王子様は自転車に乗ってやって来る

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王子様は自転車に乗ってやってくる

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 天井まで届く大きな一面ガラスの窓から朝の光がふりそそぐサンルーム。

その奥から一定のリズムでカシャカシャカシャという波長の高い音が聞こえる。

 「先生、こんなに早くから何してんの?」

サンルームの扉から入って来たテッチャンが奥のキッチンに向って声をかけた。

「あら、テッチャン早いのね。」

フリルのついた真っ白いエプロンを着けたカリスマパテシェ鮫島は

手に持っていた泡立器を置くと、作業台の上に置いてあるノートに目を移した。

「なぁに?新しいお菓子のレシピ?」

テッチャンは部屋の隅にかけてあった鮫島とお揃いのエプロンを着けると

鮫島の横からノートを覗き込んだ。

 「あら、プリンのレシピ!」

テッチャンは怪訝な顔で鮫島を見た。

「新しいプリンを発売しようかと思ってね。」

「どうして?『とろけ過ぎてどろどろプリン』評判いいのに。」

「そんなことないわよ。私見ちゃったんだもん。

女の子が『大嫌い!』って言いながら『どろどろプリン』をゴミ箱に投げつけるところ。」

「ウソっ!」

テッチャンは大げさに両手で口を押さえた。

「ホントよ。昨日散歩してる時に見たんだから。」

鮫島はがっくり肩を落とすと

「世間がおいしいって騒ぐのも一時だけよ。どんなに美味しくったってすぐに食べ飽きてゴミ箱に投げつけるんだから!」

鮫島は近くにあったタオルをつかむと、片方の端を持って

「世間なんて!世間なんて!世間なんて、なにさっ!!」

と言いながら何度もテーブルに叩きつけた。

「先生、落ち付いてっ!」

テッチャンは鮫島の腕を押さえると

「世間が認めなくたって、ワタシはずっと先生の味方だから!」

と言って鮫島の両手をギュッとにぎった。

「テッチャン!」

鮫島もギュウッとテッチャンの手を握り返すと、ウルウルした瞳でテッチャンを見つめた。

二人が見つめ合う事3分。

気分が晴れた鮫島はテーブルに叩きつけたタオルを首にかけると

「さぁ、世間があっと驚くようなプリンを作るわよっ!」

と言って、泡立て器を取り上げた。

「先生!今までのプリンの常識を覆すようなモノを作りましょうね!」

テッチャンは手慣れた様子で片手に3個の玉子を持つと素早くボールに割り入れた。


 その2ヶ月後、

『カリスマパテシェ鮫島の歯ごたえしっかりシコシコプリン』が新発売となり

空前の『シコシコプリンブーム』となったのである。

                                      (完)





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 急に駈け出したヨシネを見てあっけに取られていた4人は、戻ってきたヨシネに先を争って声をかけた。

「何話したんだ?」

「謝ったのか?」

ヨシネは勢い込んで聞くオジとタケシの視線を避けるようにして

「いいじゃん。何だって。」

と下を向いたままぶっきらぼうに答えた。

「よくねーよ。気になるだろ。」

「私達も責任感じてるんだよ。」

しかしクマとアヤに詰め寄られると

「ん・・・」

と言って照れくさそうに頭をかいてから

「好きになってくれて・・ありがとうって・・・」

と最後は聞き取れないくらいの声でぼそぼそと答えた。

翔子に謝罪する事しか考えていなかった4人にとって「ありがとう」という言葉は意外だった。

(そうなんだ、ヨシネってこういうヤツなんだ・・・)

