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トゥルル、トゥルル、トゥルル・・・いつもの時間に電話が鳴った。 午後7時半、杉山家ではこれから夕飯を食べようという時間である。 ヨシネと母の洋子は顔を見合わせて、お互いに『早く出てよ』と目で合図を送った。 出たくはないが、洋子の仕事の電話という可能性も捨てきれない。
「はい!」
受話器を取った洋子が、必要以上に大きな声で言った。そしてすぐに「切れたわ。」と言って受話器を置くと ストンとダイニングのいすに腰を下ろした。 「どういうつもりなのかしらねぇ。」 洋子はテーブルの上の奈良漬をつまむと、ポイと口に放り込んだ。 土日以外の平日7時半に無言電話がかかってくるようになって1ヶ月近く経つ。 こちらが黙っている限り、相手は無言のままで電話を切ろうとしないのだが、 何かしゃべると途端に切れてしまう。 一度受話器を取ってそのままにしておいたら、間の悪い事に洋子の仕事先からの電話で 電話をしてきた担当者は、何かあったのかと心配して家まで駆けつけて来たことがあった。 「放っておけばいいじゃん、別に害はないわけだし。」 ヨシネは洋子の前に今晩のおかずの『唐揚げの大根おろしかけ』を並べた。 ヨシネの得意料理だ。 「だって気持悪いじゃない、毎日かかってくる無言電話なんて。」 洋子は力任せに缶ビールのプルトップを引っ張った。 「一緒にご飯食べたいのかもよ?」 「誰がよ!?」 「う〜ん、密かにママを慕う人。」 「それって、ストーカーじゃない。だいたいストーカーなら、お母さんより女子高生のヨシに目をつけるでしょ。」 「それは、ナイナイ!」 ヨシネはから揚げを口いっぱいにほおばりながら、箸を持った手を振った。 「それはそうね。」 母でありながら、いや、母であるからこそ、洋子もあっさりそれを認めた。 ヨシネは花も恥らう高校2年生。 ・・・のはずなのだが、これがどうしたものか、ちっとも恥らわないのである。 小学校から始めたサッカー一筋で、 中学高校も、サッカー部のマネージャーをやりながら練習に参加していた。 試合ではガタイのデカイ男子にかなわないが、ボールの扱い方は男子にも引けを取らなかった。 ショートカットで日に焼けて真っ黒なヨシネを見て、ココロときめかす奇特な人がいるとは到底思えないのである。 「電話だけとは言え、心配だなぁ。お母さん来週金、土と取材で奈良に行かなきゃならないんだよね。」 ヨシネの父親はヨシネが4歳の時に病気で亡くなっている。 それ以来洋子は雑誌のイラストレーターをしながら、女手一つでヨシネを育ててきた。 ヨシネが高校に上がるまでは泊まりの仕事は受けなかったが 高校に上がってからは2,3ヶ月に1度くらいの割合で取材旅行に行くようになっていた。 高校生になれば、女の子一人で留守番させても大丈夫だろう。 しかし、わけのわからない無言電話がかかってくるとなれば話は別である。 ビールの泡を口ヒゲのようにつけた洋子の顔を見て (その顔で『心配だなぁ』って言われても・・・) ヨシネはそう思ったが口には出さなかった。
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心配性のお母さんと、恥じらいの未だ無い娘との、情景が、良く
見えて、普通の(父が居ない以外)家庭のワンショット!
無言電話は、どっち??
2008/3/15(土) 午後 11:01
ファンポチ!
2008/3/15(土) 午後 11:03
すみれさん、読んでいただけたんですね。ありがとう。
無言電話は・・・さてどっちなんでしょう?
ポチありがとうございます。
2008/3/15(土) 午後 11:19
また来たよ〜〜。火曜サスペンスを、見すぎなもんで〜〜(´゚ω゚).:゚*ブッ
2008/3/16(日) 午後 2:27
すみれさん、ありがと〜。
めっちゃ嬉しいです!
2008/3/16(日) 午後 3:08
あれ〜この日3月16日は、すみれの誕生日だぉ
2008/5/22(木) 午後 9:01
あ、そうだったの。
お誕生日おめでとう!・・・って今頃言われてもねぇ〜。
2008/5/22(木) 午後 9:45