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 増築と改築を繰り返し迷路のようになってしまった集合住宅群、暴走族の落書きから『下天楼』と呼ばれている建物を中心に巻き起こる奇怪な出来事の数々。捨てられたエロ本が、宇宙刑事が、人工生命体が迷い込むその場所で、過去と未来がねじれてつながり、読者を予想もでかなかった場所へと導き、振り返りもしないで立ち去ってしまう。
 
 
 
 2008年から2011年までかの「メフィスト」誌上で連載されていたコミックの単行本。発売されてからじわじわと話題になり、ツイッター上で「俺マン2011」というハッシュタグで募集されたランキングではあれよあれよと1位にまで上り詰めた。
 作者の石黒正数はアニメ化もされた『それでも町は廻っている』という日常系ギャグマンガや、hima的日本三大大学生マンガの一つ『ネムルバカ』などで、独特の世界観を描いている。特に『それ町』の主人公がミステリ作家を目指していたり、タイムスリップネタがあったりと著作を読むとミステリやSFに造詣が深いことが見てとれる。
 
 そして、今回のこれである。
 
 ギャグ、ミステリ、SF、様々なものが奇妙なテンションとバランスで融合している、なんというか不思議な作品。全9話で前半は1話完結、後半からストーリーになっていくが、独立した話は1つもなく、全てが上手くつながっている。
 第1話は捨てれらたエロ本の謎解き。第2話は宇宙刑事になったという友人の話。そんな滑り出しから、いつの間にやらロボットに感情を持たせる実験や人工生命体の是非を問う話へのスライドが始まり、謎めいた姉弟の存在にスポットが当たる。第1話でのん気にエロ本を物色していた少年と、彼を冷ややかに見つめていた姉だ。最後まで読みきってしまうと、どこにもなかったはずの伏線が浮かび上がっていた。
 
 石黒正数が以前から好きだった。古典とシュールのギリギリ辺りを狙ってくるギャグとか、時折垣間見えるミステリテイストとか、同世代だからこその温度とか、好きな要素は数限りなく。
 そんな僕がこれを読んで思ったことは――ああ、この人はこういうのが書きたかったんだな――ということ。読み終わった瞬間の感想がこれで、妙に納得して、この人のことが好きでよかったなあと思った。これからも読み続けるだろうなと。
 
 石黒テイストの集大成とも言える作品。でもまだまだ通過点であってほしい。
 
 
 
 本当に感想にしかなっていないけど、これでも書き過ぎな気がしている。本来なら予備知識なんて持たずに読んで欲しいけど、それだけ読んでもらえないからギリギリのところをがんばってみた。
 ただ、好みの分かれる作品だとは思う。俺マン2011でワッショイされてしまった分、趣味の合わない人が読んで「なにこれ?」となることがありそうで、それは哀しい。
 
 最近は話題になる作品のブームが加熱しすぎる傾向があって、持ち上げられすぎて不当な評価をぶつけられる作品が増えている感じもする。選択肢が増えすぎて楽しめるものを探すのも大変な昨今だけど、それ以上におもしろいマンガは人それぞれに無数にあるものだから、安易なランキングや「おもしろい」とか「話題になってる」としか伝えない広告に頼ってはいけない……これはまた、別のお話。
 
 

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かとちん
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