 4人は黙ってお互いに顔を見合わせると、次の瞬間ヨシネに駆け寄り

「お前イイ事言うじゃん!」

「偉いぞ、よくやった。」

「さすがヨッシー!」

と声を上げてヨシネの肩や背中を叩いた。

「さすがモテる男は言う事が違うね〜。」

と言いながらヨシネの頭をなでた・・・と言うより髪の毛をクシャクシャにしたタケシは

当然のごとく右太腿に蹴りを入れられた。

 「じゃ、帰るか!」

タタケシが蹴られた腿をさすりながら言うと

「競争だぞ!」

と言うが早いかクマが自転車にまたがりグンとペダルを踏んだ。

そして立ちこぎをしたまま自分達の方を見ている翔子と俊介に

「失礼しまーっす!」と大声であいさつすると駐車場を突っ切って出て行った。

「失礼しまーっす!」「失礼しまーっす!」

その後にオジとタケシも続いた。

「失礼しまーっす!ちょっと待てよーっ!」

そう言いながらヨシネが自転車をガシガシこいで追いかけて行き

最後に会釈をしてアヤが走り去った。

 翔子の中のざわざわしたモノを彼らの自転車が全部蹴散らしてくれた。

「あの背中に惚れたんだ。」

俊介はそれを見送りながらぽつりと言った。

「うん・・・やっぱり好きだなぁ。」

何かが吹っ切れたように気持ちが軽くなった翔子はそう言いながら「う〜ん」と背伸びをした。

「お前そっちの気があるんじゃないの?隣にこんなカッコイイ男がいるのにさ。」

「そうかもね〜。」

「肯定かよ!」

「でも、見直しちゃった。遠藤君って見かけによらず頼りになるんだ。」

「何だよ、見かけによらずって!」

「いいじゃん褒めてるんだから。」

翔子はそう言うと走り出した。何だか無性に走りたくなったのだ。

走ってヨシネを追いかけて「やっぱり好き〜!」と叫びたかった。

追いつけないけどずっとあの背中を見ていたいと思った。

 「おい、待てよ!」

(何だよ、さっきまで泣いてたくせに!俺がどんだけ心配したと思ってんだよ。)

翔子が泣くのを見るのがこんなに辛いなんて自分でも驚きだった。

俊輔は呆れながらも翔子が元気になった事が嬉しかった。

「今日のお礼にラーメンおごったげる!」

翔子は振り向いて手を振った。

(くっそ〜、俺ってアイツのペースにはまってる!)

(ま、それもいいか。)

「チャーシュー付きなっ!」

そう言うと俊介は翔子に向かって走り出した。


PS:まだ続きます



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 俊介の言葉で今までこらえていた感情が一気に噴出して、翔子は涙を止めることができなかった。

どうして無言電話なんてしてしまったのだろう?

どうして会いたいなんて言ってしまったのだろう?

どうして好きになった人が女の子だったのだろう?

気付かなかったとは言え女の子に夢中になって無言電話までしてしまった自分は

傍から見たらさぞ滑稽に映るだろう。

翔子は周りのみんなが自分を見て笑っているような気がして顔を上げる事が出来なかった。

 うつむいたままぽたぽた涙を流す翔子の手を引いて歩きながら

俊輔は自分の無力さを痛感していた。

どうして会いに行くと言った時止めなかったのだろう?

冷静に考えれば無言電話の相手に好意を持つなんて有り得ない。

たとえ会って気持ちを伝えたとしても、うまくいく可能性なんてある訳ないじゃないか。

翔子が傷つくことは目に見えている。

(俺は何をやってたんだ。)

(おまけに泣いている翔子を慰める事すらできない。)

 たとえ俊輔介がどんなに言葉を尽くして励ましたとしても翔子の心が埋まることはないのだ。

翔子の思い続けた王子様の代わりには誰もなれない。

例え杉山佳根でも・・・。

そんな事を考えていた俊介の前に杉山佳根が駈けて来た。

 「あの・・」

ヨシネは俊輔の後ろでうつむいている翔子に声をかけた。

(この声なら何度か電話で聞いたことがある・・・)

翔子はそれがヨシネの声だとすぐにわかった。

今の姿を一番見せたくない相手だ。彼女から見たら今の自分は惨め過ぎる。

翔子はうつむいたままハンカチで顔をごしごしこすると上目遣いでヨシネを見た。

ヨシネの顔を正面から見るのは初めてだが、

想像通り相手を真っ直ぐ見つめる鳶色の瞳にすっと通った鼻。

目の前にいるのは間違いなく翔子が想像した通りの王子様・・・だったはずなのだが・・・。

 意思の強そうな瞳が、翔子の瞳をとらえると

「好きになってくれて、ありがとうございます。」

と言って頭を下げた。そして

「どこかで顔を見かけたら声かけてください。」

と言うと、俊介に一礼して仲間のところへ戻って行った。

 (えっ!?)

