ブータン布の今昔

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 このキラが1980年代に織られたものである。
 この時代には レーヨンの糸が インドから入ってくるようになる。
 一見すると シルクのようにも感じられるレーヨンの糸である。
 それと色落ちがしないことも当時は喜ばれたに違いない。
 ただ、シルクと違って、レーヨンの糸でキラを織り上げると重くなってしまうという
 弱点があるが、洗いも楽、その上丈夫であることは 野蚕のシルク、木綿、養蚕シルク
 しか知らなかったブータンの人々にとっては 驚きの素材だっただろう。

 キラを織る際にも すべりがよく、余計な手間が省けたように思える。
 このキラを見ていると、確かに織り込みの紋様も くっきりと浮き上がり、
 見事に織りあがっている。

 このキラを織り上げた当時は レーヨンの糸は 高級品だったのかもしれない。
 今でもそうだか、インドで新しい素材を使うようになる初めの頃は 意外と
 単価が高い。
 日本から 刺繍のためのコンピューターを取り入れた機械が入ってきた頃、
 その機械刺繍が施された布は 手刺繍の布より、高価な時期があった。

 洗い安く、光沢があって、丈夫で色落ちのしない糸ということで ブータンの人々の
 眼を惹き付けたということは充分考えられるし、多少高くても手に入れようとした
 だろう。

 しかし、レーヨンの糸で織られたキラが それほど出回っていないことを見ると、
 裕福な人々の好奇心を満たしただけで、廃れていったのだろう。
 着ると重いという難点も影響したのかもしれない。

 どんな素晴らしい織りの技術を持っていても 使う素材によって、キラの良し悪しを
 決定してしまうことがよくわかる。
 冬などは レーヨンの糸で織られたキラは 防寒の役目を果たさなかったのかも
 しれないし、夏には通気も悪く、着心地が悪かったのかもしれない。
 木綿や野蚕の糸で織られたキラには 敵わなかったのだろう。

 日本で着物の素材としてレーヨンが使われた頃、日本人はどう反応したのだろう。
 興味のあるところである。


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 この木綿のキラも 1980年代に織られたものである。
 紋織りの技術は確かなものであるが、布の材料は インドからの化学染料で
 染められた工場生産の木綿糸が使われるようになっている。

 まだこの時代は いいかもしれない。
 材料はインドの工場生産の糸であっても 自国で織られたものを着るという習慣は
 残っていたようだ。
 1990年代に入ってくると、普段着のキラは インドからの安い布に変わっていく。
 ブータンの紋様を真似て、ジャガード織の技術を使った機械で織られた布が入って
 くるようになってくる。
 見た目には ブータンの手織りの布のように見えるが、機械織りのため織幅も広いので
 すぐにわかる。

 このキラだって、手織りであるから、キラ1枚織り上げるのに 1ヶ月以上はかかる
 はずである。
 普段着であれば、安い方がいいと思うのは 人間の当たり前の姿だ。
 もうブータンは 時間とお金に左右される国になってしまったのである。
 富裕層は 昔ながらの といっても化学染料で染められた糸を使ったキラではあるが、
 まだ手織りのキラを身につけることは出来たが、貧しい人々にとっては 
 手の届かないものになっていたはずである。
 それは日本の着物文化が廃れていったのに似ているかもしれない。

 このキラの織りの技法は 野蚕のシルクで織られたキラの中では生きている。
 しかし、野蚕のキラも 使われている野蚕のシルク糸は 
 化学染料で染められるようになっている。
 そのことは 野蚕のシルクで織られたキラの紹介の際に説明しよう。



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 このキラは 前回紹介したキラと同じ素材、同じ色の組み合わせを使って織られて
 いるが、迫ってくるものが違う。
 糸は インドからの工場生産の染め糸であるが、織り手の織物に対する姿勢が違う。
 美しいもの、工夫を施したものを織り上げようという織り手の心が伝わってくるような
 気がする。
 紋様として織り込まれている図柄も 同じものの繰り返しではなく 形を変えながら、
 織り込んでいる。
 気が 入っているのである。

