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ブラジル移民110年、友好の絆
 …調査研究本部研究員 野坂雅一
2018年7月30日3時0分

 1908年(明治41年)に第1回移民船「笠戸丸」で781人の日本人が海を渡り、ブラジルに移住してから今年で110年。日系人は6世まで誕生し、ブラジルの各分野で活躍している。日系移民1世の二宮正人・サンパウロ大学大学院教授・元ブラジル日本交流協会会長(69)が今夏来日した際に話を聞き、移民の現状を考えてみた。

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5歳で海を渡った日系1世の二宮さん

 「日本とブラジルの問題で、二宮さんにお世話にならなかった人はいない」と評価しているのは北岡伸一・JICA(国際協力機構)理事長である。二宮さんはJICA事業を海外の視点から助言する国際諮問委員会(International Advisory Board)のメンバーの一人。JICAや日本政府だけでなく、ブラジル政府の関係者などに対し、移民たちへの教育・語学研修などの充実、財政支援の必要性、日系コミュニティーの連携などを訴えてきた。
 今夏はブラジルの学生たちを引率して広島の原爆ドームなどを訪問し、平和と法に関するシンポジウムで講義する。明治大学学長特任補佐、広島大学と武蔵野大学の客員教授も兼務しており、日本とブラジルを年に何回も往復し、学生など若い世代を中心に両国の親睦と理解が進むよう、精力的に活動している日系移民の代表と言える。
 そんな二宮さんだが、これまでの道のりは 平坦 へいたん ではなかったようだ。5歳だった1953年、洋服の仕立屋だった両親とともに長野県からブラジル・サンパウロに移住した。先に移住してタワシ工場を経営していた叔父たち一家を追いかけたという。当時、日系ブラジル人に主として期待されたのはコーヒー農場での労働力で、「奴隷代わりにたくさんの日本人が使われたのです」と振り返る。
 二宮さんは現地で教育を受け、働きながら高校とサンパウロ大学に進学して法律を学び、東大にも留学した。その後、中南米の法律の専門家として母校・サンパウロ大学で 教鞭 きょうべん を執るとともに、ブラジルの弁護士として活躍している。昨年までブラジル日本交流協会会長も約10年務めた。移民1世だが、「両親と一緒に移住したので私は準2世とも言われています。学生時代から広告代理店などの数か所で働きながら学校に通った」と話す。
 移民たちは慣れないブラジルでの生活やポルトガル語で苦労した人が多い。農業や事務手伝い、商店、レストランなど仕事は様々だが、二宮さんのように働きながら学んだ移民が大半だったようだ。

ジャポネース・ガランチードの誇り
 現在、ブラジルの日系移民は約190万人に上るという。150年前の1868年(明治元年)に日本から最初の移民が渡り、すでに日系8世まで誕生している米国ハワイ州には及ばないが、ブラジル移民の歴史も長い。

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 「ジャポネース・ガランチード」(保証付きの日本人)――これはブラジルで日本人や日系人を表す言葉として知られる。約束を守り、真面目にこつこつ働いて信頼を勝ち取ってきた高い評価を示すものだ。二宮さんも「ジャポネース・ガランチードという言葉はいまも使われます。日本人なら大丈夫という伝統は生きている」と誇らしげに話す。
 一方、最近では、日系ブラジル人が就労を目的に来日するようになり、約30年が過ぎた。入管法の改正・施行によって来日しやすくなった背景がある。日本への出稼ぎブームで日系ブラジル人は一時、約32万人に上ったが、現在はやや減り、19万人ぐらいが日本に住んでいるという。日本社会への一層の定着が課題とされる。

日本で働く日系ブラジル人の支援
 双方向の移民交流が広がる中、二宮さんは「子供だった時に私自身も苦労しただけに、日本に移住する人たちをサポートしたい気持ちが強くなっている」と語る。その心意気を示すのがサンパウロで国外就労者情報援護センターの責任者を務めていること。センターは日本で働くブラジル人に語学を含めた事前研修などを行うのが目的で、「お手伝いして26年目になった」とか。日本へのほとんどの移住者の支援に関わり、日本で何か問題を起こした場合とか、子供の非行の相談まで、たびたび来日する二宮さんが担当するケースが少なくない。
 7月末に秋篠宮家の長女 眞子 まこ さまがブラジルを訪問して、日本人移住110年の記念式典に出席されたが、皇室は日系移民や日系社会との縁が深い。日本語、ポルトガル語に堪能な二宮さんが最近出版したのが、天皇・皇后両陛下をはじめとする皇族の短歌をポルトガル語に翻訳した短歌集で、関係者に配布している。日本とブラジルの橋渡しを長年務めてきた二宮さんならではの短歌集といえよう。


 JICA横浜の海外移住資料館(神奈川県横浜市)は、「日伯110年の絆―在日30年をむかえた日系人の歴史と日常」の企画展を9月2日まで開催中だ。6世まで広がった日系移民がブラジルに定着し、逆に日系ブラジル人も日本社会に生活している。企画展は、草の根交流の光と影や、日本とブラジルの関係の深化を考える良い機会になりそうだ。

野坂雅一 (のさか・まさいち) 調査研究本部研究員
専門分野: 経済
コメント: ワシントン特派員、経済部次長、論説副委員長、調査研究本部総務などを経て現職。財政・金融、産業政策、通商問題など経済全般について取材を続けています。政府税制調査会委員や経済産業省の産業構造審議会臨時委員なども歴任し、望ましい政策の実現を目指して注文を付けてきました。これからも読者に分かりやすい記事を書いていきます。

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