翔子は顔を上げると仲間の方へ走って行くヨシネの後姿を見つめた。

戻ったヨシネを仲間達が取り囲んだ。

彼らはヨシネの肩を叩いたり、髪の毛をくしゃくしゃにしたりしている。

ヨシネがはにかんだように笑って髪の毛をくしゃくしゃにした男の子に蹴りを入れた。

 (あぁ、そうだ。私が彼女を好きになったのは、おばあさんに寄り添う後姿を見たからだった。)

(男とか女なんて関係ない。あの子だから好きになったんだ。)

 「いいヤツだな。」

俊介が前を向いたまま言った。

「当たり前じゃん。私が好きになったんだから。」

さっきまで泣いていた翔子が誇らしそうな声で言った。




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 そうなのだ翔子は「そんなにヨシネの事が好き」だったのだ。 

それが自分達の誤算だった。

その誤算が結果的に翔子を傷つけてしまったのだ。

「謝った方がいいよなぁ。」

タケシは同意を求めるようにオジを見た。

「そうだなぁ。」

 確かに翔子を傷つけまいと思ってした事だが、騙そうとしたのは事実だ。

このまま知らん顔をして帰るのは後味が悪過ぎる。

だが翔子は事情を知っている自分達には会いたくないのではないか。

オジは口ではそう言ったものの、謝った方がいいのかどうか迷っていた。

 「彼女、私達が考えるよりずっと傷ついてると思う。

軽い気持ちで謝ったって傷を大きくするだけじゃないかしら。」

アヤの言葉にタケシが

「軽く謝る気なんてねぇよ。」

といつになくキツイ口調で言った。

「ごめん、そういう意味じゃなくて私達が誠心誠意謝ったとしても

謝られること自体が彼女にとっては辛いんじゃないかなって・・・」

「それは俺も思う。」

クマがポツリと言った。

翔子の『「顔は見てないけど見間違える事はないです。』という言葉を直接聞いているだけに

彼女をひどく傷つけてしまったという思いが他の4人より余計強かった。

クマの沈んだ声を聞いたタケシは「そうか。」と言ったきり、黙ってしまった。

じゃあどうする?

みんな結論を出せないまま、チラチラと店の入口に目をやりながら翔子が出てくるのを待っていた。





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 「逆に傷つけちゃたのかなぁ。」

ファミレスの自転車置き場でヨシネがポツリと言った。

クマから話を聞いて寺内翔子の想いが、自分達が考えていたよりもずっと真剣だったという事に気づいて

みんな後ろめたい気持ちを引きずったままファミレスを出た。

 「ワシが電話で話した時にはっきり言えばよかったんだ。」

オジが下を向いて腹立たしそうにカッカッとつま先で地面を蹴った。

「あの場合は仕方ないと思うわ。誰だって相手が女の子だったらびっくりして言葉が出ないもの。」

あの電話を取ったのがオジでなくヨシネだったら、

これからも寺内翔子は電話の向こうにいるはずの妄想で創り上げたヨシネに

自分の声を届けたくて無言電話をかけ続けるだろう。

彼女にとっては現実を知るより電話の向こうで返って来ることない返事をじっと待っている方が幸せだったに違いない。

(でも、そんなの悲しいじゃない。)

アヤは自転車置き場の横にある花壇の縁に腰を下ろしてぼうっとしているヨシネの細い肩を見た。

 「俺らも面白がってたとこがあるからな。」

タケシがスタンドを立てたままの自転車に座り、落ち着きなくペダルを前後に蹴った。

決して悪ふざけでやった事ではない。しかし、探偵気分で浮かれていたのも否めない。

「俺、言わない方が良かったのかなぁ。」

クマが大きな体を縮こまらせて心細い声を出した。

「クマが言わなくても、バレたと思うわ。」

 翔子が『顔は見てないけど見間違える事はないです。』と言ったと聞いて

5人は彼女を傷つけまいとしてやった事が結果的に彼女を傷つけてしまったという事に気づいたのだ。

「背中を見ただけでヨッシーってわかるなんて、本当に好きだったんだ、ヨッシーのこと・・・」

アヤは誰に言うともなくそうつぶやいた。





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