ひらひら言の葉

風のように吹き去る『大切なことば』をこの胸に止めよう

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8月16日 編集手帳
2018年8月16日5時0分

 ユニークな語釈で知られる三省堂「新明解国語辞典」で、この字句を引くと少し明るい気持ちになれる。
【隠居】
<仕事や生計の責任者であることをやめ、好きな事をして暮らすこと>
◆他の辞書のように「静かに暮らす」などとは書いてはいない。どこか活動的で開放的なご隠居像がよぎる。
瀬戸内海の島発のニュースに思い浮かべた。どこからともなく現れた78歳の男性が、行方不明の男の子を山中から見つけ出した
◆山口県周防大島町の親戚宅に来ていた藤本 理稀 よしき ちゃん(2)が三日三晩を外で過ごしながら、無事な状態で保護された。沢の石に座り込んでいたらしい
◆その理稀ちゃんを、バスタオルにくるみ山から下りてきたのは大分在住の尾畠春夫さん。本紙の取材によれば、捜索難航の報を聞いて駆けつけたという。
65歳で魚屋を引退したあとは「世の中に恩返しがしたい」と、新潟県中越沖地震や東日本大震災でボランティアをしてきた。つい先日まで広島で家の泥出しを手伝い、大分に帰ったばかりだった
◆元魚屋のご隠居は人助けが<好きなこと>なのだろう。はつらつとした老後を過ごされている。

 山口県周防(すおう)大島町で3日間行方不明だった藤本理稀(よしき)ちゃん(2)=同県防府市=を発見した尾畠(おばた)春夫さん(78)は、大分県日出(ひじ)町から軽ワゴン車で駆けつけ、1人で捜索に加わっていた。全国各地の被災地で活動してきたボランティアのベテランだった。

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【写真】東日本大震災の被災地で活動する尾畠春夫さん

 「私はボランティアだから、そういうのはもらえません」
 理稀ちゃんを家族に引き渡した15日、祖父から風呂を勧められた尾畠さんはそう断った。軽ワゴン車に食料や水、寝袋などの生活用具を積み込み、助ける相手側に迷惑をかけないのが信条。「自己完結するのが真のボランティアだ」と言う。活動費は自分の年金から捻出している。

 元々は魚屋さん。捜索中、理稀ちゃんに気付いてもらえた「よしくーん」という大声は、店先で鍛えたものだ。ボランティアを本格的に始めたのは、大分県別府市にあった店を閉めた65歳のころ。「学歴も何もない自分がここまでやってこられた。社会に恩返しがしたい」と思ったからだ。



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