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推理小説家・鹿谷門実が受けた奇妙な依頼。出版社主催のパーティで知り合った同業者からの「自分の代わりにある集まりに参加して欲しい」というものだった。その理由は、2人の容姿が瓜二つだったから。集まりが催される会場がかの中村青司の手によるものだということに興味を覚えた鹿谷は、訝りながらも依頼を受ける。そして訪れたその館――奇面館で待っていたのは<もう1人の自分>を探しているという主・黒川逸史と、5人の招待客だった。主の意向で滞在する全員が用意された仮面をつけたままで過ごすという異様な時間、そして頭部と全ての指を切り落とされた奇妙な死体だった。
言わずと知れた『館』シリーズの第9弾。 綾辻行人や有栖川有栖の作品は、僕がミステリビギナーで体がしっとりと湿っていて、まだ視力もおぼつかなかった頃にお母さんの乳首までゆっくりと導いてくれたような感じで、あの時の喜びと言うか人生が始まった感じと共に記憶されている(←何言ってるの?)。 無駄話は省くと、つまりはものすごい衝撃的でビックリした印象が強いということ。十角館の驚き、孤島パズルのカタルシス、そのイメージはあまりにも鮮明で大きくて、今でも作品を読むときにはその記憶を参照しながらになってしまう。期待という以前のパブロフ的に驚く準備をしてしまうのだ。 というわけで、冷静な評価ができている気が全くしないので、感じたことを感じたままに書かせていただきます。 そんなのいつものことなのですが、今回はいつも以上に前置き(言い訳)が自分の中で必要なんです。それくらいに特別なのだということをご理解いただければ。 前作の『暗黒館』はひたすら“雰囲気”を楽しんだ記憶があるのだけど、今回は作者自身の「本格ミステリの庭で遊べるか?」という言葉通りに、純然たるミステリを楽しんだという印象。 作中、鹿谷がこんなことを言っている――こんなとんでもない状況は前代未聞ではないか、と思う。現実に起こった事件については云わずもがな、古今東西、さまざまなミステリの物語中で描かれた事件をみわたしてみたとしても。 ハードル上げてきたなあと思ったのと同時に、そういうスタンスで読めばいいんだなとも思えた。 張り巡らされた伏線は、それでも各人の視線や思考を介して分かりやすく配置されている。数も多いけどきちんと整理されていたので混乱はしなかった。回収も順序良く丁寧に行われていて、どこの話?と慌ててページを遡る……などということもなかった。殺人事件の解決もすっきりと納得できて、奇面館に集められた理由という作中最大の謎も“らしい”感じでまとめられていて楽しめた。 全員が仮面をかぶっているという奇妙さもあり、雪に閉ざされた山荘で繰り広げられる王道のミステリを読んだという満足感があった。 ……のだけど、どうしても「もう一声!」と言いたくなってしまうのだ。 不満、というものではなくて、次々とめくられるカードの終わりが見えても、まだあるよね、まだあるよね、実はココにもカードがあったんです、って出てくるんだよね、と求めてしまうことがやめられない。 この辺り、贅沢になっているのか三つ子の魂なんとやらなのか分からないけど、自分から進んで損をしに行ってる気がしなくもない。、 自分ばかりが損をしたり消化不良を抱えているのも悔しいので、ちょっとした不満のお話。 鹿谷が妙にノリ良く推理をするのはいかがなものか。こんな奴だったっけ?と何度も思ってしまった。巻き込まれ型の探偵の場合、やむにやまれぬ事情で推理をするというイメージなんだけど、今回は興味本位で推理をしていた印象。推理そのものが目的になっていて、そのために作品全体が妙に平和な雰囲気になっていた。殺人事件部分が、その割りを食ってしまった感も否めない。 好意的に解釈すれば、それも含めてミステリと言う型にこだわった結果だということもできるのかも知れないけれど、閉鎖空間であの状況であれば、もっと切迫した空気になって、疑心暗鬼が錯綜しまくってギスギスしてくれても良かったと思う。そこに陰鬱なカラーがあぶり出されて来るのが好きなのに。 ともあれ、楽しみにしていた『館』シリーズも、次で最終とのこと。最後は雰囲気と王道を融合させた大作と出会えることを願う。 |
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ほんと、同感ですね。
最後の1作品に多いに期待してしまうのは当然でしょう^^
やっぱり閉じ込められている館の中ですから、もっと緊迫感があっても良い・・・・というか、その方が当然かと思いますね。しかもカドミ探偵の一人舞台^^;う〜ん。やっぱり評価は低いですね。
2012/2/3(金) 午後 10:33
>たけたけさま
お返事が盛大に遅れました。すみません…
おっしゃる通りで、やはり皆さん違和感を抱かれていたようですね。最終作では門実が命の危険にさらされますように(?)
2012/2/12(日) 午後 4:04