 両サイドの縦縞も美しい。
 織物にはセンスが必要なことがよくわかる。
 同じ素材と同じ色の組み合わせを使っても 訴えるものがこれだけ違うのである。
 工芸の世界では このことが重要な要素なのかもしれない。
 特に着るものであれば、着る人に合わせて、一番いいものを織り上げるという気持ちが
 大切である。
 ブータンの織物の世界では これは基本的な事柄だったのだろう。
 織る人も着る人も相手の顔が見えている。これが大切なのだ。

 今の世界では 大半のものが大量生産で お互いに顔が見えない中で物が作られている。
 安いものが簡単に手に入るということでは 便利なのだろうが、人と物との暖かい
 係わりは失われてしまっている。

 前回紹介した木綿のキラは 注文によって織られたものではなく、市場で不特定の
 相手に売るために織られたものだろう。
 相手の顔が見えなければ、手抜きが出てくるのは当然なのかもしれない。

 市場で不特定の相手に 売るために織られるようになるにしたがって、
 ブータンの誠実で心のこもった織物の世界が変わっていくのは 目に見えているのである。
 仕方がないといえば 仕方がないのだろう。
 時代は急ぎ足で進んでいっているのである。


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 1980年代に入ると ブータンの木綿のキラのほとんどは 工場で染められた
 工場生産の糸が使われるようになってくる。
 この木綿のキラもそんな時代のキラである。

 紋様の織り込みなども丁寧にしっかりとしているが、何か風合いのようなものが
 感じられないのである。
 糸が均一で揃っていれば、手紡ぎ糸に比べれば、織ることも楽になるし、染めも
 始めから染めてある工場生産の糸を使えば、時間も短縮できる。

 しかしである。手紡ぎ、手染めの糸で織られたキラに比べると 風合い、味わい、
 迫力に欠けているように思えてならないのである。
 確かに織るという作業には充分時間が掛かっているのだろうが、糸を紡ぎ、糸を染めと
 いう作業を省いたことで、大切なものがかけ落ちてしまったようにも感じられる。
 器用さだけが目立ってしまうのである。

 織り手にしてもこのキラを織り上げ、このキラにどれほどの愛情を感じているのだろう。
 どれほどの心をこのキラに傾けたのか、それが感じられない。
 ノルマを果たしたといった感じである。
 誰かに喜んでもらうというより、織り上げて お金を手にするということが
 大切な社会へと変わっていっているのである。

 1980年以降のキラには 織り手の織物に対する姿勢、心の置き方が変わり、
 それが 布にも現れているようにも思える。
 それでも 今織られているものに比べれば、まだましである。
 貨幣経済の浸透は ブータンの織物の世界も変えていったのである。



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 20世紀中期から1970年頃までに織られた木綿のキラであるが、経糸に
 野蚕のシルク糸も多く使われている。
 縦縞のえんじ色に近い茶色部分には野蚕のシルク糸が使われている。
 紋様の織り込みに使われている糸も野蚕のシルク糸である。

 両脇にある縦縞は ブータンの虹色を意識して織られている。
 ちょっと素朴で魅力的なキラである。
 日常身につけるには もったいないぐらいお洒落な色の組み合わせだ。

 この時代の世情を象徴するように 使われている素材は ブータンの野蚕のシルク糸と
 インドからの工業糸が使われている。
 染めも 天然染料と化学染料の両方が使われている。 
 しかし、中央部分に使われている糸は 天然染料で染められているせいか、
 落ち着いた雰囲気のキラに織りあがっている。

 私の好む木綿のキラは この時代までのものである。
 この時代以降のキラには 化学染料で染められた工業糸、その糸も木綿だけでなく、
 レーヨンも使われるようになる。
 色も派手派手しいものになり、落ち着いた色合いではなくなっていく。

 ブータンの人々も 色のはっきりしたものを好むように変わっていくのである。
 時代の流れは 止めることは出来ない。
 面倒な手紡ぎ、天然染色の世界が だんだんと失われ、効率的に織ることに
 心の置き方も変わってくるのである。

 ブータン旅行が一般的になってきたのは 1990年以降である。
 その時代には ブータン国内には 古い布は流出しており、旅行者の目にする
 ブータン染織は 工業糸、化学染料を使ったものばかりになっていたはずである。



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