用途もあったのだろうか。
 太い羊毛糸を使って 紋様を織り込んでいれば、確かに時間短縮にもなっただろう。
 ブータンの庶民にとっては このことによって 安くキラを手に入れることが
 出来るようになったのかもしれない。
 昔は ハレのためのキラは 王族など身分の高い人たち専用の衣装であったが、
 1980年ごろには 一般の庶民も クシュタラ、ノシェムを ハレの日に身に
 つけることが普通になってきたようだ。
 あまり高すぎると 手に入れることは難しい。
 そんな時代の要請もあったのだろう。



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 1980年前後に織られた木綿のキラである。
 地にはインドからの工場生産の染め糸が使われ、片面縫い取り織りの紋様と
 紋織りの紋様の両方が織り込まれている。
 片面縫い取り織りのティマの技法が 両端には使われている。

 織りは完璧といってよいぐらいに見事なものである。
 これを着ていた女性も余程気に入ったのだろう。
 しっかり、着古していることがよくわかる。

 しかし、この色のバランスはどうなっているのかときになる。
 片面縫い取り織りの紋様の織り込みには インドからの化繊糸のアクリル毛糸が
 使われ、木綿部分の色は 時の流れとともに 程よく色落ちしているというのに
 アクリル毛糸で織り込まれた紋様は 織られた当初の鮮度をそのまま保っていると
 アンバランスなものになっている。

 20世紀中期前後までは ブータンの羊毛を手で紡ぎ、天然染料で染めた羊毛糸を
 使って 片面縫い取り織りの紋様を施していたから、時が経っても
 地の色と紋様の色がバランスよく 色に変化を加え、味わいを醸し出していた。

 しかし、このしっかりと織られたこのキラにもかかわらず、木綿とアクリル羊毛糸、
 どうしても 時間の流れに折り合いをつけてくれないようである。

 織られた当初は 木綿の地も アクリル毛糸で織られた紋様も うまくバランスが
 取れていたのだろうが、天然素材の木綿と化繊であるアクリル毛は 時の流れと共に
 ミスマッチになってしまう。
 織りの世界では やはり使う素材が 時の流れと共にどう変化していくのという
 見通しが大切であるが、新しいアクリル毛糸に眼を奪われ、そこまで考えることも
 なかったのだろう。
 又、10年後にアクリル毛糸がどう変化するのかという見通しも立たなかったに
 違いない。
 1980年以降 このアクリル毛糸を使うことが流行し、普段着のキラの
 片面縫い取り織りの紋様の大半には このアクリル毛糸が使われているのである。



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 片面縫い取り織りの技法を使っておられたキラである。
 1980年代頃から、ブータンで織られるようになった木綿のキラのパターンなの
 だろう。

 一つ一つの紋様を 片面縫い取り織りで織り上げていくのは 実に手間の掛かる作業で
 ある。
 地には インドからの黒い木綿糸を使い、紋様部分には 1980年代以降に
 インドから入ってくるようになったアクリル毛が使われている。
 全く色落ちのしないアクリル毛である。
 工場生産のも木綿の染め糸、レーヨン糸、アクリル毛糸、化学染料と どんどん 
 インドから入り込んできて、ブータンの染織の世界も大きな転換期を迎えることになる。

 しかし、びっしりと布全体に織り込んだ紋様を見ているだけでも圧倒されるところは
 ある。
 このキラを織り上げるだけでも 1,2ヶ月は掛かるだろう。
 片面縫い取り織りの技法のひとつ ティマ(ごま編み)を使っていないだけ、楽であるが、
 それでも 時間ばかりは 両面縫い取り織りよりもかかる。

 両面縫い取り織りの技法は 東南アジアでもよく見られるが、こうした片面縫い取り
 織りは 他の地域ではなかなか見られない。
 それだけ、面倒な時間を要する技法なのである。
 このキラの中に織り込まれている紋様は 刺繍ではなく、刺繍のように織り込まれた
 紋様であることは 重ね重ね 伝えておく。
 経糸に糸を絡ませながら、作っている紋様で 布の裏にはこの紋様は見られない。
 裏側は 全くの黒地なのである。
 経糸をすくう際、表側だけに模様が出てくるように 紋様のための糸を1本の
 経糸だけに絡ませることで 裏側に紋様が見えないのである。
 どうして、こんな面倒なことをするのか、知っているのは ブータンの人々の心の
 中にしかない。
 伝統とは そんなものなのかもしれない。



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 1980年代に織られた木綿のキラの中にも こんな華やかなものもある。
 片面縫い取り織りと両面縫い取り織りの二つの技法によって織られたものだ。

 織りの技術は素晴らしいけれど、この時代になると、手紡ぎ、手染めといった面倒な
 作業はなくなってしまっている。
 インドからの工場生産の染められた糸が使われることが 一般的になってきている。

 織りの技術はしっかりしたものであるが、ノルマ、お金のために布が織られている
 感じがしてしまう。
 キラの中で使われている紋様のパターンも たくさんのパターンを用いず、
 キラを如何にして美しく織り上げるかの工夫がなくなっているように思われる。

 注文に応じて 着る人のことを考えて織るというより、市場に並べて売るという目的で
 織り上げたものだろう。
 こうなると織り手の個性も着る人の個性も見えてこなくなる。
 着る側も 自分に似合うものを市場に行って買うという姿に変わってしまっている
 のかもしれない。

 20世紀前後からのキラを見ている私からすれば、なんとなく物足りないものを
 感じてしまうのである。
 私に似合うものをこんな風に織ってほしいという願いと、その願いを実現するために
 織り手が工夫し、持てる技術を最大限に生かすというもの作りの基本が 失われて
 しまったとも思われる。

 この時代以降のブータンの織りは 富裕層のための特別注文を除けば、ブータンに
 やってくる旅行者・観光客のためのものへと変わってしまったのだろう。
 そういう時代、そういう社会にブータンが変わってしまった証明なのだろう。



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