ネパールの教育

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 翌日、早速、雨の中、傘をさしながら、学校に行ってみる。小さな門をくぐり、中に入ってみると、
 広い中庭(学校の校庭としては狭い)になっており、四方を建物が取り囲んでいる。
 今日は、ネパールの大きなお祭りインドラ・ザットラのため休日になっており、
 生徒たちの姿は見えない。
 後ろ側にある建物の窓の中に、学校の先生らしき人がいたので、
 校長は、いるかと尋ねてみると、いると言う。
 上に上がってくるようにと言うので、木製の古い階段を登っていくと、校長室に3人の人間がいる。
 いぶかしそうに、私を見つめ、一体何の用事で来たのだろうと怪訝そうである。
 いつもそうであるが、 日本人には見られないのだ。
 自分は、日本人で、ネパールの公立学校について知りたくて来たと言うと、
 一斉に彼らの緊張がほぐれ、笑みが浮かぶ。
 この学校について、色々質問をしてみる。わかったことを羅列すると、

 学校の名前   プロガディ・シスチャック・サタナ中学校

 生徒数     四百人

 学年      幼稚園から10年生まで

 授業料     第1学年から第5学年までは、授業料はただ、教科書代もただであるが、
         英語、英語で書かれた数学のサイドテキストは、実費
         第6学年から10学年は、授業料は、平均して年額2千ルピー、
         教科書は、実費購入。
       

 問題点     校舎の老朽化

 教師の給料   小学校教師の給料 月6千ルピーから7千ルピー
         
         中学校教師の給料 月 1万1千ルピー

 こんなことを聞いたのであるが、この学校に来る生徒の6割は、
 ネパール人の家で下働きをしている子供、レストランや商店で働いている子供であると言う。
 民族的に言えば、タマン族、タライのタルー族などが多く、
 親が子供の教育に無関心な民族が多い。
 他には、村から出てきたバウン、チェット族などもいる。
 カトマンズの昔からの住民、ネワール族も子供は少ないということである。
 働いている子供が多いせいか、15,6歳で5年生ということもある。
 又、働きながらの勉学であるせいか、途中でやめていく子供も多いようだ。
 この学校では、働きながら勉学に励む貧しい子供たちのために、奨学金を、工面して集め、
 2百人の生徒が、奨学金の恩恵を受けているそうだ。
 ネパール政府の援助など無いに等しく、出しているのは、教師の給料のみで、
 学校の整備保全は、寄付に頼っている有様だ。

 建物の外を眺め、どうして この建物を壊すのか、疑問に思ってやってきたのであるが、
 建物の内部を見ると、確かにひどい状態なのである。
 木製の天井も、ペンキが剥げ、雨漏り、壁の崩れと、子供たちの安全も保障されない
 ひどい有様なのである。
 ひとたび、地震でも起きれば、どうなるかわからないような建物の内部である。
 ネパールでは、70年前にも大地震が起きており、その時は、多大の被害があったということだ。
 その時の地震に耐えて、この建物、今もその姿を見せているのであるが、
 次の地震(ここ何年かの内にという噂もある)の時は、どうなることやら、
 予測も出来ない状況だ。

 日本からの援助の話も嘘(ネパール人の噂話には確認が必要だ。)で、
 学校の補修のための援助を探していると言うのが、事実だった。

 カトマンズでは 90パーセントの子供が、施設のよい私立学校に通っているにもかかわらず、
 この学校には、建物の危険におびえながら、苦しい環境の中で学ぶ子供もいるのである。
 貧しい子供のもとには、援助の手は届かず、金のある者には豊かな教育が保障されている、
 ここに今のネパールの不平等が、現れているのである。
 ネパール政府にとって、自国民の教育など、どうでもいいのである。
 愛されない国民が、国を愛するはずがないのは、当然のことだ。


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 雨模様の天気の中、傘を片手に近所の露地を散歩する。
 歩いたことのない露地をあちこちと歩いているうちに、
 百年以上も時を経たと思われるネワール建築の立派な建物に出くわす。
 この地区に20年近く、住んでいながら、1度も私の眼に留まらなかった建造物である。
 出窓には、ネワールの木彫り職人が粋を尽くした彫刻がなされ、工芸的にも価値のあるものだ。
 使われているレンガも質の良いものが使われ建物の風格を際立たせている者だった。
 気になったのは、1枚の味気ない看板、何が書かれているのかと、読んでみると、
 プロガディ・シスチャク・サタナ、その下に マダミックヴィダレと書かれている。
 どうも、中学校らしい。
 その近くに住む人に訊いて見ると、公立の学校であると言う。

 ラナ専制時代にラナ家の人間によって建てられ(ネワールの建築方式で建てられていること
 から見て、ラナ家が建てたというより、ネワールの金持ちが建てた建物を 
 時の権力を持ったラナ家が取り上げたのではかと思う。)、
 後にそれを政府が買い上げ、学校として使用しているとも言う。
 建物そのものは、昔はゲストハウスとして使われてきたものらしい。
 学校の創立は、58年前、専制政治を104年に渡って続けてきたラナ家が倒れ、
 その後のサハ家の王政復古のトリブヴァン王の時代のように思われる。
 歴史的には、由緒正しい学校のようだ。

 その学校をじっくり外から観察した後、家路に向かう途中、
 いつもの井戸端会議のネパール人達に、話をし、いろいろ訊いて見ると、
 学校の建物は、近々、壊され、日本の援助によって、新しい建物が建つと言う。
 あんな立派な、建造物を壊すなんて、一体どういうことなのだ、驚きを覚えたが、
 ネパール人の話、どこまでが、本当で、どこまでが嘘か、わからない。
 明日、もう一度、学校に行き、校長に本当のところを訊いて見る必要がある